忘れていない―ルミナスSide
「ルミナス様! どうか落ち着いてくださいませ!」
「殿下は今執務中で!」
「いくら血の繋がりのある娘だといっても、いきなりお会いすることは出来ないのです! ですから、まずはお部屋に!」
馬車から下りて、王宮の端にある離宮に唐突に帰ってきた私の姿を見つけた侍女やあの人の部下たちが口々に言ってくる。
でもそんなのは全て無視をして、止めない足で目的の場所を目指した。もうここに来て数日、どこに何の部屋があるかなど頭の中にあるから、迷うことはない。
言いたいことが山程ある。
目的の部屋に辿り着き、早速開けようとすると、それを阻むかのように手を出してきた護衛の人が困った顔で見てきた。
「邪魔……」
「……ルミナス様。殿下は今仕事中です。御用があれば伝えますので、今はお引き取り――」
その人が言い終わらない内に、扉に翳した手の平にありったけの魔力を集めて、前に教えてくれた風の魔法を放った。
バンッという轟音と共に扉が壊れ、後ろからも部屋の中からも悲鳴が上がる。私を止めようとした護衛の人たちも「うわっ!」「なんだ⁉」と悲鳴をあげつつ、風に吹き飛ばされて転がっていた。
それを怯えもせず面白がるような紅蓮の髪色の男が、机に頬杖をつきながら見物している。そしてもう一人、ドレスを着飾った女性がソファの方で素知らぬ顔をしながら、飄々と紅茶を飲んでいた。
「おーおー。派手だこと」
「私、知ぃらないっとぉ」
周りにいる侍女や護衛の人たちは怯えきって壁の方で小さくなっているというのに、この二人はいつも通り。
扉の木片とか気にせずにツカツカと部屋に足を踏み入れる。片付けは後でやっておこうと頭の端で考えながらも、楽しそうに口角を上げたままの男を睨みつけた。
「……」
「おいおい、何か言いたいからここに来たんだろ? 無言じゃ分からないぞ?」
「怒ってるのよ、ルミナスは。だからあれだけ止めた方がいいって言ったのにさぁ」
「あ、あの、殿下……」
後ろから恐る恐る小さな声で、先程の転がってたはずの護衛の人が声を掛けてきたから、三人で一斉に見てしまった。ビクッと肩を震わせている。
その彼の様子を見て、さっきまで楽しそうだったはずなのに、途端に面倒臭そうに手を振っていた。
「あー……お前たちは全員下がれ。だから言っただろう? 俺らに護衛とか侍女とかいらねえんだって」
「そ、そういうわけにはいきません! あなたは王弟殿下なのですから!」
「小娘一人の魔法で寝転がっているお前らに守ってもらう程、腑抜けてねえよ?」
「なっ⁉」
「兄上には俺から伝えておくから、もう全員この離宮から去れ。それでも護衛したいってんなら、早くそれができる実力を身につけろや」
「っ……」
実力不足だと言われて悔しいのか恥ずかしいのか、その人は顔を真っ赤にしながら「失礼します……」と呟いて行ってしまう。周りにいた他の人たちも憐みの目を向けていた。
「あーあ。いいの? 彼、確かあなたに憧れていなかった? しかも伯爵の息子じゃなかった?」
「弱いもんは弱いんだから仕方ないだろ。威張れるものが家だけで、なんで護衛なんて出来ると思ってるんだ? 憧れ? 家格? それで守りたいもん守れるなら、苦労することはねえだろうな」
「はいはい。あんたに言った私が馬鹿だったわ。この脳筋が。皆が皆、あんたみたいに力で解決できないんだけどねぇ。力だけでやりたい放題している王弟ウォルフ殿下には、誰も適わないってのぉ」
「よく言うぜ。魔法の実力だったらお前の方が上だろうが。全属性使える魔法使いなんて、どの国にもいやしないだろ。家のことだって、お前の父親も公爵だろうが。人のことは言えねえだろ、エレナ?」
