第十三章 援護射撃
次にまた新たな機関が接触してきました。GGS普及の追い風になってくれるのか。
時が過ぎて、2023年、その動かなかった岩が動く気配がしてきた。ある日NASAから一通のメールが理事長のミユキに届いた。
NASAは低重力でのGGSの働きについて共同研究をしたいという申し出であった。
航空券が5枚、NASA,まで来てほしいとのことだった。
「FDAの件がおそらくネックなんでしょうね。我々もこの話は乗ったほうが有利でしょう。」
木下が言った。
「私と理事長と、三村さん、あと江崎主任に来てもらおうか。実務担当者の選定は江崎主任に一任する。理事長いかがですか?」
「問題ないわ。」
木下は、財団に移り副理事長になってから人が変わった。それまでは怖い一匹狼のイメージだったが、今は人をうまく使いこなし、チームで成果を出す良い上司になっていた。ミユキはそういう木下をほほえましく見ていた。
二週間後、一行はNASAに到着した。
NASAは一行を歓迎してくれ、所内の見学に始まり歓迎パーティーまで開催してくれた。
翌日から、GGSについての懇談が実施された。
「我々は、GGSを宇宙飛行士に適用できれば良いと考えています。」
ゴールドNASA長官から直々に説明があった。
その後、ミッション支援局の方を中心に技術的な質問があった。
「生成する糖はカロリーベースでどれくらいか?」
「我々の標準モデルで2000Kcalを5時間で生成します。ほぼ基礎代謝分です。もちろん、面積、光量、時間で変化します。」
「酸素の増量は認められるのか?」
「これも標準モデルでPO2は通常の静脈血に比べて、10から15Torr上昇します。」
半日にわたり、木下と江崎が質問に順次答えていった。
さらに核心を突く質問があった。
「このシステムは光が当たらないと作動しないですが、宇宙服は光を通しません。やはり適用は難しいでしょうか?」
「これは我々も普及のネックになっている点です。裸で生活するわけにもいかないです。」
そう言いながら、江崎は、タブレットですぐに検索して、スクリーンに投影した。
「これは最近中国で販売されたシャツです。背中に太陽光パネル。内側にLEDパネルが入っており、服を着たまま光合成ができる、行ってみればGGS専用のシャツです。この技術で宇宙服は対応できませんか?」
「なるほど、これなら簡単な改造で可能だろう。」
午後からは、事務レベルの交渉となった。
「GGSはオープンライセンスと伺っておりますが。」
「はい、自由に使ってもらえます。共同研究ということであれば、我々も技術者を派遣する用意はあります。」
「NASAとしてはまずISS(国際宇宙ステーション)で実験を重ねたいと考えております。しかし一つネックがありまして。」
「FDAの承認ですか?」
「はい、その通りです。」
「FDAには我々も手を焼いております。家畜用を含めて認可をいただいておりません。そのためアメリカ市場だけでなく世界的な信用もなかなか得られないです。」
「NASAとしてはGGSを使うことで、宇宙食の低減、生命維持装置の小型化で可搬重量の増加になるし、事故が起きた場合の生存限界の延長も望めそうです。しかし、このメリットだけでFDAを動かせるかどうか。」
長官はため息をつきながら言った。
「我々もデータの提供などの必要なことがあれば協力は惜しみません。」
「FDAの承認がないと、表立って共同研究の締結はできません。しばらくお待ちください。」
「それでは、私どもから技術者を一人研修目的で派遣しましょう。」
「そうしていただければありがたいです。」
ミユキは帰国後に、若手技術者の若松を選び情報交流の窓口とした。
NASAは乗り気でもFDAが動かないと解決できません。
NASAや薫やミユキはどうやって解決に向かうのか?




