第四十二章 人命優先
薫は人命救助のためにGGSの提供をします。しかし、どうやってアメリカまでもっていくのか?
薫は外務大臣にアメリカの情報取得を急ぐように指示した。
防衛大臣に津波に対する避難誘導を迅速に行えるように各部隊に指示するよう伝えた。
アメリカからの情報は来なかった。今はまだ夜だ。情報は入ってこない。アメリカ大使館も混乱している。ホワイトハウスも状況はつかめていない。
薫は、髙梨理事長に電話した。
「今すぐに用意できるGGSは何人分ある?」
「およそ100万人分はすぐに、2,3日あればアジア各国から集まりますからさらに100万人分は確保できます。」
「わかりました。多言語マニュアルはついていますか?」
「はい、付けてあります。」
「先ず100万人分も無償提供をお願いします。アメリカに送ります。」
「わかりました。」
「搬出はまた連絡します。」
おそらく西海岸は大惨事になっているだろう。薫は支援物質とともにGGSが役立つと感じた。
しかし、どうやってアメリカまでもっていくか?民間機は即時運航を停止している。空港の状況は全くわからない。
薫は、外務大臣、防衛大臣と統合幕僚長を呼んだ。
「自衛隊の輸送機をアメリカまで飛ばせないでしょうか?」
「まだ国際緊急援助隊法第三条の支援要請は来ておりません。」
「それは分かっています。でも一刻を争うときです。」
「総理、それは無茶な話です。法律違反になります。」
草間も総理を諫めた。
「支援要請は必ず来ます。私が責任を持ちます。行ってください。東日本震災の時のお返しです。」
その言葉に統合幕僚長は、防衛大臣に目配せをして言った。
「わかりました。私どもの最新鋭のC3特殊揚陸輸送機を出します。あれなら不整地での単距離離着陸が可能ですが、着陸できないことも想定して陸自の空挺部隊を要請します。しかし、満載すると航続距離が持ちません。アラスカもハワイもどうなっているかわからないし・・・」
防衛大臣がすかさず助言した。
「では、空中給油機KC767を帯同させましょう。人も運べます。帰路の燃料も持っていけます。」
「ありがとうございます。」
「これで、私も同罪ですね。」
「一緒に持ってもらいたい援助物資があります。投下可能な梱包にしてあります。こちらもお願いします。」
「では、百里に明朝1000までに搬入願います。1200出発で動きます。」
統合幕僚長に帯同してきた中部航空方面隊司令官が答えた。
「連絡しておきます。外務大臣は、ホワイトハウスに連絡して、何とか受け入れができないか調整をお願いします。」
「海自には別途護衛艦を出せるように準備を指示します。」
「輸送機の第二陣も状況確認次第お願いします。」
深夜になると、ようやく映像が確認された。ロサンゼルスもサンフランシスコも、ほかの都市も皆壊滅的だった。道路が寸断され、救助隊が向かえないとのことだった。
幸いに、日本への津波は軽微なもので、大きな被害はなく警報は解除された。しかし、アメリカの沿岸部は津波の被害も多い。
未明になって、ようやくホワイトハウスと情報共有ができた。日本からすぐに支援を出すというとありがたいという回答が来た。
新鋭C3輸送機はアメリカに向けて飛んだ。
沿岸部の空港は津波で使えない。内陸部でも滑走路の損傷は大きかった。亀裂が滑走路を横断しており、使える長さは700メートルもない、誘導灯は停電で機能していない。空港機能は消失している。
「あそこに、燃料を積んだまま着陸するのか。止まらなければ炎上だな。」
「緊急短距離着陸システムを使えば、計算上は余裕で止まれるが。・・・」
「あとは、C3を信じるしかないでしょう。」
「そうだな。総員座席反転」
乗員はイスを反転させて進行方向に対し背を向けてGに備えた。
自衛隊員たちは覚悟を決めて、管制塔の携帯無線との交信のみで着陸を試みた。管制塔の指示はない。すべてこちらで判断だ。逆噴射を全開にする。アクティブサスペンションでも、かなり揺れる・・・止まらない・・・滑走路の亀裂が迫ってくる。
止まった。500メートル余りで停止できた。パイロットはまだ操縦桿を握って固まったままだった。
一方、空中給油機は着陸できないので、アメリカ中部の機能している空港に退避していった。
支援物資が隊員によって搬出された。
アメリカ空軍機の姿はまだない。もちろんほかの国からの支援機もいない。尾翼の日の丸が誇らしげに輝いていた。
挿絵はAI作画
自衛隊最新鋭輸送機が活躍しました。日本が支援一番乗りです。
<参考資料>
C3特殊揚陸輸送機 性能表
乗員: 3名(操縦士2名・ロードマスター(空中輸送員)1名)、2〜5名(補助席)+最大120名(貨物室)
対Gのため座席を反転させることができる。(コックピットを除く)
全長: 44.9 m
翼幅: 50.4 m
有効搭載量: 32 t
動力:ターボファンエンジン、22,680 kg × 4を翼上にマウント
USB、パワードリフトにより短距離着陸可能だがエンジン寿命を縮める。
主脚:アクティブサスペンションにより不整地での安定性と直進性を確保。
短距離離陸時に後傾姿勢となる。
最大速度: マッハ 0.9 巡航速度: マッハ 0.75(エンジン2基)
航続距離: 10500km/0t、5,500km/32t
着陸滑走距離: 2,300 m 緊急短距離着陸システム使用時550m
最短離陸滑走距離: 500 m 緊急短距離離陸システム使用時350m
武装なし




