第二十五章 再出発
薫は厚生労働大臣として新たな道を歩き始めます。
体制を強化して、政策を伝えますが。
臨時国会が始まった。内閣総辞職があり、首班指名選挙が実施された。細田総裁が首相に再任された。その夜、官邸から電話があった。約束通り厚生労働大臣になった。
「先生、大臣就任おめでとうございます。」
草間と林が祝ってくれた。
「これからはますます仕事が増えます。お二人にはさらに負担になるかとは思いますが、よろしくお願いします。」
藤田や、ゆうぐれなあす財団からも祝福のメールが来た。
マスコミ各社から取材依頼が来て、秘書二人は応対でてんてこ舞いになった。
薫はスーツに着替えて官邸に向かった。
いよいよこれからが本当の戦いになる。そう薫は思い、気を引き締めて車に乗った。
認証式も終わって、議員会館に戻った薫は草間に言った。
「これからは秘書二人というわけにはいきませんね。」
「そうですね。政策担当も私一人では回り切れませんし、事務もスケジュール管理だけというわけには。
最低でも政策担当にあと二人、事務は広報に二人、スケジュール管理にあと一人、予備に一人くらいでしょうか。先生にはいわゆる地元がありませんから、秘書は少なくても回ります。」
「草間さん、どなたか当てはありますか?」
「政策秘書は私のような境遇のものがいますから、声をかければ来る可能性はあります。人材は私が責任をもって吟味します。」
「それではお願いしていいですか?」
「事務のほうは、私には当てがないですが、また公募しますか?マスコミ経験者、IT系経験者がいると心強いです。
今の林さんはかなり優秀ですね。分単位のスケジュール管理をこなせます。林さんを予備というかリーダーにしてまとめてもらうほうがよろしいかと思います。」
「そうですね。私も林さんにはかなり助けてもらっています。リーダーは適任ですね。」
翌日は厚生労働省初登庁だった。初登庁と言っても薫にはなじみのある建物のまま。集まった幹部には知った顔がちらほらいた。後輩たちも出世していた。
所信表明として、
「私は、かつてここで働いていました。かなり時間がたっておりますので、まずは皆さんの仕事内容を勉強させてもらいます。
そのうえで、必要な改善があればどんどん提案していきます。よろしくお願いします。」
と言って、満場の拍手に迎えられた。
しかし、年度が替わるまでは、使える予算もないので今までの延長線上で職務を務めていくしかなかった。勝負は来年度予算の獲得からだなと思った。
程なく、草間が政策秘書候補を連れてきた。野村と波多野で、どちらも40代で若かった。しかし、いずれも野党での経験者で、厚生労働省業務にも精通している。断る理由はなかった。
公募した事務系秘書も応募は50名に上った。その中からIT系、マスコミ系、秘書経験者を選抜して、薫、草間、林の3名で面接して4名を選んだ。
『チームMIMURA』の発足だった。
薫は草間に対し、腹の内を話した。
「以前、もう一つやりたいことがあると言っていたことですが。それは行政のブラックボックスの解消です。例えば会議の経緯とか政治資金の流れとかの透明化です。
政治資金は、一つのシステム内で、献金や助成金の入金管理、出金管理をおこない、収支報告書を不要にし、1円たりともうやむやにしないようにしたいです。」
「それは・・・」
草間は言葉に詰まった。
「会議の件は厚生労働省で手始めにやってみたいです。」
「大変な仕事ですよ。抵抗勢力はかなりのボリュームでしょう。」
「それは承知しております。私はゆうぐれなあす財団に入る前に厚生労働省の職員でした。しかし、そういう現実を見て嫌気がさし、逃げ出したんです。今この地位で帰って来たなら逃げ出した責任を取る必要があります。どうか協力してください。」
「わかりました。これを成し遂げれば素晴らしいことです。まさにやりがいですよ。」
薫野の思いはとても大きく、すぐにできそうなことではないです。
経験のある秘書たちにはとてつもない大臣と思われたでしょう。




