10「真の英雄」
~王宮ヴィクトリアキャッスルの屋上~
王宮ヴィクトリアキャッスルの屋上にも、歴代勇者や英雄を祀る為に像が飾られている。
この英雄都市の現、国王でもあり、三代目の勇者でもある、ヘンリー国王が――四代目の勇者の像を見ている。
そこへ、
「ヘンリー国王陛下!――探しましたよ?」
「ランスロットか?」
単独の転移魔法を使って、ヘンリー国王の近くに、英雄アカデミーの教師である、ランスロットが現れて、ヘンリー国王に話し掛けた。
数日前の黒竜出現の一件での傷がまだ癒えておらず、ランスロットの顔や体のあちこちに、包帯が巻かれていた。
「英雄登録書、勇樹のヤツ――ちゃんと提出しましたか?」
「うむ…」
「定食屋で説教してやったんですが、一端の英雄に成って、自分の事を英雄都市のみんなに認めさせてやるんだって――もう浮かれぱなっしで…」
「…………」
ランスロットの話を聞きながらも、そのまま、四代目の勇者の像を見続けている。
「勇樹の夢は、なかなか厳しいかもしれんの?」
「え?」
「お前も知っている通り、勇樹には、黒竜ブラックドラゴンが封印されている事を知っているのは、12年前の、あの化物と戦った大人たちや、その当時、若い者たちだけじゃ!」
~ヘンリー国王の回想と黒竜ブラックドラゴンが当時暴れていた時~
「「「「「ガオォォォン!!」」」」」
~現在~
「以降、ワシは、この事を口外せぬようにと、厳しく取り締まって来た!――よって、今の子供たちはその事をしらぬ!――勇樹にとって、それがせめてもの救いなんじゃ!――四代目の勇者は、英雄都市の皆には、勇樹を真の意味での英雄として見て欲しかった!――そう願って封印して、その命を散らした!」
「真の英雄?」
~ヘンリー国王の回想と生まれたばかりの赤ちゃんの勇樹~
「「おぎゃぁ、おぎゃぁ、おぎゃぁ」」
「四代目の勇者は、生まれたばかりのまだ赤ん坊の勇樹に、封印魔法を使って、黒竜ブラックドラゴンを封印したのじゃ――そう、勇樹は、この英雄都市の皆の為に、あの化物を封じ込める役をしてくれたのじゃよ?」
~現在~
「しかし、この英雄都市の大人たちは、勇樹を真の英雄として、では見ない!――中には、勇樹の事を黒竜の化物と呼ぶ者まで現れた!――今や、大人たちの勇樹への態度が――知らず知らず、その子供たちにまで影響している程なんじゃ――ランスロットよ?――知っているか?」
「なんでしょう?」
「人間は他人を嫌い、その存在を認めない時、その存在を見る目は――恐ろしい程に冷たく冷酷な物になるのじゃよ?――たとえ、その存在が善で在ろうと無かろうとな?」
「…………!」
~英雄都市ヴィクトリアマジェスティの公園の入口付近にて~
公園の入口付近に、単独の転移魔法を使って、メガネをかけた男が、一人で現れた。
その男の名前は、ガレス・ボーマン近衛兵。
公園に入るや否や、公園内のベンチに座る、二人の男の子に向かって早歩きで近付いて行く。
「見付けましたよ?」
「ん?(二人揃って)」
ガレスが、二人の男の子に近付いて、話し掛けた。
少年、勇樹と、ヘンリー国王陛下の孫のアーサーが、声を掛けられて振り向くと、メガネをかける、ガレスが、立っていた。
「ふん、(黒竜の化物め!)」
「ッ!?――(くっ、またあの冷たい目だ!――どいつもコイツも!)」
ガレスは、勇樹を見るなり、偉そうな態度から――冷たく冷酷な目で、勇樹を見ている。
嫌な視線に、顔をひきつりながらも、ガレスを見る。
そのまま、勇樹を無視して――ヘンリー国王陛下の孫のアーサーに近付く。
「さあ、殿下!――帰りましょう!」
「嫌だ!――俺はじいさん倒して、勇者の名前もらうんだ!――今すぐ、邪魔しに来んな!」
ガレスが、アーサーを連れて帰ろうとしている。
アーサーは、それに対し拒否して、自分の夢や目標を言って、ガレスに帰るように言い返す。
「勇者様とは、仁義、礼智、忠信、孝悌の理を知り、千以上の魔法を使いこなせて初めて…」
「うーん、幻影魔法!」
「ん?」
ガレスが、勇者について持論を話ながら、近付いて来た。
それに対し、アーサーは――覚えて間もない、幻影魔法のセクシーキッスを使用した。
すると、妖艶で美しい女性が、ガレスの目の前に現れた。
「んが~!?」
「あれ?――効かねぇ!?」
