心配したんだよ?
ユキナ「頑張りますっ!」
「広島ですわー」
バスと電車を乗り継ぎ、広島駅までやってきた俺たち。
これから、宮島近くの旅館に泊まる予定だ。
「厳島神社、間に合うかしら?」
そう言ったのは、バスの中で熟睡していた羽咲様。
「ギリギリですわね、日の入りはもうすぐです……」
「はい、もうすぐですね……」
同じく熟睡していたユキナは、なんよなくさっきから、上の空な感じだ。
どうしたのだろう。まだ眠いのだろうか……
すると、ユキナは急に俺に抱きついてきた。
「……⁉︎」
羽咲様は唖然としていたが、ユキナはぎゅーっとしがみついている。
「あのう、ユキナさん? おーい、行きますよー」
俺は、急にどうした、と思いつつも小柄なユキナちゃんはじっとしている。
疲れたのだろうか、そう思いつつ、ユキナを見てみると……
「体があついよ……」
か細い声でつぶやいた。
まずいな、お熱のようだ。
「ユキナさん、体調がすぐれなくて?」
心配そうに、うずくまるユキナを見つめる羽咲様。
「分担しましょう。先輩はコンビニで冷たい飲み物買ってきてください」
「わかりましたわ!」
先輩が駆け足でコンビニに向かうと……
「違うよ……」
「えっ? 何が違うの?」
「体が熱いのは、マクナくんだよ……」
「えええええ⁉︎ 俺⁉︎ 別に元気ですがっ!」
俺らしからぬ驚きボイスを披露してしまった。
いや、だって元気だし、元気だもん。
ユキナの気のせいだろう、と思ったのだが……
「きのせいじゃないもん、マクナくん? 強がらなくていいよ。正直に言って」
「至って完璧健康体ですが」
「嘘つき! 顔真っ赤だし、マクナくんさっきから熱そうだもん!」
それは外が暑いだけでは? と思ったが…… ん? 待てよ……
「ああ、さっきのウルトラヒートチップスかな」
「うるとらひいと? 何それ」
上目遣いで、目をぱちくりさせ首を傾げるユキナ。
「ああ、さっき買った超激辛のチップスだ、だから体温が高くなってるんだろう」
よし、これで一件落着か…… と思ったが、
「うわああああああん! 心配したよおおおおお!」
安心からか、ユキナは泣き出してしまった。
泣かせた原因が、俺が食べたチップスかあ…… なんか残念。めっちゃ美味いのに。
「大丈夫でして⁉︎」
なんと、発熱者のためにブドウジュースを買ってきた羽咲様。おまけに缶ビールも複数個買っている。
いや、まさかそこまでの酒豪だったとは。
「どうしましたの⁉︎ 説明してくださいまし!」
そうして俺が発熱騒動について説明すると、ブドウジュースはお嬢様二人に没収されてしまった。
「…………」
「…………」
「……あのう、怒ってますでしょうか?」
二人は振り返らない。そして、
「べっつにー、女の子を心配させておいてそんなに元気でいられるマクナくんに怒ってなんかいませんけどー」
「別に、わたくしの大切な友達をあんなに泣かせておいて普通でいられるあなたになんて怒っていませんわ」
「わかったからっ! ごめんって!」
「次はありませんわよっ!」
お嬢様方からお叱りを受けた俺。
なんか、普段はとっても優しいけど、たまに理不尽だよなあ……
「お食事ですわー」
「美味しそうだねっ!」
さて、もうペアワークも後半戦だ。
「今頃アマミ先生は何をしているのだろうか……」
ふとそんなことを思った俺。
このペアワークがいろいろありすぎて、なかなか昔の生活を思い出せない。
「俺ってそんな喋るキャラじゃないのにな……」
そんなことを呟いたのであった。
すると、ユキナがそっと俺の耳元でささやく。
「今日はごめんね、マクナくん。これからは心配かけないでね?」
「ああ、わかった」
「ふふ、ありがとう」
とユキナはひと呼吸おいて、俺に尋ねる。
「明日も、明後日も、その先も、ずっと、心配させちゃダメだよ?」
頬を赤らめて、話すユキナ。
俺は、ふと思った。
「俺って、そんなそんなキャラじゃなかった気がする……」
こんなに優しいヒロインに恵まれるなんて。
ユキナ「うう、思いきっちゃいました……」




