第三十九章 野党との対決
野党との戦いは委員会で始まります。薫はどんな手を使うのか?
衆議院政治資金改革特別委員会で火ぶたは切られる。閣議の議事録公開ですでにSNSでは大騒ぎになっていた。
「政治資金改革で野党と対決!がんばれ三村総理」
「これで闇献金は一掃だ!!」
おおむね歓迎する声が多いが、左派を推す者からは、
「政府による資金監視だ。思想信条の自由の冒涜だ。」
という声もあった。
藤田は予測される野党に対峙するためのネタを追っていた。少しでも情報が欲しかった。「K」にも依頼した。さすがに簡単には入手できないようだった。
委員会は開始された。薫も特別に出席した。野党は賛成派と反対派に分かれていた。
賛成側の野党からは、
「民国党からこのような提案がされるとは思っていなかったです。我が党としてもぜひ精査して実現できるように協力したいです。」
と絶賛した。
反対派の平和党党首は、
「プライバシーの侵害にあたり、献金の委縮につながる。」
と党内でも聞いたようなことを言われた。
簑島大臣が、
「このシステムでは認証は本名で行いますが、表示には仮名、いわゆるハンドルネームを使えるようにしてありますので、個人の特定にはなりません。」
と答弁したが、
「それでも、政権側では個人を特定できるのでしょう。」
と食い下がった。
薫は代わりに答弁した。
「個人を特定しないと、迂回献金ができてしまいます。収入に見合わない献金があればチェック対象となり国税とも共有します。」
「それは政府による国民監視だ。横暴だ。」
そう息巻いて発言席を去っていった。
次に発言席に立った、社共党(社会共産党)党首の安達は敵意満々の目で薫を見ていた。
「総理、我々の党に集まるお金は、働く仲間がわずかでも使ってくれと託していただいた浄財です。我が党にはこのようなシステムがなくとも清廉潔白に会計処理を行っております。我々は政党助成金も使っておりません。説明責任があるのはあなた方だけなのではないですか?」
「清廉潔白であれば、このシステムを使っても問題ないと考えます。」
簑島が回答した。
「そういうことじゃないですよ。総理、こんな巨額を費やして自分たちの弁明にだけ使うのはおかしいです。撤回してください。」
「やましいことがないのになぜ、そこまで拒否されるのか。確かに開発費用はかかりますが、議員側の事務所コストや総務省のコストの低減も見込めます。無駄にはなりません。
清廉潔白とおっしゃられましたが、すべての収入のエビデンスはお持ちなんですか?」
「ありますよ。我々の支持者を疑うのですか?街頭募金というものは個々の情報はないもので――」
「そう、そこですよ。どんぶり勘定ですよね。」
「この場は私の質疑です。総理から質問は控えてください。」
安達は興奮して言い返した。
「失礼しました。確かにその通りです。では、党首討論ではっきりさせましょう。」
「いいですよ。白黒つけましょう。質問を終わります。」
薫は安達さえ納得させれば、あとの反対派はなし崩しに同調すると感じた。
そのころ、藤田は「K」から一つの資料を入手していた。
「これは高くつきますぜ。」
「わかった。何が欲しい?」
「民国党幹部のネタならいくらでもあるぞ。」
「では、副総裁のものはありますか?」
「これでよければ。」
「交渉成立です。」
藤田はさっそくクラウドへ格納した。
薫は党首討論でどう対応するか、執務室で作戦を練っていた。なかなか良いアイデアは出ない。
「安達さんは厳しいからな。清廉潔白と言い切るからには切り崩しは難しいか。でも、使えない理由が何かあるはず。やはりあのどんぶり勘定かな?」
薫はタブレットを起動してみた。藤田からのデータがあった。
「やはり藤田さん。私のやりたいことがわかっている。これね。やっぱりどんぶりに隠してあったんだ。でも、これは党首討論では使えないわね。」
薫は少し考えた後、
「では、こちらから出向きますか。」
と言って、草間を呼んだ。
「少し出かけたいのですが。」
「どちらにですか?」
「社共党本部に、安達さんとおしゃべりをしに。」
「なんですと!」
草間は絶句したまま立ち尽くした。
「草間さん、手配をよろしく。」
どんぶり勘定のネタを手に入れた薫は直接乗り込みます。
異例の党首との直接対決はどうなるか?




