第四十一章 国際舞台へ
いよいよ欧米に向けてGGSの普及活動を開始します。
国会が終わるとG7が開催された。開催地であるマルセイユに向かった。
G7の懇談昼食会で薫は各国の首脳にGGSの普及促進に対し協力を求めた。
しかし、食料の不足は見込めないし、既存産業への影響を考えると政府が積極的に推し進めることはできないとの回答だった。
「アメリカもまだ全然でしょう。」
EUの委員長も同じ考えだった。
薫はヴィクセン大統領に直接訪米の話をした。大統領は日程調整ができ次第招待すると約束してくれた。
11月3日から6日までの訪米が決まった。表向きの訪米理由は、既存投資の成果確認、アラスカ第二油田新規開発に関する協議、自動車関税の適正化をメインとした直接協議が主な内容であったが、薫はゆうぐれなあす財団の髙梨理事長を帯同させた。
日程の中に経済懇談会という時間を設定してもらい、GGSの普及について協議の場を設けてもらった。
アメリカ側は大統領のほかに国務大臣、農務大臣、商務大臣をはじめとする官僚がそろっていた。
「GGSはかなり前にFDAの承認はいただきましたが、なかなかアメリカでは使っていただけていないです。」
「そうですね、NASAが率先して使っている以外ですと、いわゆるスラムと言いますか移民の多いところでの使用率が高いと聞いております。」
役人の一人が説明した。
「我々の国は、ほとんどが飢餓とは無縁です。GGSを使うメリットはあまりないのですよ。」
大統領が笑いながら言った。
「確かに当初GGSは飢餓対策として普及しました。それはかなりの効果を発揮したと確信しております。しかし、今では災害時のそなえ、気候変動による食糧減産に対する備えとして評価もされております。」
薫の説明に対し、農務大臣から、
「アメリカの国土は広いのです。気候変動に対応して作付け場所や種類を変更しており、減産傾向はありません。ましてや災害時に備えてと言われても、なかなか現実味はありませんよ。」
と反論された。
「NASAの使用状況を考えると、軍なら使えそうかな?」
大統領の発言に薫は即答した。
「軍事目的だけならお断りします。」
「これは手厳しいな。」
「食糧産業や飼料産業はすでに獲得した利権があります。それを手放してしまうことはできないのです。失業者があふれることになったら意味がないです。」
「それにつきましては、代替の雇用提案はございますが・・・」
「そんなものを聞いても、アメリカの経済構造を変えることはできないよ。」
商務大臣は突き放すように言った。
「今のわが国の現状では、政府から積極的に呼びかけは難しい。国民のニーズが高まれば別だが、今はその声もない。我々は後進国とは違うんだ。」
大統領の言葉に薫は説得をあきらめた。何か別の手段を講じなくてはならない。しかし、今はそれは思いつかなかった。
協議は物別れに終わった。GGSのアメリカ普及に向けての相互理解はなく、平行線のままだった。
帰路の車中で、薫は髙梨理事長に対して詫びた。
「力になれなかった。申し訳ない。」
「もう10年以上止まっているものです。そんなに簡単にはいきませんね。」
髙梨理事長も窓の外をぼうっと眺めながら、つぶやいた。
日本国総理大臣という武器もアメリカという巨大な敵には無力だった。薫はその無力さを改めてかみしめた。
訪米から帰国して2か月が過ぎたときに、ニュースが飛び込んできた。
「アメリカ西海岸でM9.0級の大地震発生!!」
薫は直ちに全閣僚を官邸に集めて、対策本部を設置した。
アメリカの情報はまだ伝わってこない。
ハワイ太平洋津波警報センターから第一報が届いた。
日本の太平洋沿岸に1から2メートル津波予想、アメリカ西海岸は10メートル以上の予想だった。
気象庁は津波警報を広域に発令した。
一気に緊迫感が高くなった。
使うメリットがないと一蹴されてしまったが、その時起きた大地震。
GGSはどう使われるか?




