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赤ちゃんから始める来世改善計画  作者: ぎあまん


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領都エイゴラ・入都前騒動



 領都エイゴラは城壁に囲まれた、なんというかイメージ通りの城塞都市だった。

 入るためには行列に並ばなくてはいけなくて、ゾルの荷馬車もその中に混ざっている。

 一人一人の審査はそこまで厳しいわけでもなくて、列はゆるゆるとだが前に進んでいる。

 これなら一時間もしないうちに自分たちの番が来るなと思っていると……。



 カンカンカン……!



 激しい鐘……時代劇系のドラマや映画で聞いたことのある半鐘に近い音が聞こえてきた。


「げっ、くそっ!」

「え? これって……」

「そうだよ魔物だよ!」


 ゾルとミライザのやり取りを聞く限り、魔物の襲撃が起きたようだ。

 こんな大きな都市なのに襲われるのかというのが俺の感想なのだけれど……実はそれどころではない。

 騒々しく逃げ出す周りの人々が邪魔になって荷馬車が動けなくなっているのだ。


「降りて逃げよう!」

「バカヤロウ! 商品を捨てるなんて……」

「商品より命!」

「うっ、むう……」


 ミライザは割り切っているが、ゾルの方はできていない。

 まぁ、自分の努力で集めたものと、そうでないものとの違いだろうな。


 って、のんびりしている場合でもないな。

 なんか魔物っぽい雄叫びが聞こえてきたし、襲われた悲鳴っぽいものも聞こえる。

 ミライザに抱っこされたままだとわからないが、魔物はかなり近いところにまできているようだ。


 見えないのはダメだ。

【幽体離脱】でベビーなボディから抜け出して高い視点を得る。

 ああ、いたいた。


『ゴブリン:ジリウンド帝国産。飛行船からばら撒かれた養殖ゴブリン。たくさん増えてます』


 そうか、たくさん増えているのか。

 そして、飛行船がある文明なんだな。

 ジリウンド帝国っていうのがどういう立ち位置かわからないが、そこの飛行船が養殖ゴブリンをばら撒いていると……。

 絶対、この国と仲が悪いんだろうな。


 そんなことを考えていると、ようやくゾルが動かせない荷馬車から逃げ出す決断をした。

 だけどもう遅い。

 ゴブリンたちはすでにそこに来ている。


 荷馬車は囲まれ、すでに迂闊に降りることさえもできなくなってしまった。

 もう、俺がなんとかするしかないよな。


 とはいえ、どうするか。


 ううん、こんなところで【魔導骸装】は使いたくないな。

 目立つ。

 俺が乗り込むところを目撃されたりして注目されても困る。


【死霊魔法・極】で戦ってみるか。

 魔法系のスキルは極めていくごとに使える魔法が増えたり強力化したりする。

 というわけで、死霊魔法の基本的な攻撃魔法の【腐傷】を使う。

 相手に裂傷を与えると同時に傷口を腐らせるという性格の悪い攻撃手段だ。


 後は『状態:毒』にもなる。


『魔99』で放った【腐傷】の攻撃力はゴブリン程度は一撃で倒せてしまうようなので、毒はあまり意味がないか?

 いや、ダメージにランダム性があるのか倒しきれない時があるな。

 そんな時は数テンポ遅れて倒れるので、きっとその時に毒で死んでいるんだと思う。

 あるいは傷が深いので単純な出血死なのかもしれない。

 ゲームみたいな魔法だけど、現実なのでその辺りの判定? が難しい。


 ……と、ちょっと夢中になりすぎた。

 気が付いたらミライザの周りにゴブリンの死体が大量に出来上がってしまった。

【魔力摂取】は自動MP回復的な効果もあったようで、基礎攻撃の【腐傷】を連発する程度ではまったく疲れない。


 だから調子に乗った。

 撃ちすぎた。


 むう、しまったな。

 ゴブリンたちの知能は低いが、さすがに同類が死屍累々になっていく様を見れば逃げ出すぐらいのことはできるようだ。


 ゴブリンたちはいなくなり、残った死体の中心にはゾルの荷馬車と、その上で俺を抱えて固まっているミライザが残った。


 ちなみに、ゾルは俺たちを見捨てて逃げていた。


 そして、現場にやってきた衛兵たちがミライザを連れていってしまった。

 ミライザがなにかをしたと思ったようだ。


 もちろんミライザにそんなことはできない。

 街を救った英雄的な扱いをされていたので、調子に乗って自分の功績だって言うかなと思ったのだけど、そうはならなかった。

 ではなぜかと追求されたが、誰もミライザに抱かれた赤ん坊こと俺がやったとは思っていないようだった。

 まぁ、さすがにそんなことは思わないか。


 後、そういうことを調べられる人もいなかったようだ。


 よくわからないままで解放するのだから、ここの衛兵もけっこういい加減だ。

 とはいえ、そのいい加減さのおかげで俺のことも見過ごされたのだと思うのだから、それでよしとしておこう。


 衛兵の詰所を出たところでミライザがボソリと呟いた。


「あっぶな。あのままだと英雄扱いされてまた危ないところに行かされるところだったわ」


 なるほど。

 そう考えると、あそこで自分の功績だと嘘を吐くのは間違いか。

 報酬もらって逃げ出すって考えにはならないんだな。

 いや、それだとこの街から逃げないといけないから、都会で暮らすっていうミライザの理想を叶えられないか。


 うん、この娘はけっこう頭いいな。


「さて、都合よく街に入れたし、ゾルからも離れられたし、次はどうしようか?」


 こっそり荷馬車から金袋も取っていたらしい。

 ミライザはちゃっかりもしていた。

 どうやらゾルが怪しいのは最初から知っていたようで、街に入ったら逃げるつもりだったらしい。

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