第二十九話 絶望の底
※※※※ ご注意 ※※※※
R15G程度の表現があります。
苦手な方、お食事中の方は特にご注意ください。
村全体が重い空気に包まれていた。
普段は厳しくも朗らかな母様も顔を俯かせ、時折ハンカチで目元を拭っている。
村の近くに地竜の番が現れたと報せを聞いたのが三日前。
彼らはとても貪欲で、襲われれば私たちの村などあっという間に食い荒らされて滅んでしまうだろう。
隠れるようにひっそりと暮らしている私たちには助けを求める先がない。いや、正しくは無い訳ではないけれどとても遠くて助力を請うのも容易ではない。
だから自分たちの身は自分たちで守るしかない。
普段は農作業や狩猟に使っている道具を持ち、備えられる限りの守りを身に纏った男たちが村を発ったのが二日前。
悲愴な面持ちで門を潜っていく男たちを見送り不安な気持ちを抑えられずにいると、父様は「必ず帰る」と優しく笑いかけて頭を撫でてくれた。
そして傷付き、息も絶え絶えになった男たちが帰ってきたのがついさっき。
彼らの中に父様の姿はなかった。
父様は何処か、と男たちに尋ねても誰も答えてくれなかった。
それでも尋ね回り、探し続けていると母様に家へ連れ戻されてしまった。
うそつき、父様なんてだいっきらい。必ず帰るって約束したのに――――。
◇
悲しい、胸が苦しくなる夢から逃げるように意識が現実へ引き戻される。
現実はもっと残酷で苦しいのだから、逃げる場所としては間違っているのに。
薄らぼんやりと開いている目に映るのは、天井の何処からか漏れている仄かな光で浮かび上がるゴツゴツした岩とその表面を覆う苔。それらはじっとり湿り気を帯びてじめじめしており、漂う空気にも淀んだ湿気とかび臭ささが混ざる。……本当はもっと酷い悪臭が漂っていて、かび臭さなど随分とマシなものだ。
耳を澄ませると真っ暗な空間には複数の甲高い奇声が反響して聞こえてくる。
首を僅かに動かすと、岩と砂の床に特徴的な形状の物体が散乱している。しっかり目を開けば、その表面にこびり付いた赤黒い物体やそれに集る細かな蟲の姿も見えるだろう。
ここに引き摺り込まれてどれくらいの時間が過ぎたのか分からない。気が付いたらここに居た。
それまで茫洋としていた意識がはっきりして我に返ったとき、自分を取り巻く状況を認識することを理性も本能も拒否反応を示した。
「クカッ! カ……ァッ!」
岩に凭れ掛かって寝そべった身体に覆い被さって腰を振っていたヒトガタが、顔を天井に向けて感極まったような声を上げる。
その姿は醜悪の一言に尽きた。骨張った顔は皺だらけで目はぎょろりと大きく、鼻は潰れたように平らで唇のない口は左右に大きく裂けて黄ばんだ牙が並んでいる。
ここは亜人、デミオルゴスの巣だ。
彼らは山中の洞窟に巣を作り、異種族のメスを捕らえて繁殖する。その為に生きていると言っても過言ではないくらいに生殖本能が強く、この巣にいる間は食事と寝る以外は生殖行為しかしていない。
そしてここに引き摺り込まれた俺も例外ではなく、今まさに犯されている真っ最中だ。
意識を取り戻した時は絶望が許容量を振り切り半狂乱に陥りかけたが、一足先に気が触れて暴れた他の女性が群がる赤禿亜人に抑えられ、打殺され、食い千切られる様は心を折るには十分過ぎる光景だった……その彼女の成れの果ては言わずもがな。アレを目の当たりにして尚も裸一貫で立ち向かえる奴が居たら、そいつは紛れもなく勇者だ。荒廃した世界だって救えるかもしれない。
以来、心を閉じて辛い現実から夢へ逃避し続けている。