二人の会話に、ハアと重い息が勝手に吐き出される。
現国王の弟であるウォルフ。
そしてその妻、元公爵家の娘であるエレナ。
なぜよりにもよってこの二人がそうなのかと、ここに来てから何度も思わずにはいられない。
溜め息をついた私のことを、二人がやっと会話を終わらせたのかジッと見つめてきて、まだ周りにいた人たちに声を掛けていた。
「あー……というわけだ。お前らは全員下がれ。今から家族会議だから」
「そうねぇ。私たちもちゃんと『娘』と話したいから、誰も入ってこないでちょうだい?」
この二人の娘、それが『ルミナス』。
「それで? 大層お怒りの様子だったが、楽しくなかったか、学園? にしても帰ってくるの早すぎだけどな」
部外者の誰もがいなくなり、母であるエレナが私たち三人に防護の結界を張ってからのその問いかけに、幾分か冷静になったはずの頭に熱が上がってくる。
ジロッと感情が乗っていないはずの目でまたウォルフを見下ろすと、「おーこわ」と言いながら笑っている。
こっちとしてはさっさと本題に入りたいから、睨みつけたまま声を出した。
「……聞いていない」
「言ってないからな」
「いつのまにか馬車だった」
「眠らせたからな。びっくりさせようかと思って」
「服も」
「それはほら、眠らせた後に着替えさせたんだよ」
悪びれもしないその返答に、こっちはイライラとした気持ちが募ってくる。
「びっくりさせたかったんだって。似合ってるぞ、その制服」
今着ている制服を指差しながら、やっぱり楽しそうに笑っていた。からかっているのか、試しているのか。
「学園には行かないって言ったはず」
「行っとけよ? せっかくの機会なんだからさ」
「……」
「だから睨みつけんなって。どうせ暇だろ? 当分俺らもここに留まらなきゃいけなくなったしな」
「そうなのよねぇ。ただ他国情勢とかの報告がてら、チラッと里帰り気分だったんだけどぉ」
ハアと紅茶を飲んでから、愚痴を吐くかのようにエレナは疲れ切った声を出していた。カップを置いて、困ったように微笑んでいる。
「もちろん、私はルミナスがね、学園に行きたくないなら無理強いはしたくないわぁ。でも、まだまだ陛下たちは私――というより、ウォルフを離したくないみたい。そうすると暇でしょ?」
「そりゃあ、魔物があれだけ暴れ回ってたからな。にしても腑抜けすぎだろ、騎士団の連中も」
ガシガシと頭を手で掻きながら、「あー面倒臭ぇ」と言ってウォルフも溜め息をついていた。自分を基準に考えているから、他の人たちがどうにも腑抜けに見えるらしい。
最初は少し顔を出すだけだという話が、この王宮に来てからというもの、ずっとウォルフもエレナも忙しそうにしている。邪魔をするのもあれだから、私はただ部屋に籠っていたけど。こうなるならさっさと私だけ立ち去れば良かった。
「……必要なのは二人。私はいらない。なら、もう私は行くから」
「一人で行くってか? まあ、止めやしねぇけど」
「ちょっとちょっとぉ。ウォルフも何言ってるのよ? さすがにルミナス一人の旅は危険すぎるからぁ。ルミナスもちゃんと言ったでしょう? それは駄目だって」
「おー怖い怖い。エレナも睨みつけてくんなって。というわけだ、ルミナス。一人で行くのは却下だってよ」
全然怖がる素振りを見せないウォルフが笑いながら肩を竦めていた。エレナには逆らえない。ウォルフが惚れた弱みだとか前に言っていた。
けど、私が実際に立ち去ってもウォルフは何も言わないだろう。魔物にどうこうされるとは思っていないはずだ。
だったら、勝手に一人で出ていくだけだ。どうせここでの用事が終わったら、私に追いついてくるに違いない。何度も追いつかれたことがある。
