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学園の鈍行令嬢たちは、新幹線を認めない!  作者: 利根きぬ
恋のスピードは速達列車。社長令嬢の本心。
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動き出す物語。ぐるうぷ学習に隠された真実 〜前編〜

ここから物語は急展開を迎えます!

「宮島ですわー」

「なんとか間に合ったねー」

 ふう、美味しい食事で機嫌が戻った二人と俺は急いで宮島に向かった。

「きれいですわー」

「綺麗だね!」

 そう、テレビとか地理の資料集で「広島県」としてよく出てくる、あの景色だ。

 海の上に鳥居が立っている。

 あそこに平家納経があるんだねー!

 鳥居の方を見て目をキラキラさせるユキナ。

「いや、そっちにはないと思うが………」

 すると、ユキナはむう、と頬を膨らませて、

「もう、ロマンチックを守りなさい!」

 え、何その名言……

 すると、ユキナは俺の手を取って、

「ほら、綺麗でしょう!」

「ああ、夕陽がとっても綺麗だね」

「…… 『が』綺麗か……」

「何だ? 『も』って言って欲しかったのか?」

「⁉︎ わかってるじゃん……」

「いや、なんで『も』がいいのかは正直わからない。ただ、その方が羽咲先輩のリアクションがいいからな」

 何度か景色を見てきたが、その方が反応がいいのだ。

「そう……」

 ユキナは微妙な顔を浮かべる。

「私の『愛してます』ももう忘れられちゃったのかなあ……」

 むう、とちょっと落ち込んだようなユキナ。

 でも、その内心はちょっとだけ嬉しくて、

「これなら、二回目の『愛してる』は効果絶大だねっ!」

「ん? 何だ? 何を愛してるんだ?」

「なーんでもないっ!」

 ふふっ、と遠くから羽咲様は笑っていた。


「廿日市ですわー」

「はつかいちだねえ」

「ハツカイチだな」

「「⁉︎」」

「ん? どうした?」

「マクナくんが……」

「マクナくんが、到着アナウンスしましたわああああああ!」

 えー、それそんなに驚くことか?

 まあいい。俺は疲れてるんだ。今日は一時間海の上を歩いたからな。

「さあ! 明日の作戦会議をしますわよ!」

「え、作戦会議……?」

 そういえば、これまではほとんどお嬢様二人が行き先を決めていた気がする。

 となると、

 

「俺にも発言権が回ってきたああああああ!」

 

「ちょっとマクナくん! らしくないですわ!」

「らしくないよ!」

 だって、嬉しいんだもん。

「俺は新幹線で箱根に一票入れるッ!」

「あー、箱根はいいけどねえ」

 何だ…… どうしたその怖い目は。

「これは、退場ですわあ」

 そうして、自室に追いやられた俺であった。

 

「さあて、敵もいなくなったことだし、作戦会議しますか」

 と、二人きりの部屋で号令したユキナに、羽咲先輩が。

「そうですわ、裏切り者はちゃんと見張らないといけませんわ」

「見張り……?」

「ええ」

 と、先輩は区切って、

 

「もう、ユキナちゃんは報われるべきですわ」

 

 え…… それって、

「先輩、諦めちゃったんですか? ダメですっ!」

 すると羽咲様は微笑んで、

「だって、健気に頑張るあなたを見てると自然と応援したくなりますもの」

「えっ、で、でも、先輩だってマクナくんのこと……」

「ええ、正直好意を持っていますわ。でも」

「でも?」


「やっぱり、マクナくんとのユキナちゃんの幸せが一番ですわ!」

「…… え?」

「あら、気づきませんでして?」

「へっ⁉︎ マクナくんが、マクナくんが、私のことを⁉︎」

「たぶんですわー」

「え、た、たぶん?」

「何となくそんな感じがしまして。先輩の勘ですわ。的中率はなんと三割越えですわ」

「それ半分以上は好きじゃないですね…… でも、」

 とユキナは一呼吸おいて、

「では、遠慮なく、アタックさせていただきます」

「そうよ! その調子だわ! 若いっていいですわね」

 いや、だから先輩も三歳差じゃないですか……


「じゃあ、そんな先輩お姉さんからの宿題です」

「しゅ、宿題?」

 ユキナはきょとんとする。

「ええ、宿題ですわ。ユキナさんは、「この旅行が終わるまで」にマクナくんを落としてみせなさい!」

「ええええええ! もうちょっと長期的なプランはないですかっ⁉︎」

「ないですわー、だってマクナくん、引っ越しますもの」

 

 それを聞いたユキナは、ショックで青ざめた。

「え…… 冗談ですよね……」

 

 羽咲様は残念そうな目で言った。

「そうだといいんですけれど…… 先日、マクナくんのスマホをチラ見してしまいました。その時、わたくしは見てしまったんです」

「な…… 何を、」

「来週、マクナくんは北海道に引っ越します。カレンダーにありましたわ」

「うそ……」

 中学からずっと住んでいた首都圏を離れてしまう……。

 その事実に私は悲しくなった。悲しいよ、だってマクナくん、昔から寒いの苦手じゃん。

「ええ、実はですね……」

「実は?」

「わたくしたちの大学は、夏の『特別ぐるうぷ学習』が振るわないと、北海道にお引っ越しなのです。正確には、上位陣が東京キャンパスを埋め尽くしてしまうのですわ」

「え、じゃあ! じゃあ!」

「そうですわ。つまりマクナくんは……」

「もう、成績下位を覚悟している……?」

「そういうことですわ」

「だから、今のうちにちゃんと、はっきり伝えた方が無難ですわ」

 ユキナは、黙った。そして、

 

「先輩! 諦めちゃダメです!」

「⁉︎ だからマクナくんは……」

「それもそうですけど、まだ上位になれますっ! それだと先輩とも離れ離れじゃないですかっ! 神奈川のキャンパスでいつも一人だった私のっ! 大学生になって初めての友達のっ! 羽咲先輩も遠くに行くなんて!」

「……」

「私は、いやですわっ!」

「⁉︎」

 ユキナは、こんなに駄々をこねたことはない。

 社長令嬢としてそんなことはしない、と決めていた。

 でも、ユキナはどうしても数日前に出会った先輩とのお別れを認められなかった。

「まだ間に合いますっ! 残りの時間! 全力でっ! レポート書きましょうよ!」

「っ⁉︎」

 びっくりして目を大きく開いた先輩。

「そう……ですね、そう…… ですわ」

 先輩は、続ける。

「正直に話します。わたくしは、大学でマクナくんに一目惚れしました」

 真面目な顔で先輩は語り出した。

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