見る夢は俺の知らない、何処かの山麓にひっそり息づいた小さな村での出来事ばかり。内容はそこに住む少女の日常を眺めるだけの退屈なものだが、どうしてそんな夢を見るのか分からない。
全く心当たりもなく、面白くもなんともない夢だが、現実から目を背けられるなら十分だった。
だけどその間に一度亜人の子を産み落とした身体は酷く痩せ細ってしまい、恐らくはそう長くもたないだろう。
あの時、彼女と一緒に暴れて殺され、彼らの胃に納まっていたのと今とではどう違うのか……。亜人にとってみれば、子を産ませるためのメスといえど死ねばただの肉。肉は食欲を満たすだけのもの。結局苦しむ時間が長いか短いかというだけの事だった。今さら自決する気力も湧いてこない。
身体にしがみ付いていた赤禿亜人は出すものを出しきって一頻り満足したらしく、奇怪な声を上げて洞窟の奥へと消えていった。
放置された俺は何をするわけでもなく、ただぼうっと天井を眺めるだけ。冷たい岩と冬の空気は体温を奪っていくが、防ぐ手立てなど何処にもないのでどうしようもない。
もう帰れない。
胸の奥底、それも奥深くに押し込めて封じたものが微かに痛みを発したが、それから目を背けて真っ暗な岩の天井をぼんやりと見上げ続ける。
もう一度、一目だけでも会いたい。触れ合いたい。
永劫叶わぬだろうささやかな望みも痛みを強くするだけなのに、どうして目を覚ましてしまったのだろうと深く悔やんだ。
そうやってぼんやりしていると、天井からパラパラと砂粒が降ってきたのに気付く。穢れきった身体がどうなろうと今更気にもしないが、何処から落ちてきたのだろうと目で探す。今を忘れられるなら、どんなつまらない事でも構わない。
降ってくる砂は一向に止まず、それどころか量が増えてくる。
この上をあの恐竜が歩いているのだろうか。
などと考えていると、狭いところを何かが滑り落ちてくるような音が聞こえた。そして――。
「ぬぉあっ!? ……ってぇ~~……」
大量の土砂と共に土塗れの男が一人、岩の隙間から滑り落ちてきた。
男は転落した際に打ち付けた尻を擦りながら、顰めた顔で辺りを見回し始める。
使い込まれた丈夫そうなジャケットの上に熊と思しき黒い毛皮の外套を羽織るように纏い、厚手の丈夫そうなズボンと使い込まれた登山靴を履いた姿は見たことはないがマタギ? と思った。いや、あの夢の中では似たような姿の男たちはたくさんいたな。最後に見たあの少女の父親も。
そんなことをぼんやり考えていると男はこちらに気付いたようで、手に持った長い物を構えて周囲を油断なく警戒しながら近付いてくる。
「おい、喋れるか?」
男は驚いているような、焦っているような、何とも微妙な表情で声を掛けてきた。
色はハッキリ分からないがヘッドギアからはみ出た白っぽい髪は土や汗に塗れてボサボサで、口許や顎には無精髭が伸びている。それと猛禽類を思わせる鋭い目が相俟って精悍な顔付きに思える。
そして笹のように長い耳が、彼の種族を如実に語っていた。
問い掛けに頷いて答えると彼は「そうか」と少しホッとしたように表情を和らげ、再び周囲に注意を向ける。
「俺はヴィルフリートだ。君の名前は?」
「………………」
問われてどう答えようか迷い、いざ声を出そうとしたら喉の粘膜が張り付いて巧く声が出せない。振り返ってみれば、もうどれくらい言葉を喋っていないだろう。互いに励まし、調達した食料や水を融通し合っていた元冒険者の女性がこの世から去ってしまって以来か。