きっと私の考えはお見通しだろうから、自分の荷物をまとめるために二人には背中を向けた。
エレナが「やっぱり無理か」と言いながら溜め息をついているのが聞こえてきたけど、ウォルフの次の言葉に足が止まった。
「いいのか? お前の家族に会わなくても」
スッと体が冷えていくのを感じた。
顔だけ振り向かせると、ウォルフがまたおどけたように「怖い怖い」とか言っている。
「目は口ほどに物を言うってのがピッタリだな」
「……」
「いい機会じゃねえか。会って来いよ」
「……」
返す言葉は出てこない。
代わりにどんどん体が冷えていく。
「それとも会えないか? 逃げ回っているだけだもんなぁ、お前は」
「ちょっとぉ、ウォルフ」
「呼んでやろうか? お前の父親を、この場所に――」
ウォルフが言いかけた言葉を遮って、自分の足元に魔法陣を展開した。床が、壁が、氷漬けにされていく。ドンッ! と大きな氷柱の先がウォルフに向かって伸びていった。
エレナが溜め息と同時に土壁の魔法陣を展開させたから、その氷はウォルフまでは届かなかったけど。
魔法同士が衝突して、パラパラと氷と土の破片が落ちていく。
その向こう側で、ウォルフは平然としながら机の上でまた頬杖をついて笑っていた。
「威力はイマイチ。まだまだエレナの域には達してねぇな? その感情に任せて魔法ぶっ放すのやめろって言ってるだろ?」
「……」
「やっぱり学園に通った方がいいんじゃねえか? そんなんじゃすぐに魔物に殺される――っで⁉」
ゴンッと音を出しながら、エレナが肘をウォルフの頭に落とした。少しだけ気が晴れる。
「煽るのやめなさいってのぉ。あと何回も言ってるでしょぉ? 人といちいち比べないのぉ」
「んだってよ? 実際そ――あだだだだ! すんません! 俺が悪かったです!」
口元を引っ張られて、あられもない顔になっているウォルフに呆れた目を向けてから、エレナは私に困ったように微笑んできた。
「ルミナスがやだなって思うこと、私はしなくていいとは思うよぉ。でもねぇ、学園には通ってほしいなと思ってるんだぁ」
パッとウォルフから手を離して、ゆっくりと私の近くに来たかと思えば、ふわりと抱きしめてくる。
「会うのが嫌なら、無理に会わなくてもいいよぉ。それはルミナスが決めることだからねぇ」
「……」
「でもさぁ? 私、あの子と会ったのが学園なんだよぉ」
ふふって、懐かしむようにエレナが耳元で笑っていた。
キュッと胸が締め付けられる。
あの子が、誰を指しているか分かるから。
「喧嘩したりさぁ、一緒に研究もしたしぃ。結構楽しかったんだよねぇ」
「……」
「そういう時間、ルミナスにも作ってほしいなって思ったんだよぉ」
体を少し離してから、私の顔を覗き込んでくる。その手が頬を撫でてきた。私を通して、遠い思い出を見ている目だ。
「どんな出会いがあるかも分からないからさぁ。無理に行けとは言わないけど、行ってほしいなぁ」
「……それは、命令?」
「ルミナスには命令なんてしないよぉ。もう一度、考えてみてほしいだけ。今日みたいに無理やり馬車に乗せることはしないからさぁ」
クスクスと笑って、ポンポンと頭を撫でてくる。
「だから、とりあえず一人でここを出ていくのはなしねぇ? さすがに今は行かせられないよぉ」
今は、ということは、落ち着いたらいいという意味だろう。各地で起こっている瘴気問題と、多発している魔物の問題。その対処のために二人は王宮に留まっているのだから。
二人には恩がある。
心配してくれているのも分かる。
だからといって、あの学園に行くのは……。
