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座敷牢の花嫁  作者: 豆狸
蜘蛛ルート

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9/25

8・影の顔

 あなたが影に触れようとしているのは、怖いからだった。

 怖いからこそ触れて、なんでもないものだと確認したいのである。

 けれど望みは叶わない。


 あなたの指先から逃れて消えた影は、気がつくとまた生じているのだ。

 影は目に映るたびに大きくなっていく気がする。

 黒いと言っても一色ではない。さまざまな黒が入り混じり、複雑な陰影を醸し出している。


 やがて、影の陰影が顔に見えるようになってきた。

 どこかで見た顔だ。

 箪笥(タンス)と壁の隙間から腕を抜き、あなたはぼんやりと考える。


 どこで見た顔だったろうか……

 ふと顔を上げて座敷牢の窓を見る。

 内向きに開けることはできるが、外には鉄格子があって出ることはできない窓だ。


 その窓は今閉じられている。寒いからだ。

 窓ガラスの向こうの木々が暗闇に閉ざされていく。

 もうすぐ夜になるのだ。


 天井の照明が勝手に灯る。

 座敷牢にはコンセントがなく、暖房器具と言えば湯たんぽくらいだった。

 だけど電気自体は通っているらしく、照明は自動であなたの意志とは無関係に灯る。


 外が暗く中が明るいとき、窓ガラスは鏡と化す。

 ガラスに映った自分の顔を見て、あなたは気づいた。

 黒い影の陰影が作り出しているのはあなた自身の顔だと。


「どういう、こと……?」


 あなたは――


自分は本当に魔物なのかもしれない、と思った。→9へ

自分は魔物なんかじゃない! と思った。→10へ

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