鈍行法いはん! げんこーはんだよっ!
マクナくん…… 分かるよ。その気持ち。
ぶううううううん。
「……」
「七日目、最終日ですわー」
「最終日だねえ」
ユキナと羽咲様が、呑気に言っている。
ぶううううううん。
俺はごく普通の疑問を投げかける。
「で、これはどういうことですか?」
無理もない。
俺は数時間前の記憶がなぜかない。
新千歳までのフライトを提案した直後から、なんか視界が塞がれ、眠ってしまったのだ。
で、起きたら目隠しされたまま、ぶうううううん、という音が聞こえるだけ。
「どういうことって…… 決まってますわ」
「決まってるねえ」
だから早く説明してくれ。というか、目隠しをとってくれ。
「こらこら、無理に目隠し外そうとしないっ! まだ服役中なんだからっ!」
「え、俺、なんかわるいこと……」
あ、やべ、まずいかも。お嬢さん! 黙らないでっ! お嬢様ああああああ!
そうして、俺の意識が眠らされ、途絶えた。
「音威子府ですわー」
「オトイネップだねえ」
なぜか俺は目が覚めたら音威子府にいた。
おかしいな。昨日福岡のホテルで寝たはずだが……
そこからの記憶が何故かない。なんでだろう?
「さあ、最終日も夕方ですわー。ここから、怒涛の観光ですわー」
「かんこー!」
「……」
まあ、何も聞かないのが良い気がする。本能的に。
「で、ここからどこへ? あさって朝、大学ですよ?」
「何言っていらして? 今日は最終日ですわー」
「そうだよ? マクナくん? 七日目だよ?」
おかしい。俺たちは現在六日目の旅行中。そのはずだ。
なぜだ。六日目の記憶が全くない。確かに博多に宿泊したのは五日目のはずだっ!
というか、俺が一番危惧しているのはレポートだ。
あんなに「俺やります」と宣言しておいて、、六日目のレポートがないのは、さすがに致命的だ。
「あれ、六日目のレポートって、どんな感じだっけ?」
俺はさりげなく聞いた。
「まあ、大丈夫ですわー、わたくしたちで書かせていただきましたわー」
…… それはひとまずよかったが。それより。
昨日の俺はどうなってんだ?
背中がゾッとした俺であった。
「まあ、とりあえず行きますわー」
「そうだねー、鈍行法違反の、前科持ちマクナくんは置いといて、」
そうか、俺は鈍行法違反か。仕方ないな。
「って! 俺になにをしたあああああああ!」
陰な人柄の俺も、思わず全力でツッコンでしまった。
「稚内ですわー」
「稚内?」
「稚内だねえ。挟まないでねえ」
「ああすまん」
ユキナちゃんに注意されてしまった。
そういえば……
「ユキナ、ユキナって、いつのまにか『だねえ』が口癖になってない?」
するとユキナは顔を赤らめて、
「なってないからっ! でも…… 私の口癖なんか、気づいてくれるところ……」
「気づく? それがどうした?」
「そういうところ…… うう、なんでもないっ!」
そっぽを向いて震えてるユキナ。
「まあ、まだまだお子様ですわー」
いや、羽咲先輩、俺の中では精神年齢ずば抜けて低いが。
「何か言いまして?」
いや、たまに地の文通じてるよな。怖い怖い。
でも、先輩も案外俺のこと見てくれてるのかもな。
マクナはまだ知らなかった。羽咲様から好意を向けられていることを。
「でも、それにしても……」
やはり思わずにはいられない。いくら地の文が危険とわかっていても、思わざるを得ない。
仕方ない。好きな人は好きだ。
やっぱり、ユキナちゃんは可愛い。
こうして、いきなり挙動不審になるところも、全部ひっくるめて。
そんな感性豊かで、優しい子。俺はそんなユキナが好きだ。
でも、ユキナは俺に好意など別に持っていないだろう。
だって、好きなら、俺から顔を背けるわけないじゃないか。
出ましたマクナの朴念仁。その陰で……
「……… ですわ」
静かに黙る羽咲様。
「全部、ぜーんぶ、今、わかっちゃいましたわあ」
マクナ「ありがとうございました。良い子は普通列車がオススメです」




