第二十六章 野心
薫の野心的な政策が始動開始です。官僚という新たな敵にどう立ち向かうのか。
薫は前厚生労働大臣から引き継いだ仕事が大方片付いてきたころに、自分の理想とする業務を開始できないか探ってみた。まだ議員になってから何一つ公約が達成できていない。大臣なら何ができるか?
タブレットを起動しても、藤田からは何も送られてこない。
薫は政策秘書三人と政策会議をしてみた。
「私の公約は、GGSの国際的普及、二つ目はプッシュアップ支援です。さらに公にはしておりませんが行政のガラス張りもやりたいです。いずれも議員では無理なことでした。厚生労働大臣ならどこまでやれるか、ご意見を伺いたいです。」
草間が口を開いた。
「私は先生とはお付き合いが長いので、以前より伺っており、私なりに調査してきました。
GGSの普及は主に欧米の普及が問題ですが、食料・飼料業界の反発と国益を考えた政府の方針が最大のネックなので、厚生労働大臣の権限が及ぶところではないですね。画期的な変化は難しいでしょう。
プッシュアップ支援は賛同が得られたとしても、システムの改修にかなりの費用が実用です。
マイナンバーシステムを活用したとして、500から1,000億円の予算が必要かと。
行政のガラス張りにつきましては、先生がどこまでお考えかですが、以前おっしゃられた会議なら省内で可能ですが、政治資金管理となると管轄外におなりますね。ここはやれるところから順次やっていくのがよろしいかと。」
やはり手慣れた秘書であるだけあって、すでにかなりの分析が終わっていた。
「そうですね。概ね草間さんの言われる通りでしょう。GSSの件は悔しいですがまだ力不足です。プッシュアップ支援は、来年度予算を何とか獲得したいです。賛同が得られそうな部局からでもできないでしょうか?」
野村が意見を言った。
「部局単位はいい落としどころでしょう。実績が出れば追随してくると思います。」
波多野が聞いた。
「先生、透明化の件のお考えを伺いたいです。」
「これは抵抗勢力が大きいことは予測しています。ですからまだ内輪の話でとどめてください。
全会議と言いたいところですが、まずはその政策の決定経過の公開からでしょうか。」
「と言いますと?」
「専門部会の議事録は公開されていますが、決定機関である部局の会議や省内の会議の議事録を公開できないかと。もっと言うなら動画公開できたらと思っています。」
野村が聞いた。
「それらの会議では、個人情報や企業秘密もかなり出てきます。そのまま流すわけにもいかないですよね。まして動画中継だと・・・」
波多野も
「すべてと言っても、隠さなければならないものは、必要ですね。」
と言った。薫は少し困ったような顔をした。すかさず草間がまとめた。
「先生、この件はまだ機も熟しておりません。まずは我々で議論を尽くして提出できるレベルの改善案の策定をしましょう。
先生の政策は、プッシュアップ支援への転換を目玉にしていきましょう。これとて、簡単にできるかどうか。法律改訂はハードルが高いので政令変更で可能な範囲にとどめましょう。」
「そうですね。あまり性急にしてもやりきれないです。」
「では。次の省内の政策会議で私から提案して、記者会見で発表する段取りでよろしいでしょうか?」
「省内会議の反応が見ものですね。」
波多野は薫の野心的な攻め方にワクワクしていた。野村は、省内の抵抗を想像すると心配になった。
翌日、副大臣、政務官と事務次官と事前協議をし、翌週の省内政策会議で、薫はプッシュアップ支援への転換について説明した。会議場はざわめいた。
「翌週までに各局で対応可能な支援についてリストアップして提出してください。」
会議の場では反対意見は出なかった。薫は少し不気味であったが、そのまま記者会見で発表した。
すぐにネットが反応した。SNSではおおむね賛成が多いが、ネットニュースは否定的なものが多かった。
その夜、タブレットに初めて返信があった。
薫の発表に対し、協力してもらえそうな局長、審議官と、断固反対するであろう局長・審議官のリストだった。
「これはしっかり利用させてもらいます。藤田さん。」
少し秘書たちも乗り気になってきました。藤田からも援護の資料が来ています。
薫はどう進めていくのか。




