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新章プロローグ「帰還ノ令。平城ノ宮、カミスガワ右大臣」
新章突入。あと七日間。
「静かですわあ」
誰もいない静かな海岸。
一人の少女が、紙を握りしめていた。
わたくしは、神栖川羽咲ですわ。
わたくしは、
神栖川羽咲ですわ。
自分の声が響く。返事はない。
「糸静幕那さん」
誰もいない海に、自分の声が響き渡る。
「わたくしは、今を生きてはいませんの」
「いいんです。マクナくんは、何も知らなくて。その方が、身のためですわ」
彼が気づくはずはない。だって、完璧に隠してきたから。
「でも、最後に、言いたいのですわ。マクナくんがいる、この時代に」
「わたくしは。わたくしの本当の名は」
波の音が静まる。
「平城ノ宮、太政官所属。神栖川右大臣ですから」
ふっと、神栖川が風と共に消える。
ありがとう、二週間、楽しかったですわ。
さようなら。マクナくん。
もう、砂浜には、淋しさを滲ませた少女はいなかった。
ただ一人を除いて。
ただ一人の少女は、全速力で駆けていった。
あと七日間。




