第四十四章 事態好転
薫は再びアメリカで交渉します。今回は歓迎ムードの中での交渉です。
大統領は、薫を大歓迎した。
「西海岸大震災の際は、日本からの迅速な救援をいただき、大変助かりました。おかげで命を救われた国民がたくさんおります。改めて感謝いたします。」
「いえいえ、われわれも東日本震災の時はアメリカ軍の支援を受けました。少しでもその後音が返せたのであればうれしいです。」
「その、被災者を救ってもらえたGGSですが、国民からの要望も高まっております。先回は失礼なことを言ってしまいましたが、災害時にこれほどの威力があるとは想像できていなかったです。」
農務大臣が続けた。
「しかし、抵抗している勢力もあります。穀物を作っている州は世論の広まりに危機感を持っております。業界も同じです。」
「わかりました。では私どもからの提案を髙梨理事長から説明してもらいます。」
「GGSの薬剤の主原料はすべて植物由来です。そのため財団では原料植物の生産拠点の確保が一つのネックになってきております。現在主に作付けされておられる作物を生産転換していただければ、財団側で全量買い付けも可能です。また、GGSを使った豚の低コスト飼育事業も拡大しております。さらに、昨年財団で開発しました無毛牛であれば、GGSで豚同様に低コスト飼育が可能になります。」
薫が続けた。
「今の農業利権を補うレベルになるかはわかりませんが、ご検討いただければと思います。また、アメリカ全土で使用されるようであれば、製薬会社自体を国内に作っていくことも必要になってきます。その投資については日本政府も合わせて協力いたします。」
「おお、そうか。そんなに我が国の利益にもなるのか。」
大統領は前向きだった。
「農務長官、どうだ、これなら問題はないだろう。」
「そうおっしゃられても、業界がどういうかは・・・」
「納得させろ。それがお前の役目だ。私はこれを成果の一つにしたい。」
「はい、わかりました。」
「ごらんのとおり、GGSについては、アメリカ政府として直接買い付けて推奨しましょう。そのかわり、先ほどのお話は日本から投資をしていただけるのかな?」
「ゆうぐれなあす財団と製薬会社で投資を行います。そこは日本政府で保証します。」
「そうであればありがたい。仮契約の調印を進めよう。いいな農務長官。」
「わかりました。」
歓迎レセプションでは、震災で助かった人たちが招待されており、直接、薫にお礼を言ってきた。
防衛大臣も、外務大臣も鼻高々だった。
国防長官が薫に近づいてきた。
「お見事な活躍でした。日本の自衛隊の素晴らしさを実感いたしました。」
「ありがとうございます。」
「あのC3輸送機はすばらしい。現場からも欲しいという声は上がっています。我が国向けに共同開発する用意はありますか?」
「共同開発?」
「そうです、我が空軍ではあのままの仕様では不十分なところもありますので、その改造について共同開発の形で進められないかということです。」
「ご要求は理解いたしました。しかし、開発元の企業にも機密事項があると思います。開発元や防衛装備庁の意見も聞かないと判断ができませんので、持ち帰らせていただきます。」
「良い返事を待っております。」
――危ない、危ない。うまく入り込んで最終的には自前で作るとか言うんだろうな。たぶん装備庁もノーだろう。
レセプション後に、GGS調達についてゆうぐれなあす財団とアメリカ政府は仮契約の調印をした。そのことは大きく報道された。
帰りの飛行機で薫はじっと外を見ていた。
草間が喜んでやって来た。
「総理、EU本部からGGSについて、話をしたいと連絡がありました。アメリカとの仮契約が効いたようです。」
「良かったです。」
薫は安堵の顔をした。
「私がやらなければならないことは、もうすべて終わったようですね。」
GGSの普及活動に一定のめどが立ったことで、薫のすべきことは終わったようです。
この後薫はどうするのでしょう。




