私、ユキナは頑張りますっ!!!
勇気を振り絞って想いを伝える、ユキナです!
甲子園で先ほどの熱い試合について語り終えた羽咲様とユキナちゃん、プラス俺は大阪梅田にのんびりと向かっていた。
本当は、大阪梅田にユキナちゃんは特急で向かう予定だったのだが……
「羽咲先輩と一緒がいいっ! あと…… もちろんマクナくんもね?」
少し俯いてチラチラ見ていたユキナは、なんと自ら鈍行を志願したのだ……。
「すまないな……ウチの連れが。きつかったら特急乗っていいぞ?」
「ううん、大丈夫だよ。マクナくんと一緒ならへっちゃら」
「俺とか? 先輩じゃなくてか?」
「あっ⁉︎ 今のなし! 忘れてっ!」
ええ…… 発言ミスだったのか。手をぶんぶん振って必死に否定するユキナを見るとちょっとショックだった。
その頃羽咲様はというと……
「すー、すー、」
ぐっすり寝ていた。まあ全力応援してたからな。
しかも俺は知っている。昨日旅館で寝ずにこっそりとお酒を飲んでいたのを。
朝、先輩を起こしにいったら、部屋に缶ビールがたくさん積まれていたのだ。
「ふふ、先輩よく寝てるね?」
「まあ、昨日から頑なに鈍行を希望してたからな。疲れてるんだろう」
「そうなの…… マクナ君もお疲れ様」
「ああ、ありがとう。ところでユキナは眠くないのか?」
「うん…… 眠くないよ。せっかくの、私がマクナくんを独り占めできる、貴重な時間だから」
「そうか、ならいいんだが、無理しないでね」
「⁉︎ うん…… ありがと……」
そう呟いたユキナは、瞬きを盛んにしていた。
やはり眠いことには眠いのだろう。中学の頃から、ユキナには俺はとってもお世話になった。今回の旅行もだ。それなら。
「ユキナ、少し手前の野田で起こすから。それまで安心して眠っていいぞ」
ユキナは少し驚いた顔をしたが、ゆっくり頷いて。
「ありがとう。マクナくん、大好き……」
そう言って、ゆっくりと目を閉じた。
ユキナは中学の頃、マクナに助けられた。
優等生だったユキナは、その日たまたま提出課題を無くしてしまったのだ。
「どうしよう…… 持ってきたはずなのに…… うう、」
今にも泣き出しそうなユキナのもとに英雄がやってきた。
「これ、落ちてたぞ」
「うう、あっ⁉︎ これ私のノート! うそ、どこにあったっ!」
「いや、俺の机に間違って入ってたぞ」
この時から、優等生でみんなに明るい私の中に、マクナくんという特別な存在が浮かび上がったのだ。
たかがノートを渡されただけ。
私も不思議なくらい、初恋は、あっさりと訪れた。
その日の夜から、毎晩マクナくんのことを考えて眠れなくなった。
そんな私の大好きなマクナくん。
高校まで一緒だったけど、卒業後は離れ離れになっていた。
もう会えないのかな、と泣いた日もあった。
そんな中、ついに昨日マクナくんに会えたのだ。
私の大切な友達、羽咲先輩つきで……
もちろん私は、羽咲先輩の気持ちを知っている。バレバレだもん。
だからこそ、私は何もしない。なんにもしない。
大切な友達から大切な人を奪うことは私にはできない。
(やっぱり、お邪魔だよね……)
ユキナは、大阪梅田に着いたら、別れようと決めた。
そして…… 別れ際にずっと友達でいようと約束するんだ。
短い黒髪をサッと払い、私は目を開ける。
「……だだよ、のだだよ。ユキナ、もう大阪着くよ」
「うん…… ありがとう。マクナくん……」
「ああ、よかった。起きてくれて」
マクナは優しく肩を叩いて起こしてくれた。
とっても優しくてあたたかい手だった。
「…… ずっと」
ユキナは込み上げる気持ちをグッと抑えて。
「ずっと、ずっと」
とっても寂しいけど、とびきりの笑顔で。
「ずっと、私と友達でいてくれますかっ⁉︎」
ああ、言ってしまった。もう、私ったら…… なんで泣いてるのよ。
「…………」
マクナは無言だ。そして……
「お断りしておくよ」
「……………………⁉︎」
「実は…… 俺には、ユキナの詳しい気持ちはわからないんだ」
「……じゃあ、なんで?」
もしかして、友達にもさせてもらえないのだろうか……
「ただ、なんとなくだけど、ユキナは俺に断って欲しそうだったから」
「⁉︎ えっ…… どうしてそう思ったの?」
「だって、あんなに寂しそうな目でお願いされても……」
そっか、とユキナは返し、
「やっぱり…… 私は諦められなかったんだね」
「何が?」
「もう、そこは聞かなくていいの! とにかく、ひとつだけ言わせて」
「どうぞ」
「ありがとう。あなたのことを、本気で愛してます」
「…………⁉︎」
ユキナが、静かな車内で、静かに告白した。
俺は、何にも言葉が出なかった。
すやすや眠る先輩を横目に、俺は、黒髪ショートカットの諏訪結姫奈が、大きな目で、真剣に俺を見つめている光景を見て……
「ひとまず、大阪に着くから、先輩起こそっか」
そう、電車はもうホームをゆっくりと走行中だった。
「あっ、そ、そうだよねっ! ごめんね!」
俺は先輩を起こし、ユキナは荷物をまとめる。
「ほら、先輩、つきましたよ」
先輩を、ユキナと同じように優しく起こすマクナを見て、ユキナは心が痛むのであった。
ありがとうございました! 感情描写初心者ですが、読んでくださり本当にありがとうございます。




