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学園の鈍行令嬢たちは、新幹線を認めない!  作者: 利根きぬ
鈍行令嬢羽咲とユキナ! 〜ふたりとも社長令嬢〜
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令嬢弟は扇風機!

プチ野球短編2 後半です!

「がーんばれがんばれ神栖川! がーんばれがんばれ神栖川!」

 まさかの応援団側だった神栖川さんの声が聞こえてくる。

 隣で球団の旗を振っているのは、ユキナだ。

「ふう、いつも想像の斜め上をいくガチ勢だな……」

 俺は応援団ではないので、バックネット裏にいる。

「しかもまあ、羽咲様の弟がプロ野球選手だったとは」

 四番神栖川の時点で、怪しいとは思ったが…… 実際そうらしい。

 

 ああ、また三振か……

 正直、長打力から四番を任されているのか、大型扇風機の弟さんは三振が多い。

「気合いを入れろー、神栖川!」

 そんなコール応援団にあったっけ、と思ったら、お嬢様単独でコールしていた。

 弟さんには辛辣なお姉様のようだ。

 でもまあ、羽咲様は大学四年生ってことは、弟さんはたぶん高卒プロだろう。

 甲子園に出場したのかもな。

 昨日応援した羽咲様の母校を思い出しつつ、俺は思った。

 

 

 五回終わって二ー七。なんとも言いづらいビハインドスコアだが……

 まあこっちも二点とっているし、相手投手が全く打てないわけではないだろう。

 すると、グラウンド整備中に、球団マスコットキャラクターが踊っているのを見つけた。

「…… ずいぶんダイナミックだな……」

 最近は、どっしりと構えるゆるキャラ型以外にも、あのように踊りまくるアクロバティック型の体型をしたマスコットもいる。

「結構きつそうだな……」

 誰がとは言わないが、結構きつそうだ。

 

 

「さあ行きますわよおおおおお!」

「おおおおおおー」

 なんだ? 今度はなんだ?

 ああ、七回表が終わったから球団歌が流れるのか。

 球団歌を応援団を先導して熱唱するお嬢様は、お嬢様には見えなかった。

 まあ、あれだけ楽しそうならいいか……

「で、いつまで旗を振ってるんだユキナは」

 ユキナは、二〜三個の旗を持ち替えつつずっと大きく振っているので、めっちゃきつそうだ。

 貧弱な俺だったら、二回でギブアップするだろう。

 そう思いつつ、ユキナの腕に応援メッセージを送った俺だった。

 

 

「うわあああああああ」

 なんとチームは八回に四点とって六ー七とした。

 ただ、ツーアウト満塁で、九番がゴロに打ち取られたため一点ビハインドだ。

「気合いを入れろー おっさえろ!」

 抑えピッチャーが登板した。

 この勢いなら、九回に逆転できると監督は踏んだのだろう。

「うおおおおおおお!」

 抑え登板が球場にアナウンスされると、地鳴りが起こった。

 

 でもなんか…… 俺ひとりの実況だと面白くなくない? 大丈夫? 読み飛ばしてもいいよ?

 まあ、こんな俺の実況に付き合ってくれた勇敢な読者様。

 遠慮なく読み飛ばしても大丈夫だからな。

 

「きゃあああああああ!」

 おっと、抑えが一発ホームランを食らったようだ。

 これで六ー八だ。

 応援チームが一点取って惜敗したらルーズベルトゲームだな。

 とは思ったが、まあ九ー八で勝ってほしい。

 

 その後、なぜか三連続キャッチャーフライで裏になった。

 

「最終チャンステーマ行くわよ!」

「おおおおおお!」

 何だろう、最終チャンステーマって、と思ったが直後にいわゆる終盤チャンステーマが流れ出したので、カッコつけてるんだろう。

「かっとばせー! ホームラン! ホームラン! ホームラン!」

 すると、一番バッターがセンター前で出塁する。

 応援団はお祭りムードだ。

 

 さあ、送るのかなあ…… まあ二点差だし、二番足早いから…… 送らないかな。

 うわ! 走った! あー、アウトか…… あっ、監督リクエストだ。

 監督がベンチから出てきて、リクエストを球審に告げる。

「ただいま、リクエストがありましたので、しばらくお待ちください」

 球場アナウンスが流れ、ビジョンに映し出される。

「…… あー、セーフっぽいな」

 タッチしてそうに見えて、グラブが追いついてなさそうだ。

「セーフですわ!」

「うおおおおおおお!」

 さっきから応援団うおおおおしか言わないな。

 

 まあ何はともあれセーフでボルテージが最高潮になったが……

 なんと、相手の監督が二番、三番を立て続けに申告敬遠したのだ。

 

「これは……」

 のっそりと打席に向かう神栖川弟。

「ゴロゲッツー狙いだなあ……」

 そうだ。二点差あるんだから、二塁でゲッツーをとれば、一点差でツーアウト三塁。

 ホームゲッツーなら二点差でツーアウト二三塁だ。

「意外に懸命な判断かもな……」

 と、思われたが……

「まじか、また三振した」

 ここで扇風機が、まさかのダブルプレー回避。

 

 その後五番がグランドスラムを打ち込み、八ー一〇で勝利した。

 

「まったくですわー」

「まあまあ、弟さん、守備の方は……」

「指名打者ですわっ!」

「……」

 全打席三振の弟にお怒りのお姉様。

 二軍落ちを姉なりに心配しているのかもしれない。

「でも、勝って良かったじゃん!」

 ユキナが自分の腕をマッサージしながら言う。

「まあ…… そうですわね。まずは勝ったことを喜びますわ」

 そうだな、冷静に考えれば九回満塁ホームラン勝ちは漫画みたいだ。

 

「姉さん!」

「⁉︎」

 そこには、大きな体をした神栖川弟がいた。

「姉さん! 今日は来てくれてありがとう!」

「…… どういたしまして、ですわあ!」

 羽咲様は、弟が来るなり、満面の笑みで幸せそうだ。

「今日、全部三振しちゃったけど…… 今度こそ、アーチを描くからっ!」

「うん! 頑張ってね!」

 そういうと、弟はこちらに軽くお辞儀をして、急いで球場へ戻っていった。

 他の選手たちに無理言って、来てくれたのかもしれない。

「ふああ、カッコいいですわあ」

「……」

「……」

 どうやら随分と弟さんを可愛がっているお姉様のようだ。


 まあ、何はともあれ、いい試合だった。

 そういえば、お父さんは帰ってしまったのだろうか。まあシーイーオーだしな。忙しいんだろう。


「さあっ! 道後に帰りますわっ!」

「おおおおおおお!」

 まるで応援団みたいな掛け声だった。

ありがとうございましたっ!

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