ユキナのお父さん!
ユキナ父かっけえ……
「小淵沢ですわー」
「コブチザワだねえ」
俺たちは、小諸から小海線に乗って小淵沢まで来た。
ちょっと南下して、中央線に乗るためだ。
「もう真っ暗ですわー」
「そうだね、野球もしちゃったし」
「小淵沢で宿は取れたのか?」
そう、今日はユキナが宿を取る予定になっている。
「ううん。もう少し移動するよ」
「そうか」
どこへ行くのだろうか。何気なく、路線図を見ると……
あ、もしかして。ユキナ……。
それから、電車に揺られて三十分。
「上諏訪だよっ!」
「かみすわですわー」
やっぱり…… だよね、諏訪結姫奈さん。
「ようこそっ! 我が諏訪グループのお膝元へっ!」
「えっ⁉︎ なんか関係あるの?」
ユキナは腰に手を当てて、
「ふふーん、天下に轟く最強財閥! 諏訪グループは、ここが発祥地なのですっ!」
「そっ、そうでして⁉︎」
「そう! 今も沢山、系列会社があるよっ!」
はあ…… 俺、こんな社長令嬢様とお付き合いしてるのか……。
ユキナのご両親に聞かれたら、俺、逃げ出しそう。
「だから、ユキナは宿をとるって……。グループの宿なのか?」
俺は思考を紛らわすべく、ユキナに聞いた。
「逃げるなよ…… あ、そう。お父さんが出迎えてくれるって」
「……」
やばい、まずい。
「さっ! 暗いから、早く行こっ!」
「行きますわー」
「……」
行くか。自白しに。
「こんにちは! ようこそ、諏訪グループ国際ホテルへ!」
「はじめまして、ユキナさんのお父様。わたくし、ユキナさんの先輩の、神栖川羽咲と申します」
「ああ、ハサキさん。話は娘から電話で聞いておりますよ。お世話になっています」
「いえいえ、そんな」
「あと、糸静幕那くん。すまないね、私の娘が迷惑かけて」
スーツ姿の、若々しいユキナ父。
「ああ、こちらこそ! すごいですね! このホテル!」
やばい、ホテルの内装を褒めてしまった。
「そうかい、ありがとう! ウチは、内装がこだわりだからね。嬉しいよ」
奇跡的に救われた……。
「それで、ユキナ。マクナくんの事が好きなんだって?」
唐突なピンチ。まずいっ!
「うん…… すっごく優しくて、昔からずっと好きだったの」
「そうか、昨日いきなり報告するもんだから、びっくりしたよ」
「ごめん…… でも……」
心配そうなユキナ。俺も父親も困惑しないよう、事前に話してくれたようだ。
「大丈夫だよ。分かってる。ユキナは、ウチのグループのことを気にしすぎだからな」
「え……?」
固まるユキナ。
「恋愛くらい、自分に正直になりなさい。マクナくんに迷惑かけないようにな」
「あ、あ、ありがとう! お父さん大好き!」
ユキナがお父さんに抱きついた。
「こらこら、彼氏さんの前だよ。あと、マクナくん。娘をよろしく頼んでいいか?」
「はい。誠心誠意尽くします」
「良かった、ありがとう!」
お父さん…… ありがとう。
そして…… いい内装だな……。
ありがとうございました!




