05「解き放つ黒き竜」
~謎の集団の隠れ家~
手足を拘束されて、謎の集団に拉致された少年、剣崎勇樹は、どこかもわからない建物の中に捕えられていた。
「…………」
「お頭、このガキが、例の黒竜です」
「(はあ!?なに言ってんだ?俺が黒竜?)」
「なるほどな?」
黒いフードで顔を隠した男が、勇樹をまじまじと見る。
少年は、猿轡をされていて、声を出す事が出来ない。
「ん?(何見てんだ?この男?)」
「いい事を教えてやるよ?ガキ!――お前は、昔、街の近くで大暴れした、黒竜なんだよ?」
「ッ!!(なんだって?、俺が黒竜!!ふざけんなー!!)」
動揺はしながらも睨み付ける。
「ふん、活きのいいガキだな…、例の物は持って来ているな?」
「へい」
男の命令によって、手下の男の一人が、荷物から本を取り出す。
黒いフードの男に手渡し、本を開いて読み始めた。
まるで、何かの呪文を唱えるかのように。
「闇の契約にて、悪魔よ我が願いを叶えたまえ、封印されし物を、この世に解き放て!」
「(聞いた事の無い詠唱だな?――あれ?体が熱い、なんだよこれ!?)」
「我々の計画の礎になってもらうぞ!黒竜よ!」
「んー!?(うわぁぁぁ!?体が熱い!!――助けて…先生…)」
怪しげな儀式の詠唱によって、少年、勇樹のところから現れたのは、
《幾年振りだ?――この私が外に解き放たれるのは?》
黒竜ブラックドラゴン。
かつて、周辺一帯を火の海にして、大地を砕き、この世を闇にして、世界を終焉に導こうとしようとした、魔王の配下の魔王獣。
《貴様たちが、私を呼び覚ましたのか?》
黒竜ブラックドラゴンから、念話で呼び出した者たちに、話し掛ける。
【念話とは、相手の頭の中に直接話し掛ける事が可能な物、いわゆるテレパシーである】
「おお!黒竜が話し掛けたぞ!?」
「いかにも、私がお前をこの世に再び呼び起こしたのだ」
手下の男たちが、初めての念話に驚き、興奮している。
黒いフードを脱いで、顔に傷の入った男が、黒竜に、そう話す。
《そうか、そうか、では、礼をせねばな?》
「ならば、我々の…」
《お前たちの血肉を喰らって、我が力としてやろう》
「うわぁぁぁ!?」
すると、黒竜が、顔に傷の入った男が話そうとする途中で、大きな口を開いて、手下の男たち全員を、吸い込んで食べてしまった。
「な!?」
《勘違いしたようだな、人間よ?――助けてもらった事には感謝するが、貴様たちが我に命令する事は出来ない――我を命令出来るのは、唯一、魔王様だけよ!》
「(こ、これが、黒竜だと!?――聞いていた話と違うでは無いか?――黒竜は、助けた相手の言う事なら何でも聞くんじゃ無かったのか?――あの女!騙しおって!)」
《では、貴様も、我の血肉となるが良い》
「くっ…」
動揺して、混乱いる隙を付いて、黒竜の口の中に吸い込まれてしまった男。
《まだ足りぬ!――もっと人間たちを喰らわねば!――我は満たされぬ!》
~王宮ヴィクトリアキャッスルの門前にて~
「皆?集まっているな?」
「はっ!」
少年、勇樹を救出すべく、ヘンリー国王陛下の呼び掛けによって、騎士団と近衛兵と、緊急招集で集まった冒険者たちが、王宮ヴィクトリアキャッスルの門前に、集結していた。
「大変です!国王陛下!」
「どうした?」
「禁止書庫に封じられていた、封印の魔導書が盗まれていました!」
「なんだと!?――」
「あのいたずら小僧の仕業じゃあ無いのか?」
「何をバカな!――勇樹はそんな事をするような子供ではありません!」
「ランスロット先生!――」
少年、勇樹の仕業だと騒ぎ始めた近衛兵の言葉に、すぐさま、勇樹を擁護するランスロット先生。
しかし、ニール先生が、ランスロット先生の肩を掴んで、無言で首を横に振って窘めた。
「確かに、勇樹君は、いたずらッ子ですが――無事に英雄アカデミーを卒業していますし、仮に、そんな事をしようとしても出来ないでしょう?」
「なぜだ?」
「「私たち教師が付いていますので!!(二人で声を合わせて)」」
ニール先生とランスロット先生が、胸を張って両手を後ろに組み、背筋を伸ばして、ニール先生がニコっと微笑む。
近衛兵の一人が、黙って舌打ちをしながら隊列に戻る。
「今は、勇樹の事が心配じゃ!――、一刻も早く助け出すのじゃ!」
「「「はっ!」」」
ヘンリー国王の命令によって、騎士団と近衛兵と冒険者たちによる、少年、勇樹の大捜索が始まろうとしていた。
「た、大変です!国王陛下!――はあはあ…」
しかしそこへ、伝令兵の一人が、大慌てで、駆け付けて来た。
「こ、黒竜が、街の近くに現れました!!」
「なんだと!?――黒竜が!?」
「国王陛下!」
「うむ、黒竜を迎え撃つ!――皆、準備をせよ!!」
「くっ!」
「ランスロット先生!――どこに行く気だ?」
「離せよ?ニール先生!――俺は、勇樹を助けに行くんだ!」
黒竜の出現によって、少年、勇樹の捜索が打ち切られた事に、焦りを感じたランスロット先生が、黙って、その場から離れようとした。
それをニール先生が、肩を掴んで止めながら制止する。
しかし、ランスロット先生は、ニール先生の制止を振り切ろうとする。
「頭を冷やせ!――ここで冷静さを失うと、元も子もないぞ?」
「くっ…しかし」
「黒竜に向かいながら二人で探す、これならいいだろう?」
「え!?――」
「さっさと行くぞ?ランスロット先生!」
黒竜の元に、ニール先生が、ランスロット先生を引っ張るようにして、走って向かう。
「ニール先生?――どうして?」
「ランスロット先生は、勇樹君の事になると、すぐに頭に血が上るから、俺が付いて行けば冷静に探す事が出来るだろ?」
「ニール先生!――ありがとうございます!」
「さあ、早く迎えに行ってあげましょう!」
「はい!」
二人の教師が、黒竜が、現れた場所に向かう。
はたして、勇樹を無事に救出する事が出来るだろうか?




