マオだから
いくらマオ規格外の強さであったとしても相手がマオと同じ魔王であるとするにならば念には念をと用心するに越した事はない。
「では、ローレンさん。ありがとうございますわ」
本当はローレンさんは心の中では自分一人で行きたかったのでは無いか?
老い先短い自分が若者を危ない目に合わせて生きながらえるというのは、宮廷魔術師という立場からも正義感が強い筈である。
恐らくわたくしが思っている以上に苦しい思いをしている筈だ。
そんな事を思いながらわたくしは賢者の石のレプリカを手首に巻いていく。
「必ず、生きて帰って来るのじゃぞ」
「ええ、必ず帰って来ますわ」
そしてわたくしはローレンさんにそう力強く答えるのだが、何故かマオは返事をしなかった事がまるで喉に魚の小骨が刺さった様な、そんな違和感を感じてしまうのであった
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マオの背中に乗り一気に王都付近まで来たわたくし達は、王都城壁のそばで降り立つと正門をマオの魔術で吹き飛ばした後正々堂々と正面から王都の中へと入って行く。
「まだマオでは無い新しい魔王が現れてから一ヶ月も経っていないにも関わらず、まるで王国では無い違う国に来た様な程に変わってしまっていますわね」
そう言いなが見渡す風景はわたくしが知っている賑やかな王都では無く、生活音が全く聞こえて来ない上に当たり前なのだが人の姿も全く見られない。
まるで王都に住んでいる人々全てが神隠しにあったような、そんな気持ち悪さを感じてしまう。
「まぁ、みんな死にたく無いだろうしな」
そしてマオはわたくしへ言葉を返しながら襲いかかって来る魔獣達を次々と、手に持つ魔剣の一振りで一刀両断していく。
この、まるで羽虫の如く斬り伏せていく魔獣達は、それこそ一ヶ月前のわたくしであればであった瞬間死んでしまうと絶望していたであろう強さなのだが、それ程の危険度である様々な魔獣達をわたくしはマオよりかは遅いものの、聖剣でもって斬っていく。
何故魔族であり魔王でもあるマオが聖剣を持っていたのか、もしわたくしが勇者であったのならば全力で神を呪ってしまうレベルなのだが、そんな事は『マオだから聖剣くらい持っているだろう』と最早疑問にすら思わなくなって来たわたくしが怖い。
そうこうしながら王城へと向かい歩いてるのだが、王城へ近付けば近づく程周辺の空気は淀み始め、雲も厚くなり太陽の光を遮り始める。
「酷い………」
そして変化し始めたのはそれだけでは無く、串刺しにされた死体が野晒しにされており、それを肉食の野鳥が啄んでいる光景がチラホラと見え始めた。




