わたくしとしたことが……失態ですわ!
羽咲様が大失敗します。ユキナちゃんは、照れちゃいます。
さて、ペアワークも三日目に突入だ。
ユキナの参加でもはやペアではないが、まあいいだろう。
「きびだんごですわー」
社長令嬢一行は、岡山まで来ていた。
「おーっ! おいしそー!」
「んー! 最高ですわ!」
「もう最高、はい、マクナくん、口開けて」
「えっ? 口開けてってな」
何? と聞こうとした俺の口にきびだんごが詰め込まれる。
「…… もぐもぐ…… うまいな」
「ずいぶんと大胆ですわ……」
「美味しいよねっ! ここのお店、羽咲先輩の会社が経営してるらしいよ?」
「へー、そうでございましたか!」
「んっ、そっ、それほどでもっ!」
羽咲様は照れてしまった。
「とっ、とにかく、マリンライナーに乗りますわよっ!」
俺は、信じられない言葉を耳にした。
「羽咲先輩、いま、なんて……」
ユキナも唖然としている。
「へっ⁉︎ マリンライナーに……」
突如、先輩が泣き出してしまった。
「うう…… これじゃあお嫁さんになれませんわ……」
「どうしたんですかっ! 先輩だって、快速乗ったって大丈夫ですよっ!」
ユキナが頑張って励ますが、
「だって…… 快速にはトラウマがあるんだもん……」
「トラウマ?」
「…… 気にしないで下さい。すみません」
そう言うと、先輩は涙を拭って、立ち上がる。
「でも、マリンライナーって児島から坂出は通過しませんよ?」
「っ! そっ、そうでしたわっ! じゃあ児島からは乗りましょう!」
鈍行アイドルらしからぬミスをやってのけた羽咲様であった。
「瀬戸内海ですわー」
児島駅を出たマリンライナーは、瀬戸大橋を渡っていた。
「すごい…… ロマンチックだね……」
さっきから、頻繁に乙女になっているユキナだが、マクナは車内で英単語帳を読んでいたため気づかなかった。
「わたくし、告白は海辺に決めましたわ!」
「えええええ! 唐突! でも、もう私しちゃったからな……」
「大丈夫ですわ。優しいマクナくんには、何度だって想いは伝えられますよ。わたくしが仮にヒロインレース勝ったあとも、マクナくんの心を奪えるかもしれませんわ」
「いや、さすがにしませんからっ!」
というか…… そもそも私が勝って改めて告白しても、マクナくんは本当に愛してくれるのだろうか……
ひょっとしたら、嫌われちゃうかもしれない。
もしかしたら、避けられるかもしれない。
そう思うと、悲しくなってくる。
もともとユキナは、別の大学だから、接点も限られてくる。だから……
「でも、やっぱり私じゃ……」
「私じゃ、どうしまして?」
「へっ?」
「まあまあ、意外と簡単に落とせるかもしれませんよ? マクナくんだって男の子ですし、美少女さんには弱いかもしれませんわ」
「そんな…… 美少女は先輩のことを指してますよね……?」
「違いますわ! ユキナちゃんは、綺麗に整えられた黒髪に、ツヤツヤじゃないですか! 若いんだから自信持ちなさいっ!」
「いや、あなたまだ大学生でしょう……」
「わたくしはいいですの、ほら、頑張りなさい!」
やっぱりだ。なんか先輩は、
(最初から勝とうとしていない……?)
そんな気がしたユキナだったのである。
「四国ですわー」
英単語との格闘を終えた俺は、いつのまにか四国に上陸していた。
「坂出ですわあ」
「ちょっとユキナさん! 真似しないでくださいまし!」
昨日俺のセリフを真似た羽咲様は、ユキナに必死にお願いする。
「うう、『地名』ですわー、はわたくしの特権ですわ……」
「はいはい、ごめんなさいね」
ユキナは笑って謝っていた。
「さあて、ここから勝負ですわよ」
「うん、勝負だね……」
「そうだな…… 骨の折れる勝負だ……」
ゆっくり松山までの鈍行修行が始まるのであった。
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