第二十四章 取引
薫の厚生労働大臣内定がピンチ?
総裁選挙はどうなるのか?
こうして議員として体制を整えた薫は、表向きは党に従った有能な議員として党議に沿って進めているように見せかけながら、勉強会では様々な政策を仮定して、討議していた。
草間の献身的な働きで、議員三村薫は頭角を現わしていった。
そうした中で、民国党総裁の任期満了に伴う総裁選挙が行われることになった。
現総裁の細田の再任かと思われたが、対抗馬が現れた。民国党内で反政権勢力になっている宮島氏だった。宮島氏が総裁になると幹事長との約束も反故になる可能性が高い。
薫は細田の応援をせざるを得なかった。しかし勉強会でも意見は割れた。党内を二分する争いになりそうな気配だった。
ある日薫宛てに藤田から封書が届いた。中には密封された封書が一つ。菅沼幹事長に渡してくれとあるだけだった。
薫は幹事長に封書を渡した。幹事長は不審に思いながらも封書を受け取った。薫が帰った後に封書をあけた。幹事長は手が震えた。急いで官邸に報告した。
―――あの女、なんというものを持っているんだ。敵にしたらまずい。
数日後、宮島氏は総裁選立候補を取りやめるという発表があった。細田総裁の無投票再任が決まった。
薫は幹事長室を訪ね、確認した。
「幹事長、以前の約束。厚生労働大臣の件は大丈夫ですね。」
「ああ、大丈夫だ。間違いない。」
「ありがとうございます。」
薫はニコッとして礼を言った。
「ところで三村君。先日の封書はいったいどこで手に入れたんだ?」
「それは言えません。何かありました?」
―――何かありましたじゃないよ。なぜ平気な顔をしてそんなことが言えるんだ。
「いや、何でもない。」
「臨時国会で首班指名を行う。その後に組閣人事発表だ。準備をしておいてくれ。」
「はい、わかりました。」
その夜、久しぶりに藤田からの誘いがあった。さすがに件の焼鳥屋というわけにはいかないので、個室のある料理屋で会うことにした。
「藤田さん。お久しぶりです。」
「厚生労働大臣は確定かい?」
「今日幹事長に確認しました。準備しておくようにと言われました。」
「いよいよだな。とりあえず、薫の厚生労働大臣の健闘を祈って乾杯だ。」
二人は笑いながらグラスを重ねた。
「ところで先日送ってきた封書は何だったの?」
「大したものではないよ。ちょっと揺さぶりをかけてみただけだ。」
「中身は何なの?幹事長の狼狽ぶりからするとかなりのものね。」
「君は中身を知らないほうがいい。」
「宮島氏が立候補を取りやめたことに関係するの?」
「さあ、どうだろうな?取りやめは宮島氏が決めたことだし。党内融和じゃないのかな。」
「なによ、とぼけちゃって。」
しばらく歓談していたが、藤田が真面目な顔で言った。
「厚生労働省を辞めるよ。」
「えっ、なんで?もうすぐ定年でしょう。」
「早期退職する。君が大臣になると俺もやりにくいし。」
「辞めてどうするの?」
「国際医薬コンサルタント事務所を開設する準備をしている。今までのノウハウがあるから何とかなる。」
「じゃあ、藤田さんの新天地の活躍を祈念して乾杯。」
そう言ってまた二人がグラスを重ねた。
「二人で会うのは、今日で最後だ。」
藤田が突然言った。
「どうして?」
「君にも警護がつく身分になる。プライベートはなくなる。会えばスキャンダルになる。」
「・・・・・・」
「そこでこれを渡しておく。」
そう言って小さなケースに入ったタブレットを渡した。
「これは何?」
「専用クラウドと接続できる端末だ。この端末以外では接続できない仕様にしてある。
使えそうな資料があればここに送っておく。毎晩確認してくれ。ただし接続時間はなるべく短時間だ。使わないときは電源を切ってそのケースに入れろ。電波遮断されている。」
「私はどうすればいいの?」
「この端末では何も送るな。足がつくとまずい。俺が状況を判断して送っておく。データは開封したら3分で消える。すぐに頭に入れてくれ。開封しなくても24時間で消す。もちろん暗号化しているから漏れても大丈夫だが、念には念を入れる。」
「もし誰かに存在を知れた時は端末ごと破壊してくれ。秘書の草間にも悟られるな。」
「わかった。」
その後、二人は最後の夜を楽しんだ。
藤田のナイスアシストで、無事に厚生労働大臣に就任できそうです。
秘密兵器も手に入れて、ますます活躍できそうです。




