第二十三章 体制強化
薫は藤田の指示通りに独自の秘書を探し始めます。その募集方法とは。
薫は、当面秘書探しをすることにした。と言っても当てがあるわけではないので、公募することにした。1000万人の投票があるなら秘書になってくれる人くらいいるだろう。そんな単純な考えだった。
まず、SNSを使って告知をした。
「急募!政策秘書、第一秘書。経験者優遇。三村薫と日本を変えましょう。」
瞬く間に拡散され、新聞広告や求人サイトの手続きが済む前に20件の打診が来た。反応が早い。
その中に政策秘書経験者がいた。まずその人の面接を最初に行った。
「草間義明と申します。」
55歳の細身の男性だった。
「志望動機を伺いたいです。」
「現時点で無職ですので、仕事を探していたのが第一です。」
「履歴書によると、平和党で政策秘書をやられていたのですね。」
「はい。前回の参議院選挙で議員が落選して、失職しました。」
「あら、ある意味私のせいで無職にしてしまったのかしら。」
薫は自嘲気味に言った。
「いえいえ、とんでもないです。議席を失ったのは、党にも議員にもそれだけの魅力がなかったからだと思っています。」
「どの方の秘書をされていました?」
「調べればわかることでしょうが、私の口からはちょっと・・」
「わかりました。」
草間は、少し声を抑えてつづけた。
「実はもう秘書はやらないつもりでした。いろいろ政策を立てても、泡沫政党の議員では実行力があるわけでもないので、見送りになることが多かったです。党自体も他の党の批判ばかりで、自ら動くという考えが皆無でした。だからと言って与党の秘書は狭き門でコネがないと難しいので私のような経歴では声がかかりません。
そんな中で、三村先生が1000万票を獲得して当選され、こんな方の秘書なら政策立案のやりがいがあるだろうなと思っていました。でも、やはり私には縁のない話だと思っていましたら、秘書募集のSNSが目に留まり、直ちに応募した次第です。」
「私もまだ新人で、政策実現の実行力なんてありませんよ。」
草間はまっすぐ薫のほうを向いたまま自信を持ってこう言った。
「先生の公約を拝見すると、プッシュアップ支援とありました。それこそが国民の必要としている行政の在り方だと思います。足りない部分があれば私が支援いたします。どうかわたしを秘書にお願いします。」
「草間さん。わかりました。あなたはまだこの世界に忘れ物があるのですね。」
「忘れ物ですか?」
「そう、あなたはまだ納得がいくまで仕事を完遂していないでしょう。」
「まさにそうです。」
「私も同じです。どうか一緒に1000万人の供託を受けてください。こちらこそよろしくお願いします。」
そう言って頭を下げた。
「いえ、こちらこそ・・・ありがとうございます。誠心誠意頑張ります。」
「ではつきましては引き続き待遇面の話をさせてください。」
こうして、政策秘書は見つかった。
第一秘書は、主に日程管理をお願いしたい。プライベートな時間もあるので女性のほうが良かった。応募してきた中から、大手社長秘書の経験者であった、林美津子を採用した。
「長らく秘書をお借りしていましたが、ようやく秘書が採用できましたので斎藤さんをお返しいたします。大変助かりました。ありがとうございました。」
「斎藤さんも短い間でしたが、よくやってくれました。」
薫は幹事長室を訪れ、礼を言った。
その後、勉強会のメンバーに二人を紹介した。メンバーの中には草間を知っているものもいた。
「草間さんには、時々この勉強会も手伝ってもらうことになるでしょう。」
議員会館の自室に戻ると薫は林を先に帰した。
「草間さんだけに話しておくことがあります。」
先ほどとは薫の表情が変わっており、草間は声が出なかった。
「実は次の内閣改造の時に厚生労働大臣のポストを内諾、いや承諾をもらっています。」
草間は冷や汗が出た。一年生議員なのにすでにここまでとは思ってもいなかった。
「プッシュアップ型支援は、今は進められないですが、厚生労働省で一気に進めるつもりです。あの勉強会でも、具体的には話していませんが政策の一つとして議論をしています。草間さんも今から準備をお願いします。」
「そしてこれはまだ誰にも言っておりませんがもう一つやりたいことがあります。時期が来たらお話しますので、その時はこちらも協力してください。もちろんこれらは誰であっても口外厳禁です。よろしくお願いします。」
草間は何も言えなかった。
―――私のやりがいどころではない、とんでもない怪物の秘書になってしまった気がする。
優秀な秘書に恵まれたようです。
しかし、薫の大きな志に、秘書のほうがたじたじです。




