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GREAT GREEN ANOTHER  作者: 矢寿紀張


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第十九章 政界進出

薫の政界進出が好条件で決まりました。

選挙はまだ先ですが、準備は始まります。

 公認内定の話は、藤田から薫に伝えられた。

「本当に、公認されるの?そうか、それなら本腰入れて活動しないといけないね。」

「幹事長が一度会いたいと言っていた。」

「そう。私はいつでもいいですよ。」

「じゃあ、俺が日程調整しておくよ。」

「ありがとう。でも、なぜ藤田さんがここまでしてくれているの?」

「俺のほうが、人脈があるからと末永さんに依頼されたんだよ。」

「末永さんか。先週急に田舎に帰ると言って本当に辞めちゃったからね。」

「そうなんだ。」

 藤田は複雑な気持ちだった。

 半月後に、薫と藤田は民国党本部を訪ねた。菅沼幹事長は満面の笑みで薫を迎えた。赤坂の料亭の姿とは全くの別人だと藤田は思った。

「三村さん、よくいらしてくださった。お活躍は良く伺っております。」

 藤田は、歯の浮くようなことを言いやがってとは思ったが、そこは笑顔で応対していた。

「私のような、素人が政治の世界でどこまでやれるかわかりませんが、よろしくご支援をお願いいたします。」

 薫の言葉に、菅沼はニコニコしながら、

「三村さんの知名度でしたら問題ありませんよ。GSSの普及で全世界に知られていますし、何しろノーベル平和賞を受賞した財団の理事長ですから、私どもも願ったりかなったりですよ。」

「幹事長、なんかずいぶんと評価が変わりましたね。」

 藤田がちょっと皮肉を言った。

「藤田君、勘弁してくれよ。細田総裁が候補者の目玉になる人を探していたので、乗り気になってね、即決で決まったよ。私こそ君に感謝したいくらいだよ。でも一位を約束させるのは苦労したんだぞ。」

 ――まあ、あの資料が出ないなら、何でもやるだろうな。これ以上はかかわらないほうがいい。

「私は仲介役なので、今日でこの話からは失礼させていただきます。あとは三村さんと幹事長で進めてください。」

「え、藤田さん手伝ってくれないの?」

「私は公務員の立場なので、深入りはできません。そうですよね幹事長。」

「ああ、確かに厚生労働省幹部が特定の候補者に公に肩入れするのは望ましくないな。党のほうから事務員や参謀を派遣できるようにしておこう。」

「三村さん。早いうちに記者会見を開いて意思表明をしたほうがいい。幹事長も同席願いますね。」

「おお、もちろんだとも。タイミングが合えば総裁にも声をかけるよ。」

 なんかすごい話になっている。薫はまだなんか他人事のような気がしてならなかった。

 とはいえ、薫は立候補するからには政策を考えなくてはならなかった。

 一つはGGSのさらなる普及による人類救済プラン

 もう一つは薫がかつて厚生労働省で挫折を味わった支援の届かない人を救うことだった。

 そしてもう一つやりたいことがあるが、今は封印しておくことにした。

 政策案内パンフレットもでき、記者会見の日程も迫ってきた。

 総裁は都合で来られないが、ビデオメッセージはいただけた。

 記者会見では、薫の政策の説明より幹事長が目立った。

 幹事長は薫の肩に手をかけて、

「三村さんは世界を飢餓から救った人です。ノーベル賞を取った、ゆうぐれなあす財団の理事長です。」

 と言って、薫とゆうぐれなあす財団を褒めちぎった。この会見はネットニュースですぐ拡散し、翌日の新聞で大きく取り上げられた。すると海外からすぐに反応が出た。

「三村理事長を応援しよう。」

「私たちはゆうぐれなあす財団に命を助けてもらいました。」

「三村理事長は日本の誇りです。」

 かつて、GGSで飢餓から救われた国の方々からSNSに応援メッセージや動画が流れた。これには薫も驚いた。幹事長はもっと驚いた。一国の国会議員選挙候補者に対し世界的な盛り上がりになっていた。

 薫は全国を回り講演会を続けた。国際世論に押されて国内世論も薫を後押ししていった。特に無党派層には響いたようで、全国行脚の日程はSNSで拡散され、どこの会場も満員の聴講者になった。

 世間が盛り上がるにつれて、薫は悩んでいた。これだけの期待を裏切ることになったら怖い。財団の理事長との兼務では選挙に本腰が入れられない。しかし、理事長になって4年もたっていないのに放り出してしまってもいいのか。答えが出なかった。

 そんな中、末永の訃報が届いた。独り身だった末永は姪の手で埋葬されたそうだ。

「末永さん。ありがとうございました。私は末永さんが引いてくださったレールの上を、私の望みだけでなく、叔父の望み、ミユキ先生の望み、末永さんの望みを達成できるように走っていきます。」

 薫は、末永の死で心を決めた。

 選挙公示を控えた理事会で、薫は理事長の辞任を申し出た。

「辞める必要はないです。」

 誰もがそう言った。

「戻れる場所を作っておくのは私の性分に合わないです。やるからには選挙も、そして当選したなら議員として専念したい。そう考えました。」

 後任は、皆さんにお任せします。江崎さんも髙梨さんもどちらも理事長にふさわしい方です。」

「財団を離れても私たちは応援します。」

 こうして薫はゆうぐれなあす財団を去った。

 ポスターの肩書は元ゆうぐれなあす財団理事長になった。

 選挙期間中は、党の立てた日程に従って全国を遊説した。そして投票日の午後20時、固唾をのんでテレビの前に座っていた。


思いもよらぬ世界からの反応、そして、末永との別れ。政界進出した薫を待つものは?

選挙結果はいかに?

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