25・吸血鬼
まるで映画に出てくるバンパイアのような服装だ。
そう思ったとき、あなたの記憶が少しだけ戻る。
ような、ではない。目の前の青年はバンパイア――不老不死の吸血鬼なのだ。
洋装の彼とは違う、純日本風に見える座敷牢での生活をレクチャーされた後で、あなたはひとりになった。
一郎と名乗った吸血鬼が座敷牢のある部屋を出て行ったのである。
彼が吸血鬼だと言うことは思い出したものの、ほかの記憶は戻らない。
今日はなにもされていないが、いつか血を吸われてしまうのだろうか。
花嫁ということは吸い殺される獲物ではなく、彼と同じ不老不死の吸血鬼にされるということなのかもしれない。
不老不死は人類にとって永遠の夢だけど、あなたにとってはどうなのだろう。
座敷牢の中を見回してみる。
畳敷きの部屋だ。
最低限の生活雑貨はある。小さな箪笥にちゃぶ台、それから座布団と座椅子に畳んだ布団。部屋の隅の衝立の向こうにあるのはお手洗いのようだ。
奥の壁にある窓を開けてみた。
この建物は森の中にあるようだ。草木を揺らす風の音がする。
窓の外にも鉄格子があるので、あなたは森を散策できない。
「あ……シジュウカラ」
小鳥の声がして、あなたは呟いた。
人里でも山間でも見られるシジュウカラの生活時間は、夜明けと夕焼けの前後だ。
これから夜になるのだろう。辺りを照らす光が赤らんで見えた。
自分は鳥を好きだったのだろうか。
そんなことを考えてみたが、記憶は戻らない。
代わりに妙な言葉が浮かんでくる。
それは――
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