わたしっ! 最高に、しあわせですっ!
ユキナ、何度もよく頑張った……
「ユキナ、ユキナ」
誰かが私を呼んでいる。
夜遅くの国際ホテル。自室にいたユキナは、扉の外から声に気づいた。
「ユキナ…… 起きてるか?」
「ん…… マクナくん……」
私の大切な人、マクナくんだ。
部屋に入れると、マクナは床に正座する。
「ユキナ。ちょっと俺の話を聞いてくれるか?」
「えっ…… い、いいけど」
どうしたんだろう。今まで、マクナくんから話しかけてくれたことなんて、ほぼなかったのに。
「じゃあ、聞いてくれ。まずは、今までごめんな」
「えっ…… 急にどうしたの?」
心当たりはない。マクナくんは、いつだって優しいのに。
「いや、俺が悪い。ユキナと付き合えたのに、俺は今までと変わらず、ユキナから逃げていた」
「……」
「全部、そういった、仲良くなるアプローチを、ユキナに任せてしまった」
マクナは、一呼吸おいて、
「そして、ユキナが一生懸命行動しても、俺は逃げるだけ。だから、謝りたい。すまない、ユキナ。俺にできることがあれば、言ってくれ」
「いや…… そんな……」
正直、不安に思わなかったと言えば嘘になる。ただ、そこに「嫌」という感情はなかった。だから、
「ううん、私は嫌じゃないよ。マクナくんが、そうやって悲しい顔をしている方が、よっぽど悲しい。だから、気にせず、元気だして?」
「…… そうか……」
「そう。だから、床に座ってないで、私の隣に来て?」
「…… はい」
マクナくんは、ゆっくり立ち上がり、長いソファに座る。ユキナのすぐ隣だ。
「⁉︎」
「ほら、元気出して? マクナくんは、マクナくんのままでいい。無理しなくていい」
マクナくんの頭を撫でる。
とても驚いたようだ。
「だって、だいたいマクナくんの気持ちは分かる。地の文でバレバレだもん。でもね、」
私は続けて、
「こうやって、やっぱり思ったことはちゃんと声に出して、伝えてほしい。私は、もっとマクナくんの声が聞きたい」
「…… そうか」
「そう。それが一つ目のお願い。あと、ひとつだけ」
私は、マクナくんの目をじっと見て。
「マクナくんは、もう少し、マクナくん自身を大切にしてほしいな」
「…… 自分を?」
「うん。だって、マクナくん、『自分じゃ不適人』とか、『俺には無縁』とかよく言うけど……」
マクナくんの手を優しく取り、
「私、そうやって自分を卑下するマクナくんが、心配なの。もっと自信もっていいんだよ? だって、社長令嬢の私が、こんなに好きになる大切な人なんだよ?」
「……」
「だから、マクナくんは、もっと自分を大切に。私のこと、みんなのことを優先しすぎないでね」
「そうか……」
「そう。あと、なんてったって」
「なんてったって……?」
私は笑顔で、
「マクナくんは、この物語主人公だよっ!」
「…… それはそうだが……」
「そう、だから、この物語の中心にいなきゃ。今までは、私たち、『鈍行令嬢』ばっかり目立ってたけど、ここからはマクナくん」
「俺が……?」
「うん! ただの語り手じゃない。もっと、自分の気持ちを持って、話して、伝えて、私たちと旅行する! それが、二つ目のお願い!」
「…… わかった、善処する」
「絶対だよ? 私の自慢の彼氏くん? 次自分を卑下したら怒るからねっ! 地の文でも」
「……」
私はそこまで一気に話して、ゆっくり続ける。
「でも…… ね? マクナ…… くん?」
「なんだ?」
「わたしは、わたしは……」
「私は?」
「わたしは、マクナくんが可能なら……」
「可能なら?」
「マクナくんから、ちゃんと、もう一回、告白してほしいな……」
「ああ、分かった」
「え、そんなあっさり……」
「今言ったじゃないか。気持ちをちゃんと話してって」
「そっ、そうだけどっ! 心の準備がっ!」
私は、慌てて背筋を伸ばし、マクナくんを見つめる。
「ユキナ、昔から、ユキナのことが好きだ。俺と付き合ってくれ」
私は、わたしは、わたしはっ!
「はい! もちろん! よろしくねっ!」
今、とってもっ! すっごくっ! 生まれて一番!
さいっこうに、しあわせですっ!
ありがとうございました!
これにて、恋愛編は、ひとまず決着!
次は、大学レポートに決着をつけます!