脳裏に浮かんだ姿に胸の奥が苦しくなって、思わず拳を握った。
「……考えさせて」
絞り出した答えがそれだった。
本当は行きたくない。あの場所に。
でも無為に出来ない。この二人の言うことには。
頭も胸の中もグルグルと嫌な感情に支配されていく。
「それでいいよぉ」
エレナはまたポンポンと優しく頭を撫でてきた。
その手が優しくて、でもさらに苦しくなる。
答えを保留にして、ウォルフが「その制服なくすなよ」とか言ってくるのを無視しつつ、自分に与えられている部屋に向かった。ウォルフがエレナに怒られる姿を見たせいか、ここに来る前よりは気が晴れたみたいだ。
……分かっている。
二人が私を心配してくれているのも。
考えてくれているのも。
部屋に入ると視界に映るのはベッドと机と椅子の簡素な景色。そこまで大きな部屋は嫌だと言ったら、この部屋を用意してくれた。
勝手に着させられた制服の上着を脱ぎ、ベッドの上に無造作に放り投げると、その一部がモコっと盛り上がった。
もぞもぞと上着の隙間から白い毛玉が出てきた瞬間、周りにポポポッと毛玉たちが浮かび上がる。
『オワッタ?』
「……ええ」
手の平を差し出すと、目の前の毛玉が乗ってきた。ツンツンと突くと、フルフルと震えている。
……この五年で、触れるようになった。
『ソノママ?』
「……そうね」
聞かれたから、毛玉を空中に放ってあげる。さすがにずっとは魔力の消費が激しい。いくらこの子たちが手伝ってくれていても、常時の魔法行使は負担がかかるから疲れが溜まる。
髪の一束を手に乗せると、視界に入ってきたのは紅蓮の髪色。
ウォルフとエレナの娘だと分かるように、この色にしただけだ。
スッと髪の根元に指を入れ、毛先に向かって梳いていくと、その紅蓮の髪色が消えていく。
『コッチガスキ』
「そう?」
『アルジッテ、カンジスル』
ピョンピョンと毛玉たちが喜んでいるのか周りを跳んでいるのを見てから、窓ガラスに視線を向けた。
ガラスに映る、自分の姿に。
母譲りの銀髪と、サファイアの瞳が映っている。
……あの瞳に映った私は、こっちじゃなかったはずなのに。
あの子を見た瞬間、自分の魔力が揺らいだのを感じた。それで魔法が中途半端になったのだろうか。
思い出すのは、さっきの学園でのこと。
『お姉さまっ……!』
あの声が、耳から離れない。
あの手も。
あの腕も。
あの温もりも。
そして、あの琥珀色の瞳も。
思い出すと、胸の奥が苦しくなる。
最後に触れた手を、ついジッと見つめた。
まだ感触が残っている気がして、ギュッと握りしめてしまう。
離れたから、もう忘れていると思っていた。
私のことは忘れていると。
殿下と一緒に、きっと笑っているんだろうなと。
なのに……。
コツン、と、額と手の平を窓ガラスに当てた。ひんやりとした冷たい感覚が広がってくる。
「もう会わないと……決めていたのに……」
泣きそうな顔だった。
今にもあの目から、いつか感じた温かい涙が流れるんじゃないかと思うくらいに。
今の私は『ルミナス』だ。
『セレスティア』じゃない。
ウォルフたちがここについてから調べたらしい。もう『セレスティア』は公に存在しない。死んだことになっていると。
だから父もバールたちも、スクルも、あの子も、とっくに私のことは忘れていると、そう勝手に思っていたのに。そうであればいいと願っていたのに。
グッとガラスに押し当てたまま、拳を握る。
何度も何度も、さっきの学園でのあの子の姿が脳裏にチラつく。
「今更……会うなんて出来るわけない」
あの時、逃げたのは私だ。
間違ってない。
後悔していない。
あのまま帰っても、私はあの子の幸せなんて願えなかった。
じゃあ、今は――?
