何か言ったかしら、ふふっ?
今回は短めの京都〜有馬口です! 次はいよいよ有馬温泉……
京都に帰還して任務を全うした俺は、羽咲様と京都を少し観光していた。
「綺麗なお花ですわあ」
いつになくニコニコな少女は、とても可愛らしい。
「これで鈍行強制のスキルがなければ良いんだけどな……」
「あら? 聞こえなかったですわ? もう一度言ってくださる?」
「何にも言ってませんけど!」
「うふふ、次はないですわよ」
「御意……」
聞こえてるじゃないか、羽咲様は本当に耳がいいようだ。
「まあ、何はともあれ、お花が綺麗ですね」
すると、羽咲様は目をぱちくりさせて……
「お花『が』綺麗? それとも、お花『も』綺麗? ちゃんと言い直してごらん?」
「お花も綺麗です……」
「よろしいですわ」
満面の笑みで羽咲様は俺をみつめる。
「これで速達列車を使うスキルがなければ良いんだけどな……」
「俺の真似ですか……」
夕陽に照らされた羽咲様は、顔が赤い。京都でまた呑んだのだろうか。
「まあ、もうこんな時間ですわ、さあ、道草食ってないでさっさと行きますわよ」
「いや、道草って……」
お花たちに失礼なことを言った羽咲様は在来線解散へまっしぐらだ。
「大阪ですわー」
ついに、あたりが暗くなってきて大阪に到着した。
ちなみに京都からの車内では、混雑による羽咲様の座れないイベントが発生して、大変だった。しがみつかれた為、俺の服はシワだらけだ。
「たこ焼き食べたいですわー、ああ、でもお好み焼きもっ!」
「有馬の旅館で食べられなくなりますよ?」
「…… わかってたですわ……」
「ん? どうしました?」
「わかってましたわ! この高貴なるわたくしは、ちゃんと夕食のことを覚えていましたわ!」
「はいはいそうですかすごいですね」
「むう」
一体、今日一日のどこに高貴な要素があったのかわからないが……
「まあ、たこ焼き八個を二人で分ければ、量的に問題ないでしょう」
「えっ⁉︎ ふっ、ふたりでっ⁉︎」
「他に誰がいるんですか?」
「いませんが…… マクナくんと二人で……」
「別に先輩が一人で八個食べてもいいですよ」
「わっ、分けますっ! 分けますわっ!」
顔が真っ赤な先輩。
まさか今日の夜も呑むつもりなのか?
「ふたりきり…… ふふっ、」
微笑む羽咲様。そこへ……
「あっ! さっきぶりだね!」
なんと、熱海で別れた諏訪さんが走ってきた。
「ああ、さっきぶりだな。そっちは大阪観光か?」
「うん…… そうだけど……」
「どうかしたか?」
すると、諏訪さんはちょっと頬を赤らめて。
「彼女さん、顔真っ赤だけど。一体なんて言ったの?」
「ただの酔っ払いの弊害だ」
「ああ、先輩、大人なんだ」
「そういえば言ってなかったな、ウチの大学の四年、神栖川羽咲先輩だ」
「首席卒業予定ですわよ!」
「へぇ……」
諏訪さんはちょっと笑ってこう言った。
「神栖川先輩は、マクナくんの事が好きなの?」
「へっ⁉︎ べっ! 別にっ! このわたくしが、そんなわけっ!」
「そうなんですね、ありがとうございます!」
違いますわ! と全力で首を振る先輩。
すると諏訪さんが……
「では、私はお邪魔ですね…… さようなら、マクナくん……」
「いやいや、邪魔なんてとんでもない。またな! よい旅を!」
「ちゃんと先輩の気持ち受け止めてあげてねっ!」
そういうと、諏訪さんは遠くへ行ってしまった。
「さて、冷えてきましたし、行きますか」
「罪悪感…… はっ⁉︎ そっ、そうですわっ! 冷えてきましたし、行きますかっ!」
また俺のセリフの真似ですか、と思ったが、先輩は改札へ突き進んでしまった。
「もうすぐ有馬ですわー」
東京から丸半日。有馬の目と鼻の先まで来ている。
「訂正ですわ。『汐留』から丸半日ですわ」
「いや、だからなんで聞こえて……」
「訂正ですわ」
「はい……」
思考シーンにも関わらず、たまに先輩に通じてしまうのだ。
「やはり、人生の経験が長いからな……」
「いま、わたくしをおばあさん、と言いました?」
厄介な自動変換付きか……
むすっと怒るハサキさんだった。
有馬で呑みすぎないことを祈るばかりだ。