声が出せずにひゅー、ひゅー、と掠れたような息を吐き出していると、こちらの様子に気付いたらしい彼は腰のベルトに提げた水筒を外して口に含ませてくれた。
冬の外気に冷やされた冷たい水が喉を通り、水分を失い掛けていた粘膜を潤してくれる。久方ぶりに味わう濁りの少ない水に反応したように身体がじんわりと熱を発し始めたのを自覚し、それがまるで燃え尽きる前の蝋燭のようだと溜息が溢れた。
張り付きあっていた喉粘膜は無事に剥がれたので、もう一度声を出してみよう。
「………………れ……ん」
掠れた上に虫の羽音のような小さな声しか出せなかった。
しかし口元まで耳を近づけていた彼の耳はそれを聞き取ってくれたようで、「レンか。よろしくな」と真っ直ぐに目を会わせてニッと笑った。
そして羽織っている毛皮の外套を脱ぐと、俺に着せようと広げてくる。
温かそう……でもダメだ。首をゆるゆると横に振って拒否の意思を示すと、ヴィルフリートは怪訝そうな声を漏らす。
「よごれ……すぎて、る。…………んっ……もったい……ない」
何もかもが衰弱していて、喋るだけでも一苦労だ。どうしてもたどたどしくなってしまう。
しかしそれを聞いた彼は不満げに眉根に皺を刻むと、強引に俺の身体を起こして外套を羽織らせてしまった。
「そんなこと気にするな! ていうか、こんなに寒いのに素っ裸でいさせられるかよ」
とは言うがこの洞窟の空気、実はそれほど寒くはない。
彼の言葉通り今の俺は纏うものなど一切ない素っ裸だが、肌寒さを多少感じる程度の温度が保たれている。理由は分からないが、赤禿亜人どもがここを巣を作ったのもそれがあるからだろう。でなければとっくの昔に凍えて死んでいる筈だ。
それでも冷えていることに代わりなく、身体を包む温もりが今まで休止させていたものに火を入れるように再始動させていく。
とくん、とくん、と胸の鼓動が少しだけ力を増して身体を巡る血の流れがほんの少し速まる。
手や足の末端が徐々に熱を帯び、明かりが灯るように痛痒い感覚がじんわりと生まれる。
ピントが合っていなかった眼の焦点が目の前の男に調節され、意思の強そうな青緑色の瞳と視線が交差する。
「じゃあ、こっから出ようぜ」
何が『じゃあ』なのかは分からないが、俺はまた首を横に振って答える。
もう長いことまともに歩いていないのだ。食事や排泄のために多少動くことはあるが、彼女が息を引き取ってからは何もかもが億劫で殆どを寝て過ごしていたので、今では筋肉が衰えて歩くどころか立つのも儘ならない。
「あしで、まとい…………ひとりで……にげて」
「そうはいかねぇよ。竜人郷には散々から世話になっているんだ、ここで見捨てたら俺が自分を許せない」
「なに……それ。じこ、まんぞ、く」
「あー、そーだよ。その通り! だから君も諦めて助けられろ」
悪びれることなくニカッと笑った彼の顔に、顔の筋肉が僅かに緩んだ気がした。
でも竜人郷って何の事だろう。
「立てるか? 立てないなら担いでいくぞ」
最早、彼の中では俺はここから救い出される事になっているらしい。
でもこのような足手まといを連れて突破出来るほど、ここは甘い場所じゃない。
赤禿亜人は単体では話にならないくらい貧弱だけど、彼らの最大の武器は数の暴力だ。更にこの巣には隊商や傭兵隊から逸れてしまった女性が数多く引き摺り込まれている。旺盛な繁殖力と妊娠期間の短さ、成長の早さによりその数は三桁に迫ろうかという大所帯だ。
山に獣の影が少なかったのは、冬という季節だけが理由ではなかったのだ。
彼一人でもここを脱出するのは困難だろう。余命幾ばくもない俺を連れ出すメリットなど何もない。
