第四十章 悪魔降臨
社共党本部に乗り込んだ薫はどう対峙するのか?
「そんな、先方の確認も取らないといけませんし、そもそもスケジュールを確認しないと。警護の連絡も必要です。」
「スケジュールは空いているわ。警護の連絡を頼みます。」
程なく、社共党から受け入れ可能と返事が来たが、向こうの事務担当が何の話かと聞いてきても、事務員は回答に困っているようだった。
薫たちは社共党本部に到着した。かなりの数の出迎えだった。
「草間さんは車で待機していてください。二人だけで話したいです。」
「わかりました。」
安達が玄関から出てきた。
「総理、いらっしゃいませ。汚いところですがどうぞ。」
「二人だけでゆっくりお話ししたいと思いまして、お邪魔しました。急なことで手土産もなく、すみません。」
既に火花を散らす二人だった。
党首室脇の応接室に通された薫は、安達に対し、
「本当に急なところをありがとうございました。女同士で穏やかにお話ししましょう。」
と礼を言った。しかし返す刀で本題に入った。
「賛成に回る気はないですよね。」
「当たり前です。」
「本当に清廉潔白なの?」
「当たり前です。」
「街頭募金・・・私がどんぶり勘定と申しましたが。」
「またおっしゃられるの?失礼ですよ。」
「そうかな?どんぶりに大きなお肉が入っているけど。」
薫はそう言って、社共党の政治資金収支報告書を出した。マーカーがついているところは他の寄付額と一桁違っていた。
「寄付金はその時その時で違うものです。人数も寄付金額も。」
「確かにそうですが、これは問題にならない程度だとおっしゃられますか?」
「はい。問題はないと思っております。だからこのように報告しております。内訳と言われましても街頭募金にはそういった類のものは残りませんので、合計金額だけになってしまいますが。」
「では、仕方ないですね。これをご覧ください。」
そう言って、薫はスマホを取り出して一枚の写真を示した。
「同じ日付ですよね。」
薫が指をさした。安達の態度が一瞬で変わった。
「どうされるおつもりですか・・・」
「何もいたしません。」
「えっ?」
「あなたがこの事実を知っていただければそれでいいです。」
「信じておりました・・・まさか・・・こんなことが・・・」
「だから、私たちが提案するシステムが必要なんです。」
少し沈黙があった後、安達が吐き捨てた。
「あなたは悪魔ね。」
「おほめいただき光栄です。」
「どうりで、私ではなれないはずだわ。」
「ご謙遜を。」
「・・・・・・」
「ではこれで失礼いたします。」
薫は、玄関をルンルンしながら出てきた。それを見た草間は何があったのかとぽかんと口を開けたままだった。
マスコミ各社も集まっていた。ネットニュースで早速、
「三村総理、安達党首と密談か」
「三村総理自ら社共党本部に殴り込み」
と報道された。しかし内容についての言及はなかった。
「安達党首とは、一対一で真摯にお話しさせてもらい、ご理解をいただきました。」
薫はSNSを通じて、状況を報告した。
その日の夜、政治資金改革特別委員会の委員長から連絡があり、社共党から党首討論の取り下げと採決の同意があったとのことだった。
草間は、薫が何かしたに違いないとは思ったが、わからなかった。薫の前に現れる敵はなぜか飼い犬のようにおとなしくなっていく。やはり裏の力が存在するのか。正体がわからないだけに恐ろしいと感じた。
政治資金規正法改正案は特別委員会を全員一致で可決し、衆議院本会議に送られ、若干の反対意見は出たものの、最終的には全会一致で可決。参議院でも同様に可決し、成立した。
「これで、応援していただいた方々への恩返しは終わったわ。公約はすべてできた。
これからは私の思いのために、ちょっとだけこの力を使わせてもらいます。」
うまくやり込めた薫ですが、「悪魔」の称号を与えられました。
これで、本来の目的であるGGSの普及に専念できます。




