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GREAT GREEN ANOTHER  作者: 矢寿紀張


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第二十九章 次々と

波多野が素案を作りました。これで説得できるのか?


 波多野は翌日素案を持ってきた。

「いろいろ考えましたが、こんな案でいかがでしょうか?」

 ――――――――――――――――――――――――――――――――――

 厚生労働省会議議事録公開要領(案)

 1.対象範囲

 ・省内メンバーのみで構成する会議のうち、局長以上が出席するもの。

 ・ただし、省外の出席が参考人場合は対象とする。

 2.非公開条件

 ・発言者の氏名→局長A、室長Bと表記する

 ・個人情報に関する内容、個人を特定できる可能性のある事項

 ・特定企業・団体名、および企業が有する機密事項

 ・その他機密事項として大臣が認めた事項

 3.公開方法、期限

 ・会議後一週間以内に厚生労働省HP内で公開する

 ・公開期限は会議議事録原紙抹消までとする

 ――――――――――――――――――――――――――――――――――

「いい線までできていますね。早速、四人で協議しましょうか?」

 薫は草間と野村を呼び寄せて協議を始めた。

 野村が開口一番、

「局長Aとか局長Bとか、発言を見れば推定できそうです。事務次官や官房はどうしますか?一人だとわかってしまいますよ」

「盲点でした。」

「発言者は01から99までナンバリングして、職位もわからないようにしましょう。それでも内容からわかる場合はあるかもしれませんが・・・」

 薫が提案したが、完璧ではない。

「完全にわからなくすると、真っ黒になって必要な情報が公開できなくなります。」

 草間が補足した。

「問題は機密事項の扱いですね。大臣一任ですか?ちょっと厳しいでしょう。」

 草間が薫を見ながら言った。

「そうですね。すべての議事録を一から十までチェックしなくてはならなくなります。それも一週間以内に。」

 薫は波多野を見ながら言った。波多野は苦笑いだった。

「確かに配慮が足りませんでした。」

「議事録を書く主催部署の判断でよろしいのではないでしょうか。」

 草間が助け舟をだした。

「大臣権限は残したほうがいいですよ。」

 野村が波多野案を追認した。

「発言者の請求で機密にできるようにもできたらいいでしょうね。」

 薫は反対派が主張するであろうことを想像していた。

「隠すには隠す理由は表示しなくてはいけません。それこそ真っ黒になってしまいます。」

「では、理由を添えて主催部署に申し出て、機密事項にしてもらうということでよろしいですね。」

 波多野が確認した。

「そこまでするなら、誰が機密にしたかを知る必要はありませんか?」

 草間が薫に聞いた。

「そうですね。明確にしたほうがいいでしょう、どうしましょうか?」

「理由欄の後にマークを入れるのはどうでしょう?発言者は『S』、主催者は『H』、審議官以上は省内の略称でよろしいかと。」

「そうですね。草間案に同意します。」

 薫が満足そうな顔で言った。

「他に意見がなければ、波多野さん再度まとめなおしてください。省内会議で諮ります。

 翌週の省内会議で薫から提案した。会議場の雰囲気が一瞬で変わった。

 古株の局長たちは、またかよと言った表情で薫を見ていた。

「議事録が公開される限定だと、発言が委縮される恐れがある。」

「発言者が個人攻撃の標的にならないか。」

「国民が正しく理解するか疑わしい。言葉尻を切り取りされたらかなわない。」

 少しずつ意見が出てきた。薫は黙って聞いていた。

「会議の進行を止めると困るのは国民ですよ。」

「公開すれば、法案作成で意見が割れたときに事前に民意を聞けるという魅力はあるな。」

 少し建設的な意見も出てきた。そこに副大臣の榊原が口を開いた。

「我々議員はいつ何時も自分の発言には責任を取らなければならないが、ここにおられる方々は一般人です。配慮が足りないのではないですか?」

 どっと拍手が沸いた。空気が変わった。薫は黙ったままだった。

「三村大臣、どうされました?撤回ですか?」

 会議室に笑いが起きた。薫はゆっくりと立ち上がった。

「皆さんのおっしゃられることはごもっともです。副大臣のご指摘も有り難く受け取ります。

 そのために、発言者の名前、職位は伏せます。発言者の求めがあれば隠す用意もしてあります。

 しかし、機密以外に何を隠す必要があるのですか?意見が対立することは良いことです。正当な反論は堂々と出せばよいではないですか。なぜ、発言を国民の目から隠したいのですか?」

 一同は黙ってしまった。副大臣も何も言わない。

「予定通り、来月分から公開を進めたいと思います。異議のある方はいらっしゃいますか?」

 返事はない。

「では、よろしいですね。もし問題があればいつでも公開を停止します。」

 その時、新井が拍手をした。つられて、他のメンバーも順に拍手を始めた。

 薫はそれを見て、安どの表情を浮かべながら言った。

「厚生労働省の一員として、恥ずかしくない言動をしていきましょう。私も一緒に心がけます。」

 一同がうなずいた。


今回も薫の強引さで通しましたが、議事録公開は成功するでしょうか。

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