第三十七章 政府の改革
薫は閣議の議事録の公開を提案します。反対意見はどう封じるか?
閣議で一通りの議論が終わったところで、薫が口火を切った。
「私から提案事項があります。閣議の議事録と、その前の次官級協議の議事録なんですが、公開しませんか?」
みどりの会以外の閣僚たちはざわめいた。
「閣議の公開は30年後と決まっている。いきなり公開は無理だ」
「そんなことをしたら委縮して発言しなくなったり、次官個人への攻撃が始まったりするじゃないか。」
口々に反対の声が上がった。薫は一通り皆さんの意見を聞いたうえで、
「閣議議事録の30年後公開は慣例であり法的な義務ではございません。皆さんが今おっしゃられたセリフは、私が厚労省で省内会議の議事録を公開するときと全く同じです。
厚労省の人たちはどうです?今では生き生きと仕事をしていますよ。文科省や、環境省、国土交通省でも一部採用されてきていると聞いています。これができない理由はないと思いますが。」
「閣議は機密事項もある。そんな簡単に外には出せない。」
「現状でも情報公開請求されたら出すのでしょう。さすがに真っ黒で公開はできないですが、機密保持が必要ならそれは公開から外します。例えば人事案件はすべて非公開でいいでしょう。もし、課題が出ればその時に制度を改善することも止めることもできます。これからは情報もプッシュアップしていきましょう。」
「しかし・・・」
「まだ公開できない理由はございますか?」
「いや・・・」
反論するだけの理由を見つけることはできなかった。
「では、皆さんご了承ということでよろしいですね。次官級協議のほうは私の名前で指示を出しておきます。
事務官。この件も今日の議事録に追加しておいてください。」
和田、簑島、斎藤の三名が拍手をした。宮島はまだ何かぶつぶつ言っているが何も聞こえない。
並行して総務省では、簑島大臣が政治資金の流れを可視化する取り組みを始めていた。これにより政治資金の入金から支出までがすべて見えるようになる。
彼は、大臣直轄の特命チームを発足させ、そこで手段の検討、システム設計、開発費用の見積もりを指示していた。半年ほどで概要が固まり官邸に報告に来た。
「読ましていただきましたが、非の打ち所がないわ。さすがね。簑島大臣。」
「いえ、私は指示をしただけで、ここにいる部下たちが精力的に総理の意をくんですすめてくれました。」
「そうですか。それはご苦労様でした。」
「私たちだけではないです。簑島大臣からは何度もこんな内容では総理に出せないってダメ出しをされましたから。」
「あらら。」
薫は簑島が省内にうまく溶け込んでいることに喜んだ。
「では、これをどうやって提案しましょうか。」
「私から次の次官級協議に諮ります。説明は私からします。もし私の力では収束しなければ、その時は総理にお願いします。」
「次官級協議は議事録公開が功を奏して、全体に積極的になっているから、この件はいけそうな気がします。問題は閣議の古株がまた何か言ってくることかな。」
薫はちょっと遠くを見ながら言った。
「それと予算かな?かなりかかるから補正予算で対応できるかな?財務省はどういうかな。」
「はいそうですね。」
「財務省は、私に任せてちょうだい。」
薫の予想通りに、次官級協議では特に反対意見は出ず、おおむね了承となったが、やはり財務省側からは予算執行時期についての注文がついた。大臣に諮問しないと結論は出ないらしい。付託がついたままでこの案件は閣議に上がった。
記事録公開に続き、政治資金の透明化のシステムも始動しました。
着々と政策を進めていきます。




