第二十二章 薫覚醒
藤田に泣きついた薫に授ける藤田の作戦とはいかに。
「藤田さん。議員は理事長よりも無力です。何もできない・・・・」
薫は泣きながら言った。
「・・・・・・」
「私はどうしたらいいのか・・・」
「仲間は作ったのか?」
「うん。10人で勉強会をしている。党外からも参加してくれている。」
「よし、それならいい。」
藤田は次の計画に移ろうとしていた。
「薫、よく聞け。入閣しろ。厚生労働大臣になれ。」
「そんなのは無理だよ。」
「いいから聞け。お願いではない。入閣させるんだ。」
泣いていた薫が真顔に戻った。
「どういうこと?」
「いいか、お前には1000万人の国民がついている。それが武器だ。党に投票したのではなく三村薫に投票した人たちだ。」
「しかも、民国党には大きな貢献をした。見返りを要求する権利はある。厚生労働大臣のポストを引き換えろ。ただし、ストレートに言うな。向こうに用意させろ。」
「どうやって?」
「自信を持て。それだけでいい。相手は菅沼幹事長だ。」
「うまくいくのかな?」
「もし、だめなら。勉強会を独立した会派にするようにほのめかせ。」
「会派にするの?」
「今はまだしない。入閣するには与党の力が必要だ。独立を匂わせばいい。こっちが利用する立場だ。」
「いいか、すぐでなくてもいい。1,2年後の入閣の確約をとれ。バックアップはする。」
「わかった。やってみる。どうせ何もしなかったらそのまま終わるだけだ。とことん食らいついてやりますよ。」
「そうだ、それでこそ薫だ。」
「それと、なるべく早く自前の秘書と交代するんだ。今の秘書はお前の監視役だ。」
翌日、薫は幹事長室を訪ねた。
「昨日の党議の件ですが。」
薫が切り出した。
「考えはまとまったかね。」
「今回は党議の通りお受けします。」
「そうか。そのほうが長く議員をやれるよ。ゆくゆくは・・・」
「その代わり、こちらからも要求がございます。参議院選挙の貢献に対する評価ですが、まだいただいておりませんよね。ご検討ください。」
「ああ、そうだな。だからゆくゆくは・・・」
「そうではなく、今決めてください。」
「今か・・・どんなポストが希望なんだ?」
「委員会で質問側より答弁側に回りたいですね。」
「何?」
――――こいつ一日で何が変わってしまったんだ。この自信は何だ。わからん。
藤田か?ということはあの資料のことを知っているのか。
そうなると、うかつに蹴るわけにもいかない。政務官か、いや副大臣なら納得するだろう。
菅沼はとっさに考えて、
「そうだな、副大臣なら文句あるまい。」
「副大臣ですか?」
「ああ、新人では異例だぞ。」
「副大臣ならお断りします。私には1000万人の国民がついています。裏切らない仕事がしたいのです。先ほどの党議の件はなかったことに・・・」
「わかった。」
――――本格的にやばいぞ。10人くらいでグループを作っていたな。独立する気か?新党を作られたら最悪だ。何とか阻止しないと、次の選挙で大きく議席がなくなる。
「今すぐとは言えないが、次の内閣改造で考えるように総裁に進言する。あくまで選挙の功績の褒美だ。それ以上のものではない。」
「ありがとうございます。」
――――恐ろしい奴だ。議席と引き換えに厄介な爆弾をしょい込んでしまった。総裁にどう説明すればいいのか・・・
菅沼はこの先のことを考えると今すぐにでも政界から逃げ出したいくらいだった。
世論の後押しという武器を使って、薫は幹事長を操れるほどに覚醒しました。
今後の活躍が楽しみです。




