4・犬?
あなたは腕の中の存在を畳に下ろした。
見つめながら後ずさる。
最初は黒い影だと思ったそれが、いつから犬に見えたのだったか。箪笥と壁の隙間を覗き込むとき、あなたは望んでいたのではないだろうか。ここにいるのが犬だと良いのに、と。
「ひゅーひゅー」
その黒い影は、もう犬には見えなかった。
長い鼻先が尖った嘴に見える。だって鳴き声が鳥のものなのだ。
耳の位置が変わった顔は犬よりも人間、人間よりも猿に見える。
その存在自体が黒いわけではなかった。
黒い雲に包まれているのだ。
手足には縞模様がある。
「ひゅー?」
いきなり離れたあなたに、それは怪訝そうに近づいてくる。
どうだったっけ、とあなたは思う。
鵺は人を食うのだったか、病気にするだけだったか――
「あ!」
「ひゅー!」
あなたは、寒さを紛らわせるために羽織っていた毛布の裾を踏んでしまった。
体勢を崩した頭の後ろには鉄格子がある。
激しく頭を打ったあなたは、薄れていく意識の中で目の前の存在に尻尾がないことに気づいた。鵺というのは猿の頭に狸の体、虎の手足に蛇の尻尾、トラツグミのように鳴くといわれている妖怪だ。
……蛇の尻尾がないのなら、あの子は鵺じゃないのかな? 意識が消える寸前に、あなたはそう思った。
【鵺? エンド】




