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赤ちゃんから始める来世改善計画  作者: ぎあまん


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それって詐欺?



 一難去ってまた一難。

 拾ってくれた女は駆け落ち中の娘で、馬車の荷台に寝ている男は行商人で奴隷商人で詐欺師だと【鑑定】は告げている。


「ごめんね。お腹空いてるよね。でも私まだお乳出ないのよ」


 ですよね〜。

 そっちの意味でも問題だ。

 スキルのおかげで病気や毒、怪我で死ぬ可能性はかなり低いんだけど、そもそも栄養が手に入らないと死ぬ。


 その問題をどうしたものか。

 一応の作戦はある。

【カルマ操作(限定)】で栄養摂取のためのスキルを手に入れるという方法だ。

 だが、それをするには来世でのマイナススキルをまた増やさないといけない。


 ここで死んだら終わりなので最悪になればやるしかないんだが……。


 餓死を逃れても、このままだと奴隷商人に売られることになる。

 いや、売られるのはこの娘か?

 とはいえ、眠っている間の命を守ってくれたのはこの娘だ。


 無視して逃げればいいだけか?

 いや、しかし……。


「くあぁ……なんだ? そのガキ?」

「あ、ゾル。起きた?」

「いや、そのガキ」

「道端に落ちてたの。捨て子かな?」

「その布、商品だろ?」

「あ、ごめん。なにも着てなかったから」

「なにも着てなかったのか? 産み捨てられてたんじゃないのか?」

「やっぱりそうだよね。可哀想」

「可哀想って……」

「ねぇ、この赤ちゃんのご飯になりそうなのないかな?」

「そんなものねぇよ。乳離れもできてないだろ、そいつ」

「うん、そうだよね」

「こっちは領都まで止まれねぇのはわかってるだろ?」

「……うん」

「いまごろ村長は怒髪天真っ最中だ。追手も来てる。田舎の農家の嫁で終わりたくないんだろ? 都で派手な生活がしたいんだろ?」

「わかってる」

「なら、止まってる場合じゃないんだよ。とにかく領都に入る。そうすれば勝ちなんだ」

「……わかった」

「なら、いいんだ。ほら、交代だ。寝ちまいな」

「うん。……この子、泣かないんだ。いい子だよね」

「泣いてる場合じゃないってわかってんだろ? 賢い奴だ。もしかしたら、領都までもつかもな」

「だといいな」


 二人の位置が変わり、ゾルは御者台に、ミライザが荷台に移った。

 俺はミライザに抱かれたまま、その横で眠りに……。


 いや、これ気が付いたら永眠コースだわ。

 がんばれ、もうちょっと起きろ俺。

【カルマ操作】でなんか食べなくても大丈夫なスキルを手に入れないと死ぬわ。


「飲まず食わずで生きてるわけないだろ。後三日あるんだぞ」


 ミライザの寝息が聞こえたところでゾルがボソッと言った。

 うん、奇跡を信じてる場合じゃないな。






【カルマ操作】をした結果、【魔力摂取】と【精気摂取】を得た。

 大気中にある魔力を摂取することで栄養の代わりになるという効果と、他の生命体から精気を得るというスキルだ。

【魔力摂取】は竜種や巨人種があの巨体で生きていられる原因となるスキルで、【精気摂取】はいわゆるエナジードレイン、夢魔やら淫魔やらが持っているあれだ。


 ただしどちらもスキルとしてのランクはまだ低い。

 二つのスキルにしたのは栄養補給の方法を複数手に入れておきたかったからだ。


 その代わり、来世に餓鬼道(刑期七十年)が追加された。

【永続空腹感】

 ずっと腹が減っているってことだ。

 本物の地獄よりは短いだろうが、正気でいられるかどうかわかったもんじゃないな。

 むしろ正気でいない方が幸せなんだろうが。


 とりあえず腹が減っている感じはなくなったので、安心して眠ることにする。

 いや、眠って大丈夫か?

 寝ている間に、ゾルに捨てられたりしないか?

 眠らなくてもよくなるようになるべきなんじゃないか?

 いっそ今世にも【確定寿命】を付けるべきなのかもしれないが、あのスキルって他に付いているスキルなんかでポイント計算が常に増減しているみたいなんだよな。

 マイナススキルが多いと必要ポイントが減るどころかマイナスになり、良いスキルがあると高くなる。

 多分、いまのスキルのラインナップで手に入れようと思ったら、来世に地獄をもう二つ三つ増やさないといけないだろう。

 それで足りるかどうかもわからない。


 生き残るのは自力で頑張るしかないか。

 とはいえ眠るという状態から逃げることはできないので、運を天に任せる気持ちで目を閉じる。


 幸いにもちゃんと目覚めることができた。


「よかった。ちゃんと生きてるよ!」

「へぇ、そりゃよかった」


 嬉しそうに俺を抱きしめるミライザと、乾燥した声のゾル。

 さっさと離れた方が良いのかもしれないが、眠っている時の安全確保としてミライザに頼るしかない。

 腹は減っていないが、ちょっとは弱っている演技をするべきかもしれない。


 心配するミライザに反して……あるいは正比例して、ゾルの態度は悪くなっていく。

 こんな男のどこがいいのかと思うが、あるいはミライザ自身、この男に期待なんかしていないのかもしれない。


「都に入ってしまえばこっちのもんだ。私と一緒に都会で楽しく暮らそうね」


 ゾルが寝たところで、ミライザがそんなことを呟く。

 男に惚れて駆け落ちしたのではなく、最初から村を出ることだけが目的だったようだ。


 どっちもどっちだが、俺を保護してくれるミライザの方がいい人間であることは明らかだろう。


 休みなく働かされている馬が一番可哀想なのかもと思ったが、この馬は生物ではなくて魔導機械なのだと【鑑定】が教えてくれた。

 それなら自動車にしろよと思ったが、技術的な進化の流れが前世と同じでないということなのかもしれない。

 あっちの世界には魔法はなかったからな。


 俺の弱っている演技はスキルの補助がなくとも成功しているようでミライザの心配する様子はかなり深刻化していき、そしてゾルの苛立ちは勝り二人は喧嘩するようになった。


 それでもお互いに馬車を降りることはなく三日目となり、領都の門が見えた。




獲得スキル(今世):【魔力摂取】【精気摂取】

獲得スキル(来世):【永続空腹感】


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