24・○○○神
「もうっ」
あなたと太郎が結婚して五年の月日が流れた。
実家の家族も実体化した守り神を受け入れたので、犬はあなたと太郎の新居で飼われている。
動物アレルギーは治っているので、なんの問題もない。
あなたと太郎は子どもにも恵まれていた。
それが目の前にいる小太郎である。
マンションの居間で、幼い彼は子ども用のハサミを手に俯いている。
「お母さんが見てないときにハサミ使っちゃ駄目って言ったよね? 危ないでしょ? それに守り神様のドッグフードの袋開けちゃ駄目でしょ。守り神様はあればあるだけ食べちゃうんだから。ほら!」
あなたは小太郎を庇うように立っている守り神を指差した。
「ご飯以外に小太郎君がドッグフード開けてあげたから、こんなに丸くなっちゃって」
「あんまり小太郎を叱らないで欲しいのよ。思わず貢ぎたくなるほど可愛い妾が悪いのよ」
「ん」
小太郎は守り神の言葉に頷く。
「可愛いから、丸くしゅる」
「「え?」」
あなたと守り神の声が揃った。小太郎は繰り返す。
「丸くしゅる」
息子はボールが好きだった。
大好きなボールがおしゃべりしてくれたら、どんなに楽しいことだろう。
そう思ったのかもしれない。
「そっかー。丸くするんだ」
「ん」
「それはそれとして、危ないからハサミはしまおうね。お母さんにちょうだい」
「ん」
「良い子だねー」
「ちょ、ちょっと待つのよ。愛し子ってば妾を丸くするのは止めないのかしら?」
「ハサミは戻してくれたから、良いかな、って。普通の犬だと太り過ぎは良くないけど、実体のない守り神様なら丸くなっても大丈夫でしょ? それによく考えたら、『MA』『MO』『RI』神様が『MA』『RU』『I』神様になってもあんまり変わらないかと思って……」
「KA・NA・RI変わるのよー!」
後ろのソファに座る太郎は、雄叫びを上げる『MA』『RU』『I』神様を見つめながらひとりごちた。
「……丸い丸くない以前に神様が飼われてはるのはええねんやろか?」
その呟きに答えるものは、だれもいない。
【MA・RU・I神エンド】