『アルジ?』
『アルジ、ダイジョブ?』
ピョンピョンと、心配そうに毛玉たちが体にひっついてきた。
ずっとそばにいたこの子たち。
ウォルフたちに会うまでにも、色々な子たちに会ってきた。
今の、私の唯一の家族たち。
精霊である、私の。
フワフワとした毛玉を手に乗せて、ゆっくりと撫でると、嬉しそうに体を震わせていた。
この子たちといると、心が安らぐ。
苦しさを一時忘れることが出来る。
そうやってずっとこの五年、苦しさに耐えてきた。
夢の中で、いつもあの笑顔から、瞳から、与えられる苦しさに。
忘れていない。
何もかも。
忘れたかったのに、忘れさせてくれなかった。
『アルジ』
『アルジ、アルジ』
どんなにこの子たちに安らいでも、ずっと心の中に残っている。
今もまだ、あの子の、
フィリアの幸せを願えない。
……やっぱり学園は行けない。
あの子に会ったところで、もうどうしようもないし。死んだと思っているなら、それに越したことはない。エレナには悪いけど、行かないとちゃんと言お――
『タスケテ』
――え?
『タスケテ、タスケテ』
窓際にいた毛玉たちがいきなり口々に言いだしたから、どうしたのかと思ったけど、私に対して言ったわけじゃないみたいだ。ピョンピョンピョンと跳ねながら、窓ガラスの方に身体を寄せている。
「……何?」
『タスケテ、イッテル』
『アッチアッチ』
助けてって言ってる? 人? それとも精霊? あっちと言われた方を見ると、学園のある方向だ。小さく学園の建物が見える。
その周辺が靄で霞んで見えた。
「……瘴気?」
――いや、違う。瘴気よりも黒い何かだ。気づかなかった。でもさっき学園に行く馬車の中でも、この子たちは『ヘン、ヘン』『オカシイオカシイ』と言っていた。そっちにも気を取られていたから、馬車が学園に向かっていることに気づかなかったけど。
「誰が助けてって言ってるの?」
『ナカマ』
つまり、精霊が言っている。精霊同士だと、ある程度距離が近いと感じたことが伝わるから。私は半分は人間だから、この子たちの方がより伝わりやすい。
『チカラ、デナイ、イッテル』
『アッチ、アッチ』
心配しているのか、私の体にまたひっついてきた。宥めるためにその子たちを撫でていく。
……さすがに見過ごせないか。
本当は行きたくない。
今でも、あの子の瞳を向けられたくない。
その瞳の裏に抱えている感情を思い知らされるから。
今でも、あの温もりを与えられたくない。
知りたくない虚しさを運んでくるから。
……だけど、今はこの子たちが大事だ。
苦しさを忘れさせてくれる。
私をただ慕ってくれている。
ずっとずっとそばにいてくれた。
一人だった時も。
自分があの人の娘じゃないと知らされた時も。
あの暗い道も、この温かい光で照らしてくれた。
出来るなら、力になりたい。
……会わなければいい。接点を持たなければ、話すこともない。
調べるだけ。学園周辺の精霊たちに何が起きているかを調べて、助けるだけ。
それが出来るのは精霊でもある私だけだ。
脳裏に浮かんだ姿を頭を振って払い、助けるためにと言い訳を心の中で並べた。この子たちが大事なのは本当だけど、そうでもしないとあの学園に行く踏ん切りがつかない。
会うかもしれないと思うだけで苦しくなる胸の痛みを、無理やり忘れたふりをする。
学園に行くと言ったら、エレナは喜ぶだろう。でもウォルフは楽しそうにからかってくるに違いない。
「……からかってきたら、また怒ってもらおう」
目的は助けること。
フィリアじゃない。
スウっと大きく深呼吸して、部屋の扉に足を動かした。また髪の根元から梳いて、髪色を紅蓮の色に戻していく。瞳の色も一緒に。
自分の今の姿を自覚して、大丈夫だと何度も心の中で呟いた。
『セレスティア』はもうどこにもいない、と。




