14・雛
その黒いモフモフは犬ではなかった。
黒いモフモフではなく黒いふわふわだった。
鳥の雛だったのだ。
「鳥の雛がどうしてこんなところに?……烏、かな?」
断定はできない。あなたは烏派ではなかったようだ。
犬ではないものの、温かいふわふわはあなたの心を慰めてくれた。
あなたは横たわったまま雛を撫で、一郎が夕食を持って来てくれるまで二度寝した。
――それから、あなたと雛の座敷牢生活が始まった。
食事は一郎達が順番に持って来てくれて、あなたが食べる間自分のことを話してくれる。
お風呂はお湯を張った盥で、これはだれが持って来てくれたときも牢内に置いて部屋の外へ出て行ってくれる。
汚れた水は自分でお手洗いに流す。お手洗い自体はボットンで、外に回収口があるようだった。
六人は雛の存在に気づいているけれど、特になにかを言うことはなかった。
かといって雛のために食べ物を持って来てくれたりもしない。
雛は自由なのだ。最初に鉄格子の隙間から去られたときは、捨てられたかと思って悲しくなってしまったあなただが、雛はスナック菓子の袋とともに帰ってきてくれた。それからはなにを持って来てくれるのかと、あなたはお出かけした雛の帰りを楽しみに待っている。
「……そういえば、花嫁って言われたんだよね。婚礼っていつなんだろう」
「ぴぴ?」
怪訝そうに首を傾げる雛を見て気づく。
あなたは絶対に逃げ出してやる、と思っていたのだ。
なにをのん気にスナック菓子を食べながら寝転がっているのだろう。
中身が溜まる前に、お手洗いから逃げ出そうと考えたこともあった。
しかし便器の穴が小さくて、とても入れるものではなかったのだ。
座敷牢に閉じ込めるくらいなのだ。向こうも逃げられないよう対策をしている。
「でも……これがあるからね」
「ぴ!」
あなたの指先に風が生じる。
いつからか、あなたには風を操る能力が芽生えていたのだ。
記憶を失う前から持っていたのか、座敷牢生活で発動したのかはわからない。
うーん、ちょっと待てよ?→15へ
よーし、逃げるぞー!→18へ




