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座敷牢の花嫁  作者: 豆狸
烏ルート

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13・六人

 絶対に逃げ出してやる、と思ったものの、なんの策もなく動くのは勇気ではなく無謀だ。

 あなたはこれまでに得られた情報を整理することにした。

 まず部屋――小さな箪笥(タンス)には着替え、ご飯を食べるためのちゃぶ台に座るための座布団と座椅子、眠るための畳んだ布団。一応お手洗いもある。鉄格子まであるので、あなたは今のところ外には出られない。


 それからあなたを花婿だと言った一郎。

 と、彼の後で紹介された五人の青年のことを思い出す。

 みんな一郎と同じ顔をしていた。


『俺は……二郎』

『私は三郎だよ、よろしくね』

『我は四郎! この世界に嵐を生み出すものよ!』

『拙者は五郎。趣味はひとり飯でござる』

『ミーはジュテーム六郎。愛に生き愛に死す愛の戦士さ♪』


「なんか……濃いな」


 六人の青年が去ったひとりの部屋で、あなたはひとりごちた。

 自分以外だれもいない部屋を寂しいとは思っていない。

 脱出計画を練るにしても、濃い六人との邂逅で疲弊した心身を休めるにしても、孤独が一番の良薬であることは間違いなかった。


「曜日で代わる演出家に演出された役者みたい。一郎が月曜日だとしたら、土曜日の演出家(トン)がってるなー。でも小劇場とかだと、(トン)がってるほうがウケが良かったりするよね」


 記憶もないくせに、そんなわかったようなことを呟きながら、犬の肉球を揉む妄想に浸って心を休める。

 そんな妄想をするところを見ると、あなたは犬派らしい。

 この座敷牢にも犬がいればなあ、と思って頭を左右に振り回す。犬には散歩が必要なのだ。座敷牢に監禁された人間が飼ってはいけない。


 そろそろ脱出に利用できそうなものがないか、置いてある家具を調べよう。

 あなたはそう思った。

 思っただけだった。だってふたつに折った座布団を枕代わりにして寝転んでしまったのだ。


 そもそもあなたには仕事もないし勉強もない。

 本当はあるのかもしれないけれど、記憶がないのだからわからない。

 もちろん監禁されているのは嫌だ。自分の意思を無視されてだれかの思い通りにはなりたくない。でもそれはそれとして、英気を養う時間も必要なのではないだろうか。


 あなたは寝た。


 しばらくして、あなたは肌寒さに目を覚ました。

 夜になったのだろう。

 一郎達がいたころは明るかった窓の向こうが薄暗くなっている。あなたが通り抜けられそうな大きさの窓で、外側には通り抜けられない間隔で鉄格子がある。


「あれ? 肩だけ温かい?」


 目は覚めていたが、体はまだ起こしてない。

 あなたは顔を横に向けて温かい肩を見た。

 黒いモフモフがいる。


「え? 犬? 犬かな、どうしよう。この子だけでも散歩に出してもらえるかな?……ううん? 犬……かなあ?」


犬じゃない!→14へ

やっぱり犬!→16へ

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