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【第4話】交易の街と、異世界の市場

久しぶりの投稿です!楽しんでいってください!

【第4話】交易の街と、異世界の市場

 ワイルドボアのステーキで腹を満たした俺たちは、シルフィの案内のもと、さらに数時間ほど街道を歩いた。

 鬱蒼とした森が開け、視界が一気に広がった先に、頑丈な石造りの城壁に囲まれた巨大な街が姿を現した。

「あそこが、この地域の交易の中心地、『城塞都市ロルム』だ。私の拠点でもある」

 シルフィは誇らしげに胸を張る。街の門では、槍を持った衛兵たちが鋭い目を光らせていたが、Cランク冒険者であるシルフィが俺の「身元保証人」になってくれたおかげで、大きなトラブルもなく中に入ることができた。

 一歩足を踏み入れると、そこは活気に満ち溢れていた。

 石畳の道の両側には露店がひしめき合い、人間だけでなく、耳の長いエルフや、小柄なドワーフなど、様々な種族が行き交っている。

「タカシ、お前をギルドに案内する前に、少し市場を覗いていかないか? 街の物価や、どんな食材があるか知っておいた方がいいだろう」

「そうですね、ぜひ!」

 俺たちは中央広場へと続く大規模な市場へ向かった。そこで俺は、驚くべき光景を目にすることになる。

「……あれって、どう見てもキャベツだよな? こっちは、大根……?」

 木箱に山積みにされているのは、地球の現代日本で見慣れた野菜にそっくりなものばかりだった。

 店主に話を聞くと、丸くて緑の葉の野菜は『コカブジ』、白い根菜は『ラディム』という名前らしいが、見た目も触った感覚も、日本のキャベツや大根そのものだ。

「これらは『大地の恵み』として、この国ではごく一般的に流通している野菜だな。味は少々、地球……いや、お前の故郷のものより大雑把で苦味が強いかもしれないが」

「いや、十分ですよ! 精肉店の方は……うわ、すごいな」

 隣の肉屋には、驚くほど綺麗なピンク色をした豚肉に似た『オーク肉』や、鶏肉そのものの『コカトリス肉』が、部位ごとに綺麗に切り分けられて並んでいた。値段はオーク肉の塊が銅貨5枚(約500円)ほど。

(なるほど……! ネットスーパーで高いお金を出して生鮮食品を注文しなくても、『この世界にある現代そっくりの食材』を安く買って、ネットスーパーの『現代の調味料(塩・胡椒・醤油)』で味付けすれば、格安で最高のご飯が作れるじゃないか!)

 ネットスーパーの残高は、さっきの魔石チャージのおかげでまだ【2,680円】ある。この世界の安くて新鮮な食材を買い、現代の技術で調理する――。俺の異世界飯スローライフの、本当の基盤がここで見つかった気がした。

「ふ、ふん……。タカシ、市場の食材を見てそんなにニヤニヤして……。まさか、さっき言っていた『ショウユ』とやらを使った新しい料理の構想でも練っているのか? 別に私は、早く食べたいなどと催促しているわけではないぞ?」

 シルフィがそっぽを向きながら、チラチラとこちらを盗み見てくる。相変わらずお口が寂しそうだ。

「ええ、最高のメニューを思いつきました。でもその前に、まずはこの街での俺の立場をハッキリさせちゃいましょう」

 俺たちはまず、シルフィの本拠地である『冒険者ギルド』の重厚な扉をくぐった。

 中は酒場と併設されており、昼間からガラの悪そうな冒険者たちがエールを煽っている。戦闘力ゼロの俺は少しビビってしまったが、隣にシルフィがキリッとした顔で立ってくれているおかげで、絡まれることはなかった。

「新規の登録を頼む。私の預かりだ」

 シルフィが受付嬢にギルドカードを提示すると、受付嬢は「おや、シルフィさんが男の人を連れてくるなんて珍しい」と目を丸くした。

 差し出された魔道具の板に手を置くと、俺のステータスが読み取られる。

【佐藤タカシ:Fランク冒険者】

* 戦闘職能:なし

* 固有スキル:ネットスーパー

「……ネットスーパー? 聞いたことのないスキルですね。戦闘系の補正は一切ありませんので、一番下のFランクからのスタートになります。主に街のドブ掃除や、安全な薬草採取からのスタートですね」

「はい、それで十分です。ありがとうございます」

 俺が欲しかったのは、この街に滞在するための「身分証明書」だ。Fランクでもカードさえあれば衛兵に不審者扱いされない。

 しかし、冒険者ギルドだけでは俺の目的は半分しか達成できない。俺のスキルは「買い物が買い物を呼ぶ」システムだ。この世界で安全に商売をしたり、大量の通貨をやり取りするためには、もう一つの組織に所属する必要があった。

 次に訪れたのは、街の大通りに堂々と構える白亜の建物――『商人ギルド』。

 こちらは冒険者ギルドとは打って変わって、上質な衣服をまとった商人たちが静かに商談を行っている。

「いらっしゃいませ。商人ギルドへの新規登録ですね。当ギルドは、年間の登録料として銀貨1枚(約10,000円分)を頂戴しておりますが、お支払いは可能ですか?」

 眼鏡をかけた知的な受付係に言われ、俺は懐を探る。財布にあった日本円はネットスーパーにチャージしてしまったが、シルフィに魔石の取り分として渡されていた銅貨がちょうど30枚(3,000円分)あった。しかし、銀貨1枚(1万円)には足りない。

「あ、あの、少しお金が足りなくて……」

「ならば、私が立て替えよう。タカシ、お前をこんなところで燻ぶらせるわけにはいかないからな(主に私の胃袋のために)」

 シルフィが財布から美しい銀貨を1枚取り出し、カウンターにコトンと置いた。

「シルフィさん、すみません! すぐに美味しいご飯で返しますから!」

「ふ、ふん、別に借りを急かすつもりはない。お前が商人として大成し、美味いものをいつでも買えるようになれば、それでいいのだ」

 こうして、登録手続きが完了し、俺の手元には『Fランク冒険者カード』と『見習い商人ギルド証』の二つが揃った。

「よし……! これで街での基盤はできた。シルフィさん、借りの返し身も含めて、さっそくさっきの市場で買った『オーク肉』と『コカブジ(キャベツ)』を使って、宿屋の厨房を借りて最高のご飯を作りますよ」

「ほう……! ついに『ショウユ』の出番だな! 楽しみにしているぞ、タカシ!」

 二つのギルドを制覇した俺たちの前に、次なる「現代の味」の感動が待ち受けていた。

(第5話へ続く)

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