私は初めて救われた気がした
「殺されたいのか?そうであれば問答無用で殺してやるが、お前には生きなければならない理由があるのではないかと思ったから殺さなかっただけだ。そして殺生与奪権は勝者にある。お前を生かすも殺すも俺次第。少なくとも俺はそう思っているのだが、違うか?」
そしてマオはわたくし達を襲おうとして来た魔族に問いかけるのだが、何故だかわたくしはその言葉の裏に『本当は殺さなくても良いのならば殺したく無い」とマオが言っている様に思えるというなんだか不思議な感覚である。
「ハハハハハッお見事っ!これは一本取られたわっ!!まさか本気で殺そうとした奴に実力の差をたったの一振りで見せつけられるとも、その後に生きろと諭されるとも思いもよらなかったぞっ!!」
そして件の魔族は少しだけ沈黙した後豪快に笑い始めるではないか。
「そうだ、そうだな。俺が死ねば妻や子供が悲しむ。その悲しむ姿を俺は見たくないと思ってしまった時点でもう俺は死ねないではないか」
そう言うと魔族の男性は一転、真剣な表情をしてマオに話しかけて来るのだが、家族がいるから死ねないと言った彼の表情はまるで死を覚悟している様な、そんな表情をしていた。
「俺が言うのもおかしな話なのだが、魔王様を止めてくれ。アイツが現れてから何人もの同僚がホンの些細なミスをするだけで殺されたりしているのはもう見てられないんだな。頼む」
そして魔族の男性は語り出す。
今の魔王が現れてからの訳半世紀にも渡る独裁を。
そして力こそ全てという世界の残酷さを。
「それを俺に言ってお前は大丈夫なのか?」
「どうせお前に負けた時点でどの道殺されるだけだ。この俺を隙をついたとはいえいとも簡単に腕を同時に片側二本も斬り落として無力化する事が出来るお前さんなら、もしかすればと情け無い話ではあるが思っている自分がいるんだよ」
「成る程な………まぁ、大船に乗ったつもりでいろ」
そしてマオは彼の願いを受け入れるのであった。
◆
「フン、人間の王ってのも大した事ねぇーな。まるで弱い。弱過ぎる。何故国境沿いの魔帝国はこんなにも弱い王が統べる国にも関わらず攻めないのかただただ疑問でしかないな」
私が召喚した魔王で王国を乗っ取ってから早三日がだった。
私達庶民を見下していたその最たる者の妻となれればと思っていたのだが、これでは結局の所は国王の妻以上の地位へ上がる事ができない。
どんなに足掻こうが国王の妻は国王の妻であり、この国の一番上に立つ事など出来ないという不満が、どれ程満たされようとも無くなる事は無かった。
そしてだからこそ王族殺しを見た瞬間、私は初めて救われた気がしたのだ。




