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赤ちゃんから始める来世改善計画  作者: ぎあまん


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13/16

銭湯と戦闘



 袋に入れたルーシアの未洗濯古着は本当に高値で売れた。


「美人って得ね!」


 ミライザはいたく感心しているけれど……それでいいのか道徳心?

 いや、これが無知と純心ということか?

 汚れちまった俺が悪いのか?


「ミリィも美人になるわよ」

「でもルーシアにはなれないわ。あんなに歌も上手にできないし」

「そこは練習あるのみ、かなぁ」

「え? ルーシアっていつ練習してるの?」

「それは秘密」

「ええ、してない気がする」

「ふふ〜」


 ルーシアの新しい服を背負い袋に入れてミライザが運ぶ。

 そして俺はルーシアに抱かれている。

 ルーシアに力仕事をさせるなとゴードンたちに厳命されているのだそうだ。

 ステータスはルーシアの方が上なんだけどな。


 こうしている間にも周囲からの視線がルーシアに集まっている。

 そして、視線が集まるほどにルーシアの美しさが増しているようにも見える。

 部屋でだらけていたルーシアはすでにいない。

 視線という光を受けて輝く【傾国】の美女がここにいる。


 そんなルーシアが向かうのは風呂屋……銭湯だ。

 新たに購入? 入手? した服をアパートに置いてから銭湯に向かった。


 ボロアパートに水洗トイレがあるような世界だけれど、風呂は常備されていない。

 だが、風呂に入るという習慣はある。

 そのための銭湯だ。

 銭湯の作りは日本で見たそれと似ている。

 入り口に入湯料を受け取る店番がいる。

 いわゆる番台だ。

 番台で男女に分かれるようになって、その先で脱衣所を抜けて浴槽のある空間に入るようになっている。

 もちろん赤ん坊の俺はミライザに抱かれて女風呂だ。


 役得だな!


 そんな風に俺がルーシア(風呂での姿)を見るために湯気修正とか赤ちゃん抱き角度からなどと戦っている時、クサリン兵長とホネッコ上等兵は国境の森で戦っていた。





 情報は逐次ではないが送られてくるし、こちらに判断を求めるような時には意識への訴えかけがある。

 仕方ないので【死霊魔法・極】で【死眼】を使う。

 自身の作った魔法生物・魔法造物の視覚を借りるという魔法……の死霊魔法版だ。

 兵長と上等兵とはけっこうな距離が離れてしまっているのだけど、造物主と被造物との魔法的な繋がりがあるので、一瞬で視覚が繋がる。


 目の前にはでかい狼がいた。

 どういう状況? と思ったけど、あ、これホネッコ上等兵に襲いかかって押し倒されてのしかかられてるんだな。

 んで、ガウガウ吠えながら齧り付いている、と。


 骨に齧り付いてどうするんだよと思ったけど、犬系だからかな?

 んで、ホネッコ上等兵たちに与えた命令は『ゴブリンを殺して取り込め』だから、このでかい狼に襲い掛かられて命令待ちの状態になってるんだな。

 一応、脅威に晒されているっていう状況判断はできるのかな?


 視界を繋いだ最初はびっくりしたけど、ホネッコ上等兵にダメージを与えられているわけでもなさそうなので冷静に分析する。

 ここは?

 まだ森の中か。


 うん。

 反撃して良し。


 俺が許可すると、ホネッコ上等兵の内部に格納されている骨が飛び出して狼を襲う。

 狼はギャンと鳴いてホネッコ上等兵から飛び退いた。

 けれど、体勢を立て直す暇はない。

 ホネッコ上等兵の体内に待機していたクサリン兵長が飛び出し、【巨大化】で狼を超えるサイズになると、のし掛かり、そのまま取り込んだ。


『スケイルウルフLv35:魔法造物』


【鑑定】をしてみるとそれだけが表示されたので、【基礎魔導知識・極】で検索してみる。

 混合生物(キメラ)系魔法生物だっていうことがわかった。

 詳しいことはわからないが、どこかの魔法使いがこいつを差し向けたってことか?

 だとすると、帝国の魔法使いが兵長たちの様子を見るためっていうのが順当な考えだな。

 レベル上限は造物主の『魔』依存らしいので、この魔法使いは『魔35』は絶対にあるってことか。


 考えている間に次の襲撃があるかと思ったけどなかった。


 スケイルウルフはクサリン兵長の中でしばらくもがいていたけれど、表皮が溶けたぐらいで抵抗が止まった。

 けっこう長かったので肺呼吸はしてなかったんだろうな。


 しばらくされるがままだったホネッコ上等兵のダメージをスケイルウルフの骨で回復させる。

 でかい頭骨は上等兵の胸部に収まった。

 なんか、ライオンの顔とかが胸にある合体ロボットみたいだな。

 いろんな骨の集合体だから、合体っていう意味では間違ってないけどな。


 森にはまだゴブリンの気配がたくさんある。

 クサリン兵長とホネッコ上等兵の戦いはまだ終わらないのだ。






 帝国。

 国境監視砦。


「なんだあれは」


 派遣された魔法使いは自慢のスケイルウルフを通して見た光景、そしてその結果に絶句するしかなかった。


 報告通りに巨大な骨の魔法造物を発見した魔法使いは、自身の【鑑定】を弾かれたことに不快の念を抱きながら攻撃を命じた。

 あれが【死霊魔法】の【死骨兵】であろうことは確かだ。

 ずいぶんと大量のゴブリンの骨を吸収しているが、魔法使いは自身の『魔』の高さに自信を持っていた。

 また、ただの骨の集合体である【死骨兵】よりも【生命混合】で作ったスケイルウルフの方が戦闘能力は高いと確信もしていた。

 なので、攻撃を命じた。


【死骨兵】はゴブリンへの攻撃だけを命じられていたのか、スケイルウルフの攻撃に抵抗しなかった。

 だが、その硬さに驚かされた。

 重量のあるスケイルウルフの体当たりを受けてもすぐには転ばなかった。

 何度か体当たりをした末にようやく転倒させることに成功し、それからのしかかっての牙や爪の攻撃に移行した。

 それでも大した痛手を与えることはできなかった。


 そうしている内に【死骨兵】の造物主に気付かれたのだろう。

 反撃が始まった。

 スケイルウルフはアーマーリザードの鱗を流用している。防御力は高い。

 なのに、【死骨兵】の一撃で鱗を貫かれた。

 さらに驚きなのは、【死骨兵】の内部に隠れていたスライムだ。

 死霊魔法使いが使うのであれば【腐肉スライム】だろう。

 驚きなのは、【死骨兵】の骨の中に隠れていた【腐肉スライム】が【巨大化】したことだ。

【巨大化】はスライムがよく持つスキルであるが、魔法生物・魔法造物が初期から持っているスキルでもない。

 また、スケイルウルフが脱出できないほどの質量と粘性を持つほどに成長している。


「化け物だ」


 そんな魔法生物・魔法造物を作るような化け物魔法使いが王国に出現した。


「御師様に報告しなければ」





 意識を戻すと、銭湯からもう出て着替えも終わっていた。

 赤ん坊を連れていたから長湯しなかったらしい。


 無念。

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