ちょっとだけ甘えていい……? マクナくん?
ユキナ「マクナくん…… カッコいいよ」
「横川ですわー」
「横川だねえ」
さあ、ついに群馬県の横川にやってきた。
改札の方を見ると、「ここまでですよ」とアピールする、列車行き止まりの看板がある。
「はあ、昔はここから軽井沢まで繋がってましたわあ」
「そうだねー、残ってたらなあ、でも、仕方ないね」
少しだけ寂しそうな二人。
それだけ鉄道が好きなのだろう。
でも、軽井沢への道が途絶えたわけではない。
駅から少し歩くと……
「連絡バスですわー」
そう、バスがあるのだ。
軽井沢駅まで、お安く行くことができる。
「いいねー!、賑わってて!」
お客さんが結構いる。まだまだ賑わっていて何よりだ。
「はああ、博物館行きたかったですわあ」
「…… そうだね、また来よ?」
「…… はい」
羽咲は、一瞬「帰還指令」の手紙が頭によぎったが、すぐに頷いた。
「さ、三十分、バスに乗りますか」
「わあああああ! 軽井沢ですわああ!」
「かるいざわー!」
「おお、」
バスに揺られ、山を登っていく。
途中、遠くに軽井沢の街並みが見えたのだ。
それにしても、碓氷峠は今も昔も、人気だなあ。
「つきましたわー!」
「ついたねえ!」
ロータリーにバスが止まり、お嬢様一行はついに長野県の土を踏んだ。
「さあ、電車までは一時間あります。どこ行きましょうか?」
「「ショッピング!」」
「あ、ああ、いいぞ、」
そこは普通? の女の子なんだなあ。
ちょっと安心した。
「さあ! 行きますわよっ!」
羽咲様はずんずん進んでいった。
ショッピングモールは反対口なので、駅を通り抜ける必要がある。
すると、俺の服がクイクイ引かれる。
「ねえ、マクナくん?」
上目遣いで、ショートヘアをいじりながら、俺を見るユキナ。
「手…… つなご?」
ええ、外で手繋ぐのは恥ずかしいじゃん。
「ええ、外で手」
「二回言わないの。ほら、右手出して」
え? 俺一回しか言ってなくない? というか、強制じゃん……。
「当たり前だよ? だって、付き合ってるのに、手も繋げないなんて、悲しすぎるよ」
「そういうものなのか?」
「マクナくんは繋ぎたくないの?」
不安そうに見つめるユキナ。
「いや、それは……、場所による、かな……」
「じゃあ、つなご?」
「……」
どうやら決定事項のようだ。
できるだけユキナから離れて、なるべく柔らかくユキナの左手を握る。
「だーめ、離れない。ほら、こうやって指を絡めて!」
なんか、ぎゅーっと握られた。
「なんだこの手の繋ぎ方は…… 血行改善でもするのか?」
「違うよ…… コイビト繋ぎ、だよ?」
「……」
いや、知らんて。
無理に解こうとしたマクナだったが、ユキナの幸せそうな顔を見て、やめた。
「はあ…… 俺のどこがいいんだか」
「もう! 次、自分をおとしめること言ったら、ハグするからね!」
「それは勘弁してください」
破壊力のある罰が待っていると知ったマクナは、大人しく従うしかなかった。
ユキナはひそかに思った。
「はあ…… 私って、魅力ないのかな………」
昨日付き合い始めたとはいえ、あれっきり、マクナくんは何にも変わってない。
もっと自分に自信持てばいいのに……
だって、自分で言うのもアレだけど、私、可愛いんだよ?
でも……、マクナくんからは何にもアプローチはない。
基本的には、マクナくんは全部、私が望んだことを叶えてくれる。
とっても優しい男の子だ。
ただ、恋愛は、頑なに逃げまくる。
嫌われてしまってるのだろうか。
昨日は、「好き」と言ってくれたマクナ。でも、それが幻覚のように思えてきた。
結局、私はわがままを、叶えてもらってるだけなのだろうか。
「マクナくん…… 本当に私のこと好きなのかな」
一方、マクナは。
やばい、カッコつけてしまった。
ユキナが、せっかく勇気を出してアプローチしてくれたのに、
「俺、一人で大丈夫なんで」と、いつもの癖が出てしまった。
大学で、いつも一人でいたため、ある意味一人に誇りを抱いていたマクナ。
そんなマクナにも、今は一緒に居たい人がいる。
「はあ…… 嫌われたくないな……」
一人と、二人。近いようで全然違うスタイルは、マクナにとっての試練だ。
でもなあ…… ユキナちゃん、結構押してくるからな……。
ちょっと、一人慣れしている俺には、きつい所はある。
そりゃそうだ。一八年間ほぼ一人だったからな。
でも、でも。
そんなところも含めて、ユキナは、俺の自慢の彼女だ……。
好きだ……。
ユキナにとって、俺が彼氏かどうか、自信ないから絶対言わないけど。
ユキナは、全部聞いていた。
「……ふふ、じゅーぶん、伝わったよ…… かわいいかわいい私の彼氏さん?」
昨日からなぜか手に入った、『地の文読み』の能力だ。
ユキナは、幸せな笑みを浮かべていた。
「私も、大好きだよ。だから自信持ってね、マクナくん?」
「⁉︎」
マクナは驚いて、下り階段をコケそうになった……。