「どうせ、ながく……ない。かまわない、で……」
「黙んな。長くないって思うなら体力を温存してろ……よっと。軽いな……」
説得空しく、俺の身体は軽々とヴィルフリートの肩に担ぎ上げられてしまった。
こうなってしまえばもう抵抗など出来ない。されるがままにぶら下がり、つい先程まで自分が凭れ掛かっていた岩が遠くなっていくのをただぼんやりと眺めていた。
ヴィルフリートの身長はかなり高い。対して洞窟の天井はそれほど高くはないので、彼は身を屈め気味にして薄暗い洞窟を慎重に進んでいく。
「そういえば、出口はどっちか分かるか?」
今更かよ、と思ったが彼はどうやら俺が居た空間の周囲を確かめたかっただけのようだ。
自由に動き回れるわけではないので出口を見た事は無いが、赤禿亜人が何処の方向からやってくるかくらいは分かる。俺が寝ていた岩は広めの通路の中ほどにあり、狩りから戻った奴らは左の方からやってくる。
右の方に行けば寒さが和らぐので何かがあるのだろうが、本当に真っ暗になって何も見えなくなるので殆ど行った事がない。夜目がかなり利くらしい亜人たちは更に奥にもねぐらを広げており、もしかしたら別の何処かへ通じているのかもしれない。
「たぶん、こっち」
肉がゴッソリ削げ落ちた細すぎる腕を持ち上げて真っ暗な空洞を指差すと、ヴィルフリートは頷き返してそちらへと慎重な足運びで進んでいく。
それにしても顔のすぐ間近に俺を担ぎ上げて大丈夫なのだろうか。
長い事洗っていないだけでなく亜人どもの汚らわしい垢や体液に塗れたこの身体はとんでもない悪臭を放っている。もう鼻が馬鹿になってしまったので自分では分からないが、もうこの毛皮の外套は使い物にならないだろう。
担いだ荷物がそんな事を考えてやきもきしているとは多分夢にも思っていないだろう彼は、岩壁の所々で仄かに光る魔晶石の明かりを頼りに歩みを進めている。
天然の魔晶石は自然の中に存在するマナが石英などの鉱物を核にして蓄積、結晶化して生成される。生物の体内で生成される場合もある。
自然の中で結晶化した魔晶石が放つ光は様々で、視界の中には緑や青、紫といった色が薄らぼんやりと灯っている。珍しいものではないが様々な用途があるため需要はそれなりにあり、子供の小遣い稼ぎにはもってこいらしい。中には黒い光を放つ摩訶不思議なものもあり、これは純度と大きさによっては高額の値をつけるものもあるという。
その黒い光を放つ結晶をどうやってか見分けながら、ヴィルフリートは歩きながら拾っている。そうしているうちに岩の通路は開けた空間に辿り着いた。
俺の身体を床に下ろしてそうっと中を窺ったヴィルフリートは、苦々しげに喉を唸らせる。
確かそこには連れ込まれた何人かが居た筈だ。注意して耳を傾けると亜人のくぐもった唸り声とぺちゃくちゃ咀嚼する音に混じり、クスクスと笑う女の声が聞こえてくる。
ヴィルフリートが長物を両手で担いで水平に掲げると右手が掴む持ち手付近に装着された宝石様の部品が青緑色に輝き、そこから棒状の先端へ向けて光が走った。
その特徴ある姿勢から彼が何をしようとしているのかを何となく理解すると共に、その概念がこの世界にも存在する事に驚く。形状からもしや、とは思っていたがこの世界では法術が普及しているからか全く見かけなかったし、日本では当然モニターの向こう側でしか目にする事がなかった代物だ。
片膝を付いたヴィルフリートは岩陰から半身を乗り出し、目の高さに掲げた照門を覗き込んで狙いを定めている。
まさかこんな所で撃つのだろうか?
