三日も持たない
そんな会話をしながらわたくし達は帝城へと入って行き、目的である帝国宮廷魔術師長ローレン・ハイツがいる仕事部屋までお付きの護衛に場所を聞きながら向かうとノックをして入る。
そして目に入って来たのはローレンと、もう一人の老人がお酒を飲みながらボードゲームをしている姿であった。
「サボり中でしたか。こちとら休まず朝っぱらから六時間も馬車を飛ばして来たというのに良いご身分ですこと」
自分で言いながらアポ無しで勝手に訪れておいてこの言い草もどうかと思うし、休まず来た事など相手側からすれば関係無い話であるのだが、ただでさえ空腹なのも相まって腹が立つ物は腹が立つ。
「ち、違うぞい聖女の娘よっ!これは帝国軍最高司令官殿であるマルコフ・ヘッジがどうしても儂おボードゲームをしたいと煩くて仕方なく───」
「経緯はどうあれお酒を飲みながらボードゲームしていたという時点で同罪ですわよね?」
「ぐぬっ!し、しかしお主も儂の返事を聞かず勝手に入って来たでは無いかっ!流石マナーとしてはどうかと思うのじゃがっ!?」
「論点をずらさない。それに、わたくしが行ったノックして返事がくる前に勝手に入るという行為など、仕事をサボっていたと言う事に比べれば瑣末な物ですわ。さて、早速皇帝陛下へ告げ口をしに行きましょうか」
「そ、それだけは言わないでくれいっ!つい一週間前もそこに居る部下兼秘書に告げ口されてこっ酷く怒られてもうしないと誓ったばかりなんじゃっ!今度こそ首が物理的に飛びかねんっ!」
「何をやっているのですか貴方は。皇帝陛下に喧嘩売っているのか度胸があるのか命知らずなのかただのバカななのか。まぁ、ただのバカなのでしょうけど。さて、どうしましょうか?」
「頼むっ!この通りじゃっ!言わないでくれいっ!何でもしますからっ!」
そう言うと帝国宮廷魔術師長は自分の孫程の娘に綺麗な、またはやり慣れた様なスムーズな動きで土下座をし、その姿を秘書がマジックアイテムで何回もパシャパシャと保存して行く光景がわたくしの目に映し出される。
「………貴方には帝国宮廷魔術師長というプライドは無いのですか?」
「もっと言ってやって下さいっ!いつもいつも仕事をサボって、ケツを叩かれないと働かないんですからっ!あと、マジックアイテムで先程の光景を保存したので次仕事をサボったりしたら部下に見せますからねっ!」
なんというか、この秘書の苦労が無駄に伝わって来る。
「聖女の娘よ、大切な事を教えようぞ。プライドで腹は膨れぬ」
「皇帝陛下ってどこにおりますの?」
「ちょっと部下に見せに行きますね」
無駄に胸を張って威張りながらそんな事を言う老人にはお仕置きが必要であろうと、秘書も思ったのであろう。
一度この老人はこっ酷くやられた方が良いのかも知れない。
「ガハハハハッ!!ローレンは人気者じゃなっ!!」
「元はと言えばお主がワインとボードゲームを持ってきたのが原因では無いかっ!それにお主も同罪なのだぞっ!皇帝陛下にチクられてもよいのかっ!?」
「我は真面目であるからやるべき事は全てやっておるわ」
そしてローレンは再度わたくしに向かって「何でもしますから」と言うので、そこまで言われてはわたくしも鬼では御座いませんわ。
優しいわたくしは皇帝陛下への告げ口は『秘書さんの言う事は聞く、聞かず仕事をサボっていた事が分かると即告げ口をする』という条件で辞めてあげる。
因みにこの条件えお聞いてここに居る皆は三日も持たないであろうと予測していた。
そんなこんなでようやっとわたくしは本題へと入る。




