シャルロットは気付けない
串刺しにされている人達の身に付けている物を見てみると、その殆どが王国騎士団を示す鷹をモチーフにしているマークが刻印された防具を身につけており、その事からもこれら死体が元王国騎士団のものであるというのが窺えてくる。
恐らく彼等彼女らは王国民を逃す為に戦っていたのかも知れない。
しかしながら王都を様々な魔獣が闊歩している光景を見るに、奪還までは出来なかったのであろう。
それはどれ程の悔しさであっただろうか。
その光景を思い浮かべて、わたくしは知らず知らずに握り拳を力強く握っていた。
そして、襲ってくる魔獣達を二人で屠りながら何とか王城まで辿り着く。
その王城の門前にはまるでわたくし達が来るのを待っているかの様に一人の男性魔族が四本もある腕を組んで仁王立ちしているのが見えた。
「ふむぅ、良くぞこの魔獣達からの脅威を掻い潜りここまで辿り着いたと褒めてやろう。そして残念だがここで死ぬ事になる」
そう言うと魔族は腰に刺している四振りの剣を抜刀すると、四本全て手に持ち独特な構えでわたくし達の方を向く。
「申し遅れたのだが、我は───」
「悪いが殺し合いを挑んで来る相手に対して一々名乗りを待つ程俺は優しくないんだよ」
「───へ?あがぁぁあっ!?我の腕がぁああっ!?」
そして気が付いた瞬間にはマオも抜刀しており、件の魔族の左側にある腕二本を切り落としていた。
人間辞めたなー、と最近思い始めた今のわたくしでも見る事が出来ない速さなのだ。
件の魔族の反応からしてもマオの斬撃は全く見えなかった事が窺えて来る。
それは、言い換えれば正々堂々と戦おうが戦わまいがこの魔族の男性は瞬きする間に殺されてしまう程の力量の差が二人にはあると言う事の裏返しでもある。
そしてマオは腕を切り落とした件の魔族へヒールをかけて傷口を癒しているのが見える。
やはり同族殺しはマオも思う所があるのかも知れないとそう思ってしまう。
なんだかんだで心の奥底はとても優しい人物、それがマオなのだと再確認すると共に少しだけ惚れ直してしまう。
そんな事を思っているのだが、ただ単に言葉を喋る人形の相手を殺す事を現代日本の価値観を持っているマオは躊躇してしまっただけであるのだが、そんな事など恋の色眼鏡をかけているシャルロットからすれば最早どうでも良い事なのだろう。
「………何故生かす?」
そしてそんなシャルロットとは対照的に『殺すのが寸前で怖くなってひよりました』と言えず固まってしまっている事にもシャルロットは気付けない。




