社長令嬢同士、仲良くしましょ? 〜穏やか灼熱瀬戸内海〜
社長令嬢は次元が違います!
「ふぅ、調査ですわー」
温泉街調査も三日目。
スタジアムから帰ったお嬢様一行は、道後温泉周辺の調査に励んでいた。
ちなみに、俺の右手にはブドウジュースがある。羽咲様が今日も買ってきてくれたのだ。
「マクナくーん! 羽咲せんぱーい! お昼買ってきましたよー!」
ユキナがレジ袋を片手にこっちに来る。
「ありがとうですわ!」
「いただきます」
近くの飲食できる場所に移動し、おにぎりを頬張る。
「美味しい〜!」
ユキナが頬に手を当てて悶える。
「最高ですわあ」
社長令嬢二人は、コンビニ飯が大好きなようだ。
「あっ! そうですわっ!」
羽咲様が何かを思い出したように、
「ここ愛媛県には、瀬戸内海の造船の街、今治がありますわ」
「ああ、あるけど……」
「今日は、今治に泊まりますわ」
不敵な笑みを浮かべる羽咲様。何か企んでるな。
「あっ! 今治といえば…… アレだね!」
気づいたユキナ。
「そうだな、タオルだな」
俺は、絶対そうだろう、と思って行ったが……
「「それもあるけど、」」
二人揃って俺と違ったようだ。
「しまなみ海道ですわっ!」
「しまなみ海道だねぇ」
いや、だからなんでそんなにニヤニヤしてるんだ? サイクリングとか楽しいし……
あれ、なんか嫌な予感がしてきた。
「さあ、『明日』に備えて、調査終わったら今治に向かいますわー」
やばい、いくらなんでも…… やばい気がする。
俺のお尻ではなく、脚が。
そして、「地獄の明日」は刻一刻と近づいていた。
「夕焼けですわー」
「きれいだねー」
ユキナと羽咲様は、今治の海辺を歩きながらロマンチックに語り合っていた。
俺はというと……
「しまなみ海道 歩けない」
「しまなみ海道 自転車のみ」
「しまなみ海道 タクシー」
ベンチに座って、必死にスマホで検索していた。
どうにかしないとマジでやばい。
特に、ただ歩くだけではなく、海の上だ。
「さあさあ、旅館に帰って準備しますわよ!」
まあ、朝イチで行くっぽいからそこまで夜遅くになることはないだろうが。
「はあ、社長令嬢二人を連れるって…… 責任重大だな……」
きつそうだったら、タクシー呼ぶか……
どんだけのんびりしたいのやら。
「さあて! 行きますわよ!」
まだあたりは真っ暗な朝三時。
俺は部屋に侵入してきたユキナに布団を剥がされて急いで準備した。
「いざ! 出航ですわっ!」
「おー!」
「……」
そうですよねー、流石に歩いたりしませんよねー。
「まさか、ユキナさんのお父様は海運業もなされていまして?」
「はい! ウチ、諏訪家はもともと海運でお金を稼いだんですよ!」
「まあ、ちなみに、元禄以前でして?」
「いえ! 建武元年です!」
「ふふっ、参りましたわ。わたくし神栖川グループは元禄二年創業ですわ」
「わーい! かったあ!」
なんか、とんでもない会話をしていた社長令嬢たちであった。
「ふぇりーですわー」
「フェリーだよっ!」
瀬戸内海の島々を通り過ぎて、本州が見えてきた。
「さあて、おりるよっ!」
えっ?
フェリーはどんどん手前の島に近づいていく。
「あれ? まだ本州じゃないよ?」
「うん! 島からは歩くよっ!」
やっぱりかあ…… そう甘くはいきませんよね……
でも、今治からに比べたら、だいぶ距離は縮まった…… のか? そうであってくれ。
どうやら、しまなみ海道からは外れて、呉の方へ歩いて向かうようだ。
「よおし! 出発進行!」
港に降り立ったユキナは、高々と宣言した。
それから二時間。
ようやくバス停についた俺たちは、ベンチに座りこんだ。
「きついですわあ」
「ふー、歩いたね……」
昨日おとといと、二日連続で野球応援をしたのもあってか、二人ともお疲れムードだ。
「あっ! ばすだ! ばすだあ!」
めっちゃ喜ぶやん、ユキナ。
まあ、俺もバスが輝いてて見えるが。
バスは、呉からちょっと離れた駅まで向かうようだ。
乗ってまもなく、なぜか俺を挟んで座った社長令嬢二人は、すぐに眠ってしまった。
ああ…… 疲れた。
まあ、一五時間徒歩とか言い出さなくてよかったな。
今までのお嬢様の傾向と対策から、割と本気で構えていた。
「すう…… すう、」
「むにゃあ……」
灼熱の外を見て……
バス乗れてマジでよかったああああ! と思う俺であった。
今回もありがとうございましたっ!




