レプリカ
そう不真面目そうに言うローレンなのだが、少しだけ沈黙した後わたくし達二人を同時にその細くしわくちゃな腕と手で抱え込み力強く抱きしめて来る。
「無駄に歳ばかり積み重ねただけで結局はいざその時が来てみれば若者に全てを託さなければならないこの不甲斐ない老人を許しておくれ」
「いえ、そんな事は───」
「儂等が足手纏いになってしまうからじゃろ?そしてだからこそ無駄死させたく無いとも思っておるのじゃろ?儂からはこれしか出来る事がない自分が歯痒いのじゃが、一応役立つはずじゃ。持って行っておくれ」
そしてローレンはわたくしの言葉を遮り、今にも泣き出しそうなのを我慢しているかの様な表情でわたくしとマオにとある物を渡して来る。
手にとって見てみると赤く澄んだガラス玉の様な物で出来た指輪に紐を通したネックレスの様な物であった。
「ほう………これはなかなか。これほどの物を、良いのか?」
「良いも何も今使わずしていつ使うというのじゃ?」
「それもそうだな。有り難く頂戴しよう。ありがとう」
「へ?マオはコレが何か分かりますの?」
そしてマオはローレンから頂いたこの宝石にもガラスにも見える物が何か分かっている様で驚いた表情をしていた。
あのマオが驚く様な物など想像すら出来ない為わたくしはマオへコレが何なのか聞いてみる。
「分かるさ。コレは賢者の石───」
「け、けけけけ、賢者の石ですのっ!?あの賢者の石ですのっ!?」
「の、レプリカだな。悪く言えば出来損ない」
「な、何だ。最早この世界では失われたと技術で作られるとされるあの賢者の石と思ったらその出来損ないですのね」
「しかし効果は確かで一回だけであれば本物の賢者の石と同等の効果を発揮する事ができる。そうだろ?爺さん」
「うむ、しかし良く一目でそこまで分かったの」
開いた口が塞がらないとはこの事か。
わたくしは今開いた口を閉める事が出来ない上に声が出ないほど驚いていた。
レプリカと言えども、一回だけと言えども賢者の石と同等の能力が使える物など正に鬼に金棒、最終兵器である。
マオの存在にマオにより一気のレベルを上げ聖女のジョブにまで成れたわたくしに加えてこの賢者の石のレプリカ。
どう転んでも負けようが無いでは無いか。
「油断していたり相手を舐めてかかると足元救われるぞ。相手は俺と同じ魔王なのを忘れるな」
そうであった。
マオだけが規格外と思っていたのだが、向こうもその規格外である魔王という存在なのだ。




