ハサキちゃんのひみつ! 親切なご両親!
とっても優しい二組の両親!
「おうちですわー」
七日間の旅行を終え、大学に行った三人。
さすがにそのまま旅行再開はせず、準備もあるので一旦お開きになった。
羽咲様は、屋敷で一人暮らしをしている。
「はあ、現世はいいですわあ」
ところでもうみんな気づきまして?
そう、わたくしは、リアル奈良貴族ですの。
「なんてったって、服が楽ですわあ」
奈良では、着物が重いわ暑いわ大変なのです。
「ん? 奈良時代からどうやって来た、ですって?」
ふふっ? 気になります?
「それはね? わたくしも分からないのっ!」
そう、わからないのだ。
飛鳥のお寺で雑魚寝してたら、いつの間にか未来に来ちゃった!
当時七歳とかだったから、大変だったよ。
「あの時は言葉も変で、服装も変で、もう終わったと思いましたわ……」
そんな浮浪の少女を救ってくれたのが、今住んでる屋敷の持ち主、神栖川光希さんだった。
「まさか、名字がおんなじ人がいるなんて……」
ここ、茨城県神栖市の大地主である光希は、東京の仕事帰りに彷徨うわたくしを拾ってくれましたわ」
最初は、現代語を話す光希の言葉は分からなかった。
でも、わたくしの古い浴衣を見たのか、光希はわたくしに……
「そなた、道に惑へるか?」
と、優しく聞いてくれましたの。
そのあと、ゆっくりと言葉も、食事も、生活も、光希が親切に教えてくれましたわ。
だから、光希は、光希お父様は、わたくしの命の恩人ですわ!
今は、所持しているメロン農園の視察をしている光希。
そして、今台所にいますのが……
「ハサキちゃーん、ご飯だよー!」
わたくしのお母様、神栖川川奈。
光希の可愛らしい奥さんだ。
「はーいっ! 今いくよー!」
ちなみに、わたくしは両親相手には、恥ずかしくてお嬢様言葉を使えませんわ。
席に座り、一週間ぶりにお母様と話す。
「久しぶりねー! あら、ハサキちゃん。変わったわねえ」
カレーを頬張る川奈。
「な、何が?」
なんのことか分からない羽咲。とりあえずカレーを頬張る。
「決まってるじゃない。お母さんすぐ分かるんだから」
川奈は笑って、
「ハサキちゃん、好きな男の子できたでしょ」
「⁉︎ べっ、べつにい!」
「あらあら、奈良っ子もそこは変わらないわね、いいのよ? 幸せじゃない?」
「うん…… この気持ちは、今までにない」
羽咲様は、川奈には全てお見通しだと悟り、正直に言った。
「そう、私は優しいマクナくんを好きになったよ。でもね、振られちゃったんだ」
川奈は、少し残念そうに。
「それは残念ね…… でも、その、マクナ君も、とっても良い子なんでしょう?」
「うん! マクナくん、すっごく優しいの……」
「良い人と出会えて良かったわね」
ふふ、と笑う川奈。
「あ、あと、ハサキちゃん宛に手紙届いてたわよー」
「え、なんだろ?」
未開封の白い手紙。開けてみると……
「帰還指令。神栖川羽咲殿。平城ノ宮、右大臣のあなたは、ただちに平城ノ宮に帰還せよ。期限は一週間。なお、一週間で自動的に平城ノ宮へ転送される。」
ぶるぶると震える羽咲様。
「どうしたの?」
心配する川奈。
「わたし……、わたしっ!」
羽咲は涙を流して、
「わたしっ! まだ現世に居たい! まだ生きたいっ! みんなと一緒にいたいっ!」
「ハサキちゃん…… ちょっとその手紙見せて、」
川奈は、白い手紙を見て。
「ああ…… そう…… 何かのイタズラならいいけど……、事実だったら……」
「うう、うう…… ぐすん」
「まあまあ、泣かないで、ハサキちゃん。まだ分からないじゃない。何にも起きないかもよ?」
「…… でも、でもっ! 本当だったらっ!」
川奈は羽咲をなだめる。
「私だって、ハサキちゃんと一緒にいたいわ。でも、それは、ハサキちゃんの本当のお父さんとお母さんも同じ」
「……あっ……」
そう、羽咲様には記憶があった。
毎晩私のために、夜遅くまで朝廷へのお勤めを頑張るお父さん。
頑張って、可愛い着物を編んでくれるお母さん。
七年ではあるが、大切な思い出だ。
二十二歳の羽咲様。
当然ながら、現世にはもう実の両親はいない。
でも、戻れるなら!
「そうだね、こっちに帰れない、とは書いてないし、お父さん、お母さんに挨拶してくるよ」
「そう、偉いわね。でも、本当にタイムリープなんてするのかしら? ふふっ?」
もちろん、羽咲様にはタイムリープ能力はない。
自覚がないだけかもしれないが、実際使えないし、こっちに来てから発動してない。
「まあ、一週間は、普通に旅行するよ。ごめんね、不安にさせて」
「大丈夫よ。また悩んだら、いつでも帰っておいで」
「うん!」
笑顔でカレーを頬張る羽咲様であった。
ありがとうございましたっ!




