プチ野球短編3! 神栖川弟の野球教室! 前編
弟さん…… いい奴じゃないか……
「小諸ですわー」
「小諸だねえ」
俺たちは、ショッピングを終え、小諸まで来ていた。
小諸といえば、蕎麦のイメージが強いが、
「お腹いっぱいで、そば、食べれませんわ……」
「私も…… 食べたかったよ……」
そう、軽井沢でラーメンを食べてしまった為、お腹いっぱいなのだ。
羽咲様なんて三杯食べてた。
「レポートに書きますよ? 羽咲様が三杯食べて、ご当地蕎麦食べれませんでした、って」
「うう…… 勘弁してですわ……」
羽咲様は猪突猛進なところがあるからな。
「でっ、でも! 小諸で降りたのはっ!」
「え、蕎麦じゃないんですか?」
「それもありましたけど、野球ですわっ!」
「野球?」
小諸にもスタジアムがあるのか。
「今日は何の試合なの?」
ユキナが尋ねると、羽咲様はふふっ、と笑って。
「これからっ! 試合をしますわよっ!」
「……」
「見る、じゃなくて?」
「プレーしますわっ! 球場は借りてありますわっ!」
「まじか……」
運動不足な俺は、不安を覚えた。
野球も、バッセンくらいしか行かないし……
というか、
「人数が足りないじゃないですか」
そう、ここには三人。
野球は最低十八人。
試合には全然足りないぞ?
「ふっふっふっ、足りますわよ」
羽咲様は計算済みのようで、
「とりあえず、行きますわよ!」
「「「こんにちわああ!」」」
なんと、球場には子供たちが沢山いた。
「みんな、来てくれてありがとう! 僕のこと、知ってるかな?」
あ、あの方は……
「かみすがわせんしゅ!」
「せんしゅかいちょー!」
「よばん!」
「おお、ありがとう! 今日は、野球教室に来てくれて、ありがとう!」
弟の様子を見ていた羽咲様は、
「かっ、カッコいいですわあ…… あんなにたくましくなって……」
と、感動していた。
羽咲様が七歳で現世に来た時、まだ幼かった弟。
当時は、「お姉ちゃん!」って、得体も知れないわたくしを、慕ってくれて……
一度、わたくしの戸籍問題で困ったことがあった。
施設に預けられそうになった時、弟が、
「お姉ちゃんと一緒がいい! 離れたくない!」
って、言ってくれましたわ……
そのおかげで、今のわたくしがいますの。
うう、思い出すとまた涙が……
そんな背景を知る由もないマクナは、
おぉ…… どんだけ羽咲様弟好きなんだ……。
とちょっと引き気味だった。
「よし、じゃあ、順番に教えていくからね。最後の試合に向けて、みっちりやるよ!」
と、神栖川弟は子供たちを二グループに分けた。
「じゃあまずは、こっちのグループの子たち、僕の方に来てー、ノックするよ!」
え、残り一グループは、まさか。
「じゃあ、姉さん! 任せたよ!」
「はい、はいですわあ!」
任されてニッコニコな羽咲様であった。
「さあ! こっちでは、ピッチング指導ですわっ!」
子供たちからざわめきが起こる。
「え! ぼくファーストだよっ!」
「おれはサード!」
羽咲様は、首を振って、
「ちがうの、投げるのはピッチャーだけじゃないわ。野球は、みんなが速くコントロール良く投げれる必要があるの!」
「……」
子供たちはあっさり納得したようだ。
「じゃあ、お姉ちゃんキャッチャーやるから、思いっきり投げなさいっ!」
「はーい!」
「えっ…… お姉さんに……」
元気な返事と、戸惑いの返事。
羽咲様のような美人なお姉さんに、思いっきりは投げられない。
そう思った優しい子供がいた。
「じゃあ…… マクナくんっ!」
「えっ! お、俺ですかっ!」
「決まってますわ! じゃあ、頼みますわ!」
頼まれた俺。キャッチャーミットを渡された。ミットだけ。
「ええと、防具は……」
「ああ、とりあえず頑張ってですわー!」
もうしゃがんで球を受けている羽咲様。
普通にお出かけドレス姿だ……。
「どーしたの? お兄ちゃん?」
子供たちが俺の方を見る。
「あっ! もしかしてお兄ちゃん、お姉さんのことスキなの⁉︎」
「⁉︎ いや、いや、あまり大声で……」
すると、ユキナが寄ってきた。
「はーいっ! 私ボール受けるよー! ほら、防具もしっかりしてるから、頑張って投げてねっ!」
いつの間にか防具をしていたユキナ。
助かった……。
「助かってないよ? まーくーなーくん?」
「……」
助かってなかった……
つづく
ありがとうございましたっ!