「なんという、お下品な魔法をー!!――私は紳士です!――そのような超低俗な魔法には、決してかかりませんぞ?」
「うーん…」
「ぐぅぅぅ、で、殿下!――そんなふざけたヤツと一緒に居ると、バカになる一方ですよ?」
ガレスには、まったく効いていない訳ではなく、多少、同様しながらも――アーサーの手を引っ張って、連れて帰ろうとする。
ガレスの顔と頬は、真っ赤に染まっていた。
「くぅぅぅ、私の言う通りにしていれば、勇者の名前をもらう、一番の近道なんですよ?――ささ、帰りましょう!」
「やーだー!!」
ガレスは、なんとかしてアーサーを、力づくでも連れて帰ろうと、手を引く。
アーサーは、それを拒否して、必死に帰るまいと抵抗している。
「勇樹必殺!――超、幻影魔法!」
「ん?」
「ふん、くだらない!――またあの下品な魔法ですか?――そう何度もかかると思いますか?」
そう言って、ガレスは、少年、勇樹の前へ出た。
堂々と、勇樹が発動しようとする魔法の前へと、進む。
「――師匠!」
「来い!」
ガレスが身構えて、少年、勇樹の攻撃を誘う。
すると、勇樹とガレスの目の前に、妖艶で美しい女性が、大量に現れた。
その、妖艶で美しい女性たちに、ガレスが囲まれて、誘惑された。
「へ!?」
「「「ガレス様、ガレス様、ガレス様~!」」」
「ぐわぁぁぁぁぁー!?」
ガレスは、鼻血を噴出しながら、ド派手に転けた。
「名付けて、ハーレムヘブン!」
~王宮ヴィクトリアキャッスルの王の間~
「(幻影魔法に、更に人数と誘惑をパワーアップさせて来たか?――また、くだらん魔法を作りおって!――ワシなら、秒でダウンするぞ?――多分…)」
水晶玉を介して、勇樹とアーサーとガレスのやり取りを、見守るヘンリー国王。
勇樹の新たな、幻影魔法を見て、呆れている。
~夕方の公園内~
「くそー!――また、あのメガネ野郎を倒せなかったぜ!――俺は早くみんなに認められる名前が欲しいのに、なぜなんだ!?」
「そう簡単に行くか!」
「え?」
「英雄都市の誰もが認める最高の英雄!――勇者っていう名前を奪うっていうんだからさ!」
~勇樹の回想~
親の居る子供を、うつむきながら見詰める、幼い子供の頃の勇樹。
それを、嫌悪の目で見る大人たち。
「いろいろ嫌な事だらけで、いろいろ、迷う事ばかりだろうし――俺だって、俺の事認めてくれる人が、やっと一人出来たけど」
涙を浮かべた、勇樹を、優しく微笑みかけるランスロット先生。
「それだけでも、すげぇ大変だったんだぞ?」
~現在~
「やっぱり覚悟しとかないとな!」
「覚悟……」
勇樹が、アーサーに背を向ける。
「みんながみんな、認めてくれる、勇者っていうすげぇ名前を語るのによ?」
「…………」
公園内の木々や葉っぱや枝を、強い風が吹く。
勇樹が、アーサーに後ろ向きのまま、首だけをこちらに、振り向く。
「絶対に、近道なんて――無いって事をさ!」
「…………」
~アーサーの回想~
お昼過ぎの、アーサーと勇樹のやり取りを思い出していた。
「勇者の名前が欲しければな?――この俺を倒してからにしろ!!」
決め顔で、そう言い放つ、少年、勇樹。
~現在~
「へん、偉そうに説教なんかしちゃってさ!――俺、もう弟子なんて――辞めた!」
「…………」
アーサーも、勇樹に背を向けたまま、そう言い放つ。
そのまま、後ろ向きのまま、首だけを勇樹の方に向けて、
「これからは、宿敵だ!――にひ!」
と、言いながらも――ニコっと微笑む。
「フッ!――お前には悪いけど、俺は明日から――一足先に英雄だ!――でも、まあ――いつか勇者の名を賭けて、お前とは勝負してやるよ!――それまで、楽しみにしとけよな?――アーサー!」
「…………」
そう言って、アーサーに背を向けて歩いて行く。
勇樹は、振り返らずに、片手を上げて、別れを告げた。
アーサーは、何も言わずに、右腕を胸に当てた。
【右腕を胸に当てるのは、英雄都市ヴィクトリアマジェスティでは、敬礼と同じ意味】
二人の門出を押すかのように、優しい夕日と力強い風は、吹いていた。
そう、本当の英雄と勇者への道は、まだまだこれからなのだから。
視聴専用水晶玉。
ヘンリー国王陛下が、よく使う魔道具で、英雄都市ヴィクトリアマジェスティの全体を監視や、見守る事を目的とした物。
魔力が扱える者なら、誰でも使用可能。
(いわゆる、監視カメラ的な物です)




