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学園の鈍行令嬢たちは、新幹線を認めない!  作者: 利根きぬ
さすがの社長令嬢様!!
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25/37

マクナくんっ! 私は、私は!

ユキナさん…… がんばれ!

 ごおおおおおおおおおおおお。

「ねえ、急にどうしたのー? 先輩?」

 ユキナが、羽咲様をからかう。

「うう…… わたくしは何も知りませんわ……」

 羽咲様が、アイマスクをして、寝たふりをする。

 

「あー、先輩、逃げちゃった」

「に、にげてなどっ!」

「あ、やっぱり起きてる」

 ユキナは絶好調だ。

 

「まー、マクナくんにあれだけお願いされたら、私たちも折れちゃうますねー」

「はい…… マクナくん、わたくしのことをそんなに……」

 

 そう、マクナくんは、羽咲先輩の首席を守るために全力で飛行機を提案した。

 

 結局、私たちは熱意に折れたのだが、ただでは妥協しなかった。

 

「ファーストクラスは認めませんわっ!」

「そうだよっ! エコノミーいのちっ!」

 

 とても社長令嬢には似つかない発言をした二人に、マクナは妥協した。

 

「寝れないじゃん……」

 と言っていたマクナは、まだ離陸前なのに寝てしまった。

 

「まあ、わたくしたちが動き回りましたから、」

「そうですね、疲れるのは必然でしょう」

 七日間頑張ったマクナを褒め称えたのであった。

 

「さあ、東京ですわー」

「東京だねえ」

 ふう、なんとかだな…… 正門前まで来た。

 なんとか大学に間に合ったが……


「ユキナ、ユキナはここまでかな?」

 そう。ユキナは俺たちとは別の大学だ。だから、どうしても一回解散となる。

 

「うん…… そうだね。ありがとう!」

 ユキナは微笑んで、

「七日間、本当に楽しかった!」

 

「そうか、それならよかった」

「よかったですわー」

 

 それじゃあな、と言おうとした次の瞬間。

 

 

 

 ぎゅ、っと俺はユキナに抱きしめられた。

 

「ありがとね…… マクナくん。ありがとう……」

 

 そう言うと、ユキナは離れて、先輩を見つめる。

 

 先輩は笑って。

「いいですわよ。わたくしの幸せは、大切な友達の幸せですわ! 頑張りなさい!」

 

 うん…… とユキナは頷く。そして、こちらを見る。

 

「マクナくん…… その…… 私が、中学の頃、忘れ物をしたのを覚えてる?」

 なんだろう、あったようななかったような。

 

「その時、私はすっごく怖かったの。提出ノートを忘れて、先生に怒られたり、みんなに笑われるのが。私、すっごく真面目だったから」

 

 でも、とユキナは笑って。


「その時、マクナくんが、見つけてくれたんだ。私のノート。『俺の机にあったよ』って」

 

 ユキナは、俺に近づいて、大きな瞳で見つめる。

 

「その時、私は…… すっごく安心したの。すっごく嬉しかったの。そして、」

 

 ユキナは、俺から目を逸らさない。しっかりと、俺の目を見て。

 

「その時から、マクナくんのことが、大好きになっちゃった!」

 

 ユキナの瞳から、涙が流れた。

 

「うそ…… 私、なんで……、でも、ずっと伝えたかったの。中学も、高校も、それからも」

 

「……」

 

「マクナくんに嫌われたくない、って思って、ずっと伝えられなかったよ。羽咲先輩のような優しい子がいるから、私じゃ無理、とも思った。でもね、でもね」

 ユキナは、涙を拭って。

 

「やっぱり、ちゃんと伝えないと、マクナくんは気づかない」

 

「……」

「いい? ちゃんと聞いててね? 空耳はナシだよ?」

 

 そしてユキナは。

 

 

 

 

「私は、マクナくんが大好きです。糸静幕那くん。わたし、諏訪結姫奈と、お付き合いしてくださいっ!」

 

 

 

 

「……」

 

