第三十八章 強大な敵
党内会議に臨む薫に対し、藤田はどう動くのか?
薫は閣議の前に党内会議に諮った。さすがに閣議で長時間議論をするわけにもいかないし、党の役員にも参加してほしかった。
党役員と大臣、副大臣、政務官が集まった。
一方、そのころ藤田は、前日公開された次官級協議の議事録を見て動いていた。
「おそらく、宮島は財務大臣を押さえて予算を止める手を打ってくるだろう。良い材料を手に入れないと・・・」
藤田は昨年の宮島系の政治団体すべての政治資金収支報告書と農水省、国交省の助成金との照合をした。巧妙に迂回した献金が10件以上確認できた。最初の入金はどれも助成の決定から一週間以内に行われていた。この企業が助成の対象と一致する。
クラウドに急いで転送したが、薫の会議開始には間に合わなかった。
簑島は会議で詳細を説明した。反応は芳しくない。
「政治資金の透明化とは何を考えているんだ。」
「今と変わりはないですよ。年度末に作成する収支結果報告を都度入力するだけです。」
「確かにそうだが、この献金の入力をシステムに限るというのは使えんぞ。パーティー券はどうする。現金で持ってくる支援者もいるんだぞ。」
「それはすべてシステム経由で入金してもらいます。」
「おい、菅沼先生、あなたも何か言ってくださいよ。」
宮島はいうことがなくなってきて菅沼に振った。
「そう言われましても・・・総理のおっしゃられることもごもっともな話ですし・・・」
「なんだ、お前は総理の味方か?」
「まあ、そうではないですが、そうというか・・・」
―――くそ、前の総裁選で見せたヤバい資料忘れたのか。のんきな奴だ。お前も弱みを握られている立場だと分かっていないな。
菅沼は悔しい思いで、宮島を見た。
「細田先生、あなたはどうなんだ。これを認めるのか?」
細田は無言だった。
「民国党だけでない野党も反対するぞ。たとえ閣議決定しても国会が通るのか?」
「それは承知の上です。野党は私が説得いたします。」
「そんなことができるわけがないだろう。財務大臣、こんな予算は認めるな。わかったな。」
宮島は興奮して怒鳴り散らして席に着いた。
「宮島先生のご意見は承りました。今一度検討を加えさせていただきます。」
薫はいったん差し戻した。
会議が終わった後、簑島は聞いた。
「総理、我々の負けですか?」
「いいえ、これはどこかで必ずぶつかる壁です。党内でなければ党外で、想定内です。」
「何か良い手がありますか?」
「そうね。いろいろありますからどれが良いか一晩考えてみますね。」
「よろしくおねがいします。」
簑島は安心して帰っていったが、薫は本当のところはどう対処すればよいか悩んでいた。簑島には知られたくなかった。
執務室に戻った薫は、そっとタブレットの電源を入れた。データが入っている。内容を確認した。
「宮島さんのかかわる献金のデータ?助成の見返り?」
早速メモを取り、宮島の政治資金収支報告書と照合した。
「間違いない。ありがとう、藤田さん。
でも、これは脅し?・・・違う、取引よね。」
薫は宮島を官邸に呼んだ。
「総理、なんですかな?降参ですか?」
宮島は嬉しそうにやって来た。
官邸の会議室で対峙する二人。薫はそっと政治資金収支報告書の写しを出した。
「宮島先生、ここと、ここと、ここですが・・・」
薫が指をさすにつれて、宮島の顔から笑顔が消えていった。
「なんでわかる・・・」
「こういうことが明るみに出ると困るからですよね。」
「・・・・」
沈黙が続いた。
「私をどうしようとおっしゃるのでしょうか?」
宮島が声をひねり出した。
「別に何もしません。こういうお金の流れがあっても構いません。ただ、それをわかるようにしたいだけです。審判は私ではなく国民ですから。」
「・・・・」
「予算の件、お願いできますか?」
「はい。直ちに財務大臣に言って補正予算に組み込ませます。」
「ありがとうございます。」
宮島はすごすごと帰っていった。
「菅沼も細田もこういうことだったのか・・・・怖い奴だ。」
執務室に戻った薫は、草間に予算のことは解決したと報告し、簑島大臣にも電話をした。
草間は薫にどうして予算がついたかを問い詰めた。
「先ほど、宮島先生がいらして、やはり良いことだから予算をつけましょうとおっしゃっていきましたよ。」
といった。草間はそんなことがあるのかと思ったが、それ以上は聞けなかった。
―――きっと何か裏で手をまわしたに違いない。いつもそうだ。清純な顔をしているが何か隠している。
怖い人だ。
草間は薫の怖さを改めて知った。
翌日の閣議で、薫の改革案は全会一致で了承され衆議院に送られた。
舞台は国会に移った。
薫もとうとう実力行使に出ました。それに気づく草間の勘も鋭いです。
さて国会ではどうなるか、野党との戦いになります。