先も言ったがこの洞窟にはとんでもない数の亜人が巣食っている。いくら強力な武器であっても、あんな小銃一挺では到底間に合わない。アサルトライフルやサブマシンガンでも厳しいだろう。
止めようと決意し声を出そうとしたが、引鉄を引く彼の指の方が早かった。透き通った緑色の晶核が一際輝きを増し、銃身へと流れるマナの輝きが強くなる。轟き、岩壁に反響して洞窟中に響き渡る発砲音と、それに呼び寄せられるように群がる赤禿亜人の集団を幻視して頭から血の気が滝のように引いていった。
しかし銃口から発せられたのは空気が押し出されるような微かな破裂音だけ。晶核と銃身に流れていたマナの輝きも一瞬で消え失せ、静寂と暗闇が再び戻る。
どういうことだろう、と首を傾げているとヴィルフリートは先程同様に狙いを付けて術装器を起動させ、発砲しては辺りの様子を窺うという動作を繰り返す。
腰のベルトに吊り下げたポーチから銃弾を取り出して補給し、十発ほど撃っただろうか。彼は身を隠していた岩陰から出ると、辺りを注意深く警戒しつつ広間へと歩いていった。
ヴィルフリートの後を追って岩壁に寄り掛かりながらふらふらと覚束ない足取りで広間へ入ると、そこら中にたくさんの死体が転がっていた。
頭や心臓に開いた小さな穴から血を流して身体を痙攣させるものもある赤禿亜人たちの真新しい死体と、彼らが食い散らしていたモノ。もがれ、千切られ、抉られ、引き裂かれ、食いカスはその辺に放り捨てられて、岩の床に赤黒い華を咲かせたその有様は心を閉ざしていても尚、胃から苦い物が逆流してきそうになる。
それから目を背けて岩壁周りをざっと見回すと先程の俺同様にぐったりと身を横たえている者が四名居た。皆、肋骨は浮いて腕も脚も節が異様に目立つくらいに痩せ細っており、何人かは痩せた身体に不釣合いなくらい下腹部がぽっこりと膨らんでいる。
その腹が膨らんでいるうちの一人が俯かせた顔に不気味な薄ら笑いを浮かべてクスクス、クスクスとずっと笑い声を漏らしていた。先程から聞こえていた声は彼女のものだったのだ。
「俺の言っている事が分かるか? おい」
肩を掴んで顔を上げさせてヴィルフリートが呼び掛けているが、彼女は全く反応を返そうとしない。少し大きめ鼻とペタンと伏せた三角形の耳から豚人族だと分かる。かつて愛嬌があったであろう顔は頬がこけて肌はボロボロになってしまい、光を失い焦点の合わない垂れ気味の大きな瞳が痛々しさを強調していた。
目に映る惨状を受け入れたくないのだろう、ヴィルフリートは尚も諦めずに呼び掛け続ける。
その袖を掴み、こちらを振り向いた彼に諦めるよう横に首を振ってみせると、内から込み上げてくるものを堪えるように顔を強張らせ、がくりと落胆したように彼女の肩から手を離した。
ここに引き摺り込まれた者は皆、恐怖と悲嘆と絶望に押し潰されて心が壊れてしまう。
俺のように心を閉ざしたとしても精神はいずれ磨耗しきり人形に成り果てるだけで、結局は何も変わらない。
他の四人へと視線を向けたヴィルフリートはどうにも出来ないやるせなさに襲われているようで、ギリリ、と噛み締めた歯が軋む音が俺の耳にまで届いた。
「ここ、でたら……とうばつ、たい……くんで……」
「……ああ、そうだな」
俺のたどたどしい言葉を聞いて彼は頷き、大きく深呼吸をした。そして再び俺を肩に担ぐと、広間を後に奥の通路へと足を運ぶ。
討伐隊も彼女らの救出も、ここを無事に脱出せねば夢のまた夢の事。尤も討伐隊を派遣出来たとしても彼女らがその時まで生き延びている可能性はそう高くないのだが、それは言わない方が良いだろう。
それが分かっているのかどうかは定かではないが、ヴィルフリートは細くなった道を進みながら何度も後ろを振り返っていた。