 社長令嬢として、真摯にお願いした。

 

 深くお辞儀をするユキナ。俺のことを、「大好き」と言ったユキナ。

 

「そうか…… ごめんな」

「……⁉︎」

 固まったユキナ。そして、

 

「そう、そう…… そうなの……」

 

 寂しそうに、頭を上げたユキナ。

 

「やっぱり、私じゃあ、そうだよね。ごめんなさい…… うう……」

 

 泣きそうなユキナ。でも、頑張って泣かないユキナ。

 あくまで、私の、私なんかの、お願いだから。

 

 マクナくんに、強要しちゃ、ダメだから。

 

「良いの。伝えられただけで十分。私は、それでも幸せ。でもね?」

 

 ユキナは区切って、

 

「また一緒に旅行行こうね! 大切な友達、マクナくんっ!」

 

 

「…… はい」

 マクナは、ユキナに、応えてあげたかった。

 

 だってそうだろう。俺の大切な人が、こんなに勇気を出して、気持ちを伝えてくれたから。

 

 

 俺は、本気で…… 本気で、ユキナが好きだ。

 

 でも、俺は、抱きしめてあげることはできない。

 

 俺だって、できるなら、告白したい。

 

 大好きな、大切な、ユキナちゃん。優しくて、明るくて、真面目なユキナちゃんに、告白したい。

 

 

 でも、できない。俺では、ユキナは…… ユキナは、幸せにはなれない。

 

「なんでですのっ! マクナくん!」

「⁉︎」

 

 羽咲先輩が、俺の手を取って。

 

「マクナくん! どうして…… どうして! 好きな子の告白を!」

 

「…… 何故それを…… あ、もしかして……」

「地の文でバレバレですわっ! なんで自分の気持ちに嘘つくんですの!」

 

 だって…… 俺は、朴念仁だから。

 自分でも分かってるから。

 それが理由で、人を悲しませたこともあるから。

 人の気持ちを、気づいてあげられないから。

 

 だから、僕には、

 

「できますわっ!」

 羽咲先輩は、必死に話す。

「マクナくんが、出来ないはずないんですっ! あんなに優しいマクナくんなら、普段なら、出来るんですっ!」

 

 でも、と先輩は区切って、

 

「今のマクナくんはっ! 何にも考えていませんわっ!」

 

 先輩は悲しそうに俺を見つめる。

 

「俺じゃ無理…… って諦めた途端、ユキナさんは悲しむんですよ! マクナくんもですよ! わたくしもですわ! そんなバッドエンドを迎えたいのですかっ!」


「……」


 すると、ユキナは微笑んで。

「そう、そうだったんだ。マクナくんは、優しいね。でもね、マクナくん」

 

 ユキナは涙をこぼして。

 

「私だって、怖かったんだよ? 私みたいな明るい子が、一人が好きだったマクナくんに近づいたら、嫌だろうからって。ずーっと、告白するのが怖かった。でもね、私はちゃんと宣言する。約束する」

 

「私は、どんなマクナくんも好きだから。今みたいに、付き合うのが怖くてもいい。無理に付き合わなくてもいい。でも、悲しんだり、自分を責めるのはだめ」

 ユキナは俺の手を優しく握って。

 

「マクナくんが、堂々と付き合えるようになるまで、私は待ってるね!」

 

 満面の笑みで見つめるユキナ。

 

「ゆっくりでいい。焦らなくてもいい。嫌、と言われない限りは、私の隣の席、空けておくから。だから、」

 

 

「ずっと幸せでいて下さい。私の大好きな、大好きな、マクナくん」

 

 マクナは、泣きそうだった。

「ユキナ……」

 

 ユキナは、俺のことが好き。

 ユキナはそれを伝えた。頑張って伝えた。なら。

 

「ありがとう、好きだよ。ユキナ」

 

「⁉︎ 」

 

 ユキナは悶えて、うずくまる。

 

 そして俺は、時計を確認し、全速力で大学正門へ向かっていった。

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