第九話 魔王の条件
今晩は。
すみません、遅れました。
投稿です。
「キサマこそ勇者の一撃で瀕死ではないか!」
「ああ、そうだぜ、あの一撃は凄まじかった。ほれ、俺を倒してみろよ!俺を倒せばお前が黒の魔王を名乗れるぜ!」
「……何を考えている?」
「ビビったか?俺サマをトカゲ呼ばわりして、今更反省か?」
「!」
「そうだなぁ、まず将軍、お前を不敬とみなし消す」
「……できるか?その身体で!」
ビキビキと音を立て、公爵の身体が膨れ始める。
「ああ、もう公爵の意思は喰われちまったんだな」
「脆弱な人族の精神なぞ、一呑みよ!」
「脆弱?人族は強靱だぞ、まぁ人族は気づいていないようだが……さて、これ以上呪いの被害が増えないように、お前には消えてもらう」
「はぁ?俺を消しても呪いは消えないぜ、従属紋は紋それ自体が力だ!」
不敵に笑う魔将軍。
しかし魔将軍は知っている。
目の前の魔王は勇者の一撃に耐えているのだ。
(トンデモねぇ化け物クラスだ、さすが黒の魔王ってところか)
「従属紋の力?それくらいのこと、クロさまは知っているよ。俺だって知ってる」
ギロリ、とコガラスを睨む魔将軍。
そのコガラスを睨んだ瞬間、黒の魔王が動いた!
ヒュン!
一瞬で人型に身を変え、蹴りが炸裂する!
軽く吹っ飛ぶ魔将軍!
「ぐわっ!?」
「魔王相手によそ見するとは、余裕だな?」
「てめぇ、汚ぇぞ!」
「そりゃ、魔王だし、勝つためには手段を選ばんよ」
見事な八頭身、切れ長の眼
黒い髪に金色の瞳、そしてやや尖り気味の耳。
頭部にはバッファローのような二本の角。
どこから出したのか、黒いスーツに黒い手袋。
ビカビカの黒革靴に、腰には金細工の鞘に収まる剣。
街中で出会えば、老若男女例外なく振り向くであろう好青年である。
見ただけでもラッキー、と思わせるオーラがその身に纏わり付いていた。
その黒の魔王に襲いかかる魔将軍。
周囲に黒い霧が満ち始める。
「ク、クロさま!?」
「瘴気か?いや呪気?」
「怨念に塗れるがいいさ!」
周囲の木々が枯れ始め、小川に小魚や蟹が浮き始める。
「コガラス、離れろ」
「は、はいっ!」
コガラスの周囲が金色に輝き始め、一瞬輝くと、その姿は消えていた。
……我の結界から逃れた!彼奴、ホントに人族か!?……
「コガラスは異常でね、魔王である俺を癒やすことができる存在だ」
ブワッ、と黒い霧の中から現われ、魔王に一撃を放つ異形の公爵!
キンッ!
軽い金属音が響き、異形の公爵は再び吹飛ばされる!
「ぐわっ!?」
「それでも奇襲か?なっとらん!よくそれで将軍が務まったな?」
そう言ってスタスタと異形の公爵に近づく黒の魔王。
間合いも黒い霧の関係無しである!
「なっ!?数百年貯めた怨念、呪念の固まりだぞ!?なぜ倒れぬ!?呪われぬ!?」
「俺クラスに成ると、呪いや呪念は無効さ」
「な、なんだと!?」
「呪いは、呪う側と受け手がいる、俺は受け取らないから呪いは無効だよ」
「はぁ?な、何を言っているのだ!?」
「お前、何も知らないな?俺は死人だ、死人に呪いは通用しない」
「!?」
「そして俺は生きている、だが生きていることを望んでいない。だからといって、死も望まん。分かるか?」
「な、何を言っているのだ」
「呪いを無効化する方法さ、まぁ普通は無理だがな。これができたら超一流の戦士だ」
「己がそうだと言いたいのか!」
「そうだよ、この戦士が光サイドに立てば勇者、闇サイドにたてば魔王さ、お前の辿り着けない世界さ」
黒い霧の中をスイスイと進み、異形の公爵と対峙する。
「さて、これで終わりだ、魔将軍」
「ま、魔王のお前でも……肺が腐るはずだ!失明するはずだ!この霧は……」
「だから、俺サマに呪いは無効だって。じゃぁな魔将軍」
キラリ、と腰の剣が光ると同時に血の塊になる魔将軍。
「がっ!?」
「散々、人々や同族達を苦しめてきたお前が、一瞬で絶命など不公平を感じるな」
「……俺が死ねば、この街は終るぞ……」
「生きていても、終るだろう?一度動き出した呪は被害者にしか解けぬ。そして他者を呪う感情は留まる、その感情はお前を蝕む。これを、人を呪わば穴二つ、と言うらしい」
「……俺を……蝕むだと……呪いは我の糧だ……」
「一度生れた呪いは消えん、糧など有り得ん」
「なにを言っているのだ?」
「墓穴のことだ、今回は一つだったがな」
金色の眼が輝き、黒い霧の固まりが破裂する!
「ぐわっ!?」
「勇者はもっと強かったぞ、あ、もう聞こえないか」
そう言って剣を一振りすると、黒い霧は消え去り、周囲に陽の光が満ち始める。
そして溜息を一つ。
「はぁ、俺って何者なんだろ?もう魔王ではないし、かといってこの力、勇者でもない。忌々しい、あの勇者の一撃!」
パキッ。
「ん?コガラスか?」
振り向くと、そこにはマコトが立っていた。
「え?マコト!?」
ビックリである。
「あ……あの……ご、ごめんなさい……わた、私、心配で……」
「心配?」
「は、はい、帰ろうとしたら、黒い霧みたいなモノが森の方に……そ、それで……あの、クロさまですよね?」
「ああ」
マコトは明らかに頬を染め、クロを見つめている。
そこにトコトコと戻って来るコガラス。
「クロさま、大丈夫ですか?……え?マコトおねぇちゃん?」
ササッ、とコガラスの後ろの隠れるマコト。
「え?え?な、何?」
「じ、じっとしていて!お願いっ!」
「え?」
マコトは髪を撫で、ヨレヨレの服の皺を後ろ手に伸ばし始める。
そう、黒い竜の人バージョン、マコトのドストライク、星5つだったのだ。
今回はここまでです。
次回サブタイトルは 第十話 踊り続ける二人、そしていつの日にか!の予定です。
毎回ご愛読ありがとうございます。